世界遺産と日本/世界の町並み w/IT

世界遺産と日本/世界の個性的な町並みをITを交えた筆致で紹介します。

水郷だけではありません、どこかほっとする北総の小江戸、佐原

2006-07-23 14:21:53 | 日本の町並み
 醤油の野田と同様に利根川の水運で開けた町が佐原です。町は利根川で南北に分断され北部は沖積層の水郷地帯が広がり、潮来と呼ばれる一帯は6月のあやめが咲く頃には数多くの観光客が押しかけ、どんこ船と呼ばれる小船で水郷めぐりを楽しみます。

 一方、南部の駅の南側には、小野川に沿って昔の町並みが保存されていて、川越と並んで北総の小江戸と呼ばれています。古い家並みを残す町には小京都と呼ばれる町と小江戸と呼ばれる町とがあるようです。昔の城下町(武家の町)が小江戸で、それ以外が小京都と呼ばれているのかと思うと、むしろ大部分の小京都が城下町なのでこの仮説は成り立たないようです。どうも東京(江戸)に近くて伝統的町並みを残す川越、栃木、大多喜などの町が小江戸と呼ばれたようで、その数も小京都に比べて圧倒的に少ないように思います。

 佐原は町並み散歩派にとっては必需品の一つとなる地図ゆかりの土地でもあるのです。日本で初めて全国規模の地図を実測に基づいて作成した伊能忠敬を生んだ町です。小野川に面して旧宅が保存され、近くに記念館も作られています。伊能忠敬の地図は原則的に海岸線を磁石と量程車と呼ばれる距離測定用の道具による三角測量で描いたものですが、まともな交通手段や道路の無かった頃ですから、その苦労や大変なことだっただろうと思います。原始的な道具による作図にもかかわらず、現在の地図と比較してその正確さは驚くばかりです。シーボルトが国外に持ち出そうとして問題になりましたが、それほど正確であったという証明のひとつでしょうか。

 伊能忠敬の旧宅の付近は、小野川を挟んで古い民家や商家が保存されていて、川沿いに植えられた柳も加わり絵になる風景をかもし出しています。写真で切り抜いたフレームの中には、どこかで見たような懐かしいふるさとの町が存在していました。この風景に魅せられたのか、散歩に出かけた当日もTV番組の取材とCMの撮影に遭遇しました。

 現在はGPSが発達して携帯電話にまで組み込まれるようになりました。地球上にいる限り現在位置がどこであるか、瞬時に把握できるようになり、車のナビゲーションにも応用され、地図を持っていかなくても目的地にたどり着ける便利な世の中になりました。しかしながら、GPSは単に地球上の緯度、経度を割り出すだけで、その地点がどこであるかは地図が無ければ確認できません。ナビゲーション・システムにも精巧な地図のデータベースが搭載されています。測量の仕方こそ変わっても、地図の重要性は変わらないようです。