「PicNic」(1996、68分)
監督・脚本: 岩井俊二、撮影: 篠田昇、音楽: REMEDIOS
Chara、浅野忠信、橋爪浩一
始まってしばらくはなにか難しそう、暗そうで、自分勝手な映画かな、と思っていたら、その後は、うまい設定の中で、主人公達の動き、そしてカメラの見事な変化、そのテンポとリズム。 同年の「スワロウテイル」よりさらにこの岩井・篠田のコンビがいきいきと才能を発揮した感がある。
話はココ(Chara)が精神病院に入って来るところから始まり、知り合ったツムジ(浅野)、サトル(橋爪)と塀を伝って旅に出る。世界の終焉を見るという名目はあるらしいのだが、塀の上という位置を守るところがなんともうまい設定で、物語を性急に極端なところに追い込むことから救っている。
途中で遭遇する教会の神父と子供達の場面など印象的なシーンは多いが、よくこんなに多様な「塀の上」を探し出したもので、ロケハン能力というものは大変なものだ。
演技ではやはりCharaの天性が、そのキャラクターとともに、この映画を輝きあるものにしている。「スワロウテイル」よりこっちの方が力が抜けているようだ。
浅野忠信は後にはもっと強さが表に出てくる演技が多くなったが、ここではナイーブ。
そしてREMEDIOSの音楽が、映像と展開に寄り添って、場面の雰囲気を少し強調する加減がいい。
ある解説によれば、この映画は94年に製作されたが、日本版が出来て公開されるまでに、暴力シーンなど大幅にカットされたそうである。終盤の台詞から、それがどんなものだったか少しは想像出来るが、このあまりない長さの映画になってしまったとはいえ、それでよかったのではないだろうか。
この映画がきっかけでCharaと浅野は結婚し子供もいることは知っているが、なかなか興味深い出会いである。