トランプの保護主義への傾斜は明らかで、国境税を課すとかして日本への圧力も強めてくるだろう。工場をアメリカに建設するように求め、アメリカからの輸出を最優先するのは、自国のことしか考えないからである。言うことをきかせるためには、あらゆる暴言が許されると思っているのだろうか▼日本の輸出が堅調なのは日本政府が介入しているからだ、と決めつけるのもクレーマーのレベルである。アメリカ自身が製造業から手を引いたのである。アメリカはITの分野では一人勝ちである。グーグルやアマゾンは世界を制覇している。その上にまた製造工場まで呼び戻すことになれば、アメリカ国内の格差は縮小したとしても、国家の間では貧富の差が拡大するばかりである。それが世界の平和にとって好ましいことなのだろうか▼安倍首相はトランプを説得する立場にある。それを世界中が待望している。アメリカニズムとはグローバリズムの代名詞ではない。アメリカにとって都合のよいことを押し付けるのがアメリカニズムなのである。高坂正堯は「国家は力の体系であり、利益の体系であり、価値の体系である」と断じた。力は軍事力や警察力である。利益は経済的な面を意味する。トランプを説得するには、和を第一とした日本の「価値の体系」を説明すべきである。今の世界にそれができる政治的指導者は、日本の安倍首相しかいないのである。
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