メドレー日記 Ⅱ

by 笠羽晴夫 映画、音楽、美術、本などの個人メドレーです

女優と下手な歌の演技

2006-05-17 21:50:19 | 映画
 
映画の中で女優が歌を歌うことはいくらでもある。たいていはうまいほうがいい。特にうまいことは要求されてなくてもその場面に沿った個性的なことが要求される。特に主演級の場合は。
 
ところが、そんな段階を超えて、明らかに音痴が歌うという設定、しかもフルコーラス続くということがあった。
 
これはもう有名な場面で、「ベスト・フレンズ・ウェディング」(1997米)で、主人公の婚約者役のキャメロン・ディアスが主人公の元恋人でやきもちを焼いているジュリア・ロバーツにカラオケで無理やり歌わされる。
これ本当に下手な歌が延々と続くのだが、そしてジュリア・ロバーツはしてやったりなのだが、その下手な歌の一生懸命加減が、その歌詞に沿った恋人を思う心情と表情が周囲を動かし、結局その場は勝利を得てしまうというもの。
 
しかしこれキャメロン・ディアスはどう対処したのだろうか。インタビュー番組でもそこまでは明かしてくれなかった。
歌がうまくないことは確かだが、地でただ歌っただけでこうはいかず、彼女の水準よりもっと下手に演技でやったとしてもわざとらしさは出るだろう。史上に残る「下手な歌の名演技」である。
 
ところでこの歌は本来どういう歌なのか、ということが長らくわからなかったのだが、今回DVDで見た機会に歌っているときの歌詞の一部を書きとめ、最後に流れるクレジットを停止して読み取った。
題名は、I just don't know what to do with myself  で、作詞:ハル・デヴィッド、作曲:バート・バカラックの名コンビによるもの。正調で歌ったものを聴く機会を探してみようと思う。
 
ここでは他にもこの2人のコンビによる名曲「小さな願い」、「世界は愛を求めてる」がうまく使われている。大勢の食事の場面で老若男女みんなで歌う「小さな願い」は圧巻で、アメリカにおけるバカラックの位置を象徴するものかもしれない。
 
最近録画で見た日本映画「ロボコン」(2003)は長澤まさみの映画デビューだと思うが、ロボット・コンテストに挑むクラブの合宿に向かうトラックの荷台にふんぞりかえり、すこしふてくされて彼女が歌うのが「夢先案内人」(山口百恵 作詞:阿木耀子 作曲:宇崎竜童)「月夜の海に二人の乗ったゴンドラが、、、」
 
これがなんとも自然な下手さ加減であるにもかかわらず、場面にぴたりとはまっているのはただ偶然ではないだろうと感心した。監督もこれで彼女の力を確信したという。
この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« シューベルト連弾か2台か | トップ | サイド・バイ・サイド »

映画」カテゴリの最新記事