世界遺産と日本/世界の町並み w/IT

世界遺産と日本/世界の個性的な町並みをITを交えた筆致で紹介します。

回廊状の谷を渡って上る長谷寺の回廊のそばには牡丹が咲き誇っています

2006-05-21 14:34:01 | 日本の町並み
 立てば芍薬(しゃくやく)、座れば牡丹(ぼたん)、歩く姿が百合の花、という表現がありますが、百合の花を除いて、中国の花のイメージがしないでもありません。また、芍薬も牡丹も同じ牡丹科の花なので似ているんですね。牡丹の花の名所は首都圏でも上野や薬王院などがありますが、回廊のそばの牡丹の花が見事な長谷寺界隈を紹介します。今年は藤の花などは遅れて咲いたようですが、牡丹の開花はどうだったでしょうか。

 お寺の名称は長谷寺と書きますが地名のほうは桜井市初瀬(はせ)と表現が異なります。最寄り駅はお寺の名称を採って長谷寺で近鉄の大阪線にありますが、さほど頻繁には電車が停車しないようです。ただ、牡丹の咲くころには臨時停車の電車も増えるようです。大阪線の名古屋寄りに室生寺があり、長谷寺の牡丹のと室生寺の石楠花(しゃくなげ)をはしごで愛でることもできます。

 初瀬は6世紀雄略帝の頃に都の置かれた場所で、飛鳥や三輪山などからも近い距離にあり、停る電車が少ない割りに歴史の古い由緒のある地域なのです。長谷寺の開基は8世紀と言われていますから、都の方が古いことになります。桜井を出た近鉄大阪線は山の北斜面横切り初瀬川(大和川)を目の下に眺めながら進みます。長谷寺は、川を挟んで向かい側の山の南斜面に張り付いたように建っています。駅からの道は回廊状になった川の面まで降り、再び上ることになります。この登りが回廊になっていて、その回廊の両脇に牡丹が植えられています。

登りはけっこうきついのですが、舞台造りの本堂は眺めもよく、10mを超える本尊の十一面観音の巨大さにも圧倒されます。牡丹の頃は花につられて知らない間に本堂に着いてしまうかもしれません。ただ、本堂だけでなく、回廊の雰囲気もなかなか捨てがたい魅力があります。

 牡丹と聞いて思い出すものの一つが「唐獅子牡丹」かもしれません。獅子はもちろんライオンですが、江戸時代に唐獅子を描いた絵師たちはライオンなど見たこともない動物だったわけで、麒麟などと同じく想像上の動物に近かったのではないかと思います。むろん、お手本があったのでしょうが、想像力をたくましくして、個性的な獅子も描かれたのではないかと思います。ネットワークで世界中の情報が絵入りで瞬時にして手に入るようになった現在では、かえって想像力は低下しているのではないでしょうか。