メドレー日記 Ⅱ

by 笠羽晴夫 映画、音楽、美術、本などの個人メドレーです

上海の伯爵夫人

2006-12-02 22:12:27 | 映画
「上海の伯爵夫人」(The White Countess)(2005、英・独・米、中、136分)
監督: ジェームズ・アイヴォリー、製作: イスマイル・マーチャント、オリジナル脚本: カズオ・イシグロ、撮影: クリストファー・ドイル、音楽: リチャード・ロビンス
レイフ・ファインズ、ナターシャ・リチャードソン、真田広之、ヴァネッサ・レッドグレイヴ、リン・レッドグレイヴ、マデリーン・ポッター、マデリーン・ダリー、ジョン・ウッド、アラン・コーデュナー
 
1936年~1937年の上海租界、国際連盟関連の動きで活躍したが動乱の中で家族を失い盲目になった米外交官のトッド(レイフ・ファインズ)は競馬で大穴を当てたこともあって夢のバー経営に乗り出し、そこのマダムとしてロシアから逃れてきた元貴族一家をクラブの花形稼業で養っているソフィア(ナターシャ・リチャードソン)を雇う。そのバーに何か足りないと考えたトッドは上海へやってきた日本の軍属(?)のマツダ(真田広之)に相談し中国共産党や日本の連中が店に来るようにして緊張感、スリルのある雰囲気を作ろうとする。ところが真田がかかわったということは当然日本軍が入ってくるということであり、もともと香港あたりに逃げようとしていた露貴族一家の思惑と、お互いに愛に気づき始めたトッドとソフィア、そして一人娘、騒ぎに飲みこまれていく彼らの運命は、、、という物語。
 
ジェームズ・アイヴォリーどうしちゃったんだろう?
やはりカズオ・イシグロのようなブッカー賞大作家に脚本をまかせるべきではなかったのかもしれない。イシグロが小説書いて、それを映画脚本の専門家に任せた方がよかったのではないか。「日の名残り」(1993)の時のように。
映像の進行、転換、論理が具合悪いのだ。一分の場面に文章なら読んで10分費やしていいが、映画にはそらなりのテンポが必要。
 
それと、国際連盟の夢破れて託したのが小世界の酒場なんだろうが、ちょっとこれは映像化しても魅力に欠ける。
また盲目で動乱の中をソフィアを探し、船にたどり着きというのも現実感がない。
 
レイフ・ファインズはまあこれくらいできるだろうというところだが、今回は真田広之が最も精細を放っている。少し友情を感じながらも、国を背負った仕事師というしたたかな役、日本人でこういう役が登場するのもまんざらではない。
 
ナターシャ・リチャードソンはもう少し華やかさ、脂粉が欲しい。この人、ここで義理の伯母役のヴァネッサ・レッドグレイブとあのトニー・リチャードソンの間に生まれた娘だそうで、ヴァネッサの妹リンもここに出ているし、二人のアデリーンも母娘、何かファミリーの映画。
 
そういえばカズオ・イシグロの「わたしたちが孤児だったころ」は上海租界の子供たちの物語、イシグロの祖父が上海に関係していたらしい。 
 
トニー・リチャードソンの名前は久しぶり、「長距離ランナーの孤独」(1962)あたりが生意気な映画の見始めだっただろうか。「土曜の夜と日曜の朝」、「トム・ジョーンズの華麗な冒険」、しかし久しぶりと思ったら、なんと「ブルー・スカイ(1994)の監督をしていた。
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