世界遺産と日本/世界の町並み w/IT

世界遺産と日本/世界の個性的な町並みをITを交えた筆致で紹介します。

魚市場の近くにほっとする町並みも残る築地

2006-04-09 14:42:09 | 日本の町並み
 穴太寺の布団を着て横たわる涅槃仏もユニークですが、築地の本願寺も他の日本の仏教寺院に無いユニークなインド様式の建物で有名です。今回は本願寺周辺、築地の町から紹介します。

 先日久々に築地本願寺にお参りして驚いた発見がありました。本尊にお参りして振り向いた視線の先にパイプオルガンのパイプの集合を発見してしまいました。パイプオルガンはキリスト教会にはつきものですがお寺にあるのには驚きました。以前から存在したかどうか分からないのですが、本堂に張ってあったポスターから、その用途が推測できました。そのポスターは結婚式のPR用だったのですが、そこに写っていた新婦はウェディングドレス姿だったのです。おそらく入場の時にパイプオルガンの演奏があるのではないでしょうか。ただ、新婦の姿はウェディングドレスでも、式の進行は焼香などを取り入れた仏式のようです。

 仏式といえば、かつてお盆の期間は魚屋さんが休みだったことがありますが、魚の卸売市場も築地を代表するランドマークではないでしょうか。都内にいくつかの卸売市場がありますが、卸売り市場と聞くと築地を思い浮かべます。市場内には1000軒近くの水産仲卸の店がありますが、4~5年に一度の頻度で市場内の引越しが行われます。店の位置によって売り上げに影響があり、公平さを保つために行われ、最近では今年の5月に実施され話題になりました。店舗の移転に伴い冷凍庫や水槽なども移設する必要があり、その費用は莫大なものといわれています。店舗には通信回線も引かれていて、数日の間に1000回線を超える電話を一挙に移設するのは大仕事とは、築地を受け持ち区域とする電話局で10数年前に聞いた話です。現在は携帯電話が普及して固定電話が減り、移設工事量も減ったのではないでしょうか。

 店舗の引越しといえば、当然看板も引っ越すことになりますが、看板建築という名前をご存知でしょうか。日本の伝統建築様式で建てられた町家の通りに面する部分に看板状に洋風の意匠を貼り付けたような建築様式のことです。看板状の意匠は銅板やタイルで葺かれていて、関東大震災の後に防火の意味合いから流行したスタイルだそうです。築地本願寺の裏、卸売市場の北側に広がる町並みの中に、この看板建築がかなりの数で残っています。銅板は緑青を吹いて、貼り付けた銅板がうろこ状になっているので、まるで巨大な蛇を見ているようにも感じます。築地界隈には、細い路地や、通りに並べられた草花、それに格子の付いた木造の旅館など、昔にはどこにでもあった、生活のにおいのする、どこかほっとする町並みが残っています。

 魚や野菜などを卸売り市場に運ぶときに、どこの市場に持っていくと高値で売れるかという情報をもとにトラックの行き先を変更するということを聞いたことがあります。商品の値動きなどの情報をもとに携帯電話を使ってドライバと連絡をとって指示するようです。物の移動には時間がかかり、市場の開く時間は決まっているわけですから、単純に一番高い市場に持ってゆけばよい、とはならないでしょう。GPSなどによるトラックの位置管理や道路の状況などを含めた情報を総合的に判断するようなシステムが必要なのでしょうが、技術が進んで情報は瞬時に伝わっても、物の動きにはエレルギーと有限の時間がかってしまいます。物の動きを最小限にして効率化を図るのもITの役割のひとつかもしれません。