くじら図書館 いつかの読書日記

本の中 ふしぎな世界待っている

「阿Q正伝」まんがで読破

2016-02-15 05:32:51 | コミック
 今年も「故郷」の授業が終わりました。
 といっても、次の題材「『正しい』言葉は信じられるか」は冬休み前に終わっているので、教科書が進んでないわけではありません。
 旧正月付近にやりたいと思って。
 今年度三年生用の授業ノートをなくしてしまい、一から出直しで教材研究をしております。読めば読むほど味が出ますね。
 まんがで読破シリーズから、「阿Q正伝」(イーストプレス)。
 「故郷」は入っていませんが、魯迅の作品世界を手軽に理解するにはいいですよ。
 中学生って、時代背景とか社会状況とかうまくつかめない子が結構いるので。(うちの生徒だけですか? 今回「甥ってなんですか」と聞かれて愕然としました……)
 「阿Q正伝」、中学か高校生の時期に読みました。緑の表紙の文学全集で。遠い記憶をたどってみると、迷信といわれるようなエピソードが描かれていたような気がします。
 そして、「阿Q」があんまりにもテンション高くて驚いたのですが、それ以降は全く読んでいないので、中身はよく覚えていません。だから、いろいろとまんがならではの工夫がおもしろいと思いました。
 まず、「藤野先生」。魯迅本人を「周君」として描きます。本来一人称の作品ですが、まんがですから外から見ることになる。その視点の違いが新鮮でした。
 続いて「髪の話」。日本留学で辮髪(まんがでは「弁髪」)を切り落とした男。
 彼の名前は書かれていません。でも、この話を読むと、因習に縛られる中国社会の状況や、革命を終えても理想とする世界が訪れるわけではないということがよくわかります。
 「故郷」も、ルントーの生育に神仏への崇拝が影響していることが書かれていますね。名前の由来とか銀の首輪、香炉と燭台。そして、ヤンおばさんは纏足をしている。
 「髪の話」の主人公は合理性を求めますが、民衆は承知しない。しかし、彼らがこだわった辮髪だって、もともとは満族の風習。なじむまでには相当抵抗があったはずなのですが。

 他には「明日」と「狂人日記」も収録されています。
 わたしの遠い記憶では、他にも迷信にとらわれる人々を描いた作品があったと思います。「饅頭」とか、そうじゃなかった?
 子ども心にすごく衝撃的だったのですが、もしかしたら違う話と混じっているかもしれません。
 
 若い頃わたしは、「故郷」はつまらない教材だと思っていました。
 でも、読むほどに発見があり、今では中学校の教科書の小説としとはかなり好きな作品です。
 また、生徒たちがこの作品とよき出会いができますように。