ブルーノ・マデルナ指揮BBC交響楽団の「マーラー交響曲第9番」を聴く。1971年3月31日ロンドン・ロイヤル・フェスティバル・ホールのライブ録音、今年BBCレジェンド・シリーズで発売された。
この曲、随分前からいろいろな人の指揮で聴いた。
最初は良くわからなかったし、マーラーといってもあまり熱い入魂といった演奏では、この長丁場何かいやになるのであった。
そしてジョン・バルビローリ指揮ベルリン・フィルを聴き、肩の力が抜け、また何かやわらかく深い世界に浸ることが出来た。
この録音は1964年、コンサートでのあまりに素晴らしさに楽団員たちがEMIを説得して実現したものとか。バルビローリの演奏では、本当に「神は細部にあり」がうまく活かされている。
そして、80年代晩年のカラヤン指揮ベルリン・フィルのスタジオとライブの二つ。曲の構造を常に見失うことがない。しかし、ブーレーズなどと異なり、この見通しの良い構造が常にダイナミックに動いていく。
マデルナのやり方は、下手な言い方だがこの二つの中間だろうか。しかし中途半端でななく、包み込むような深さの中で両方を実現させている。こういうことはなかなかない。これからもよく取り出して聴くだろう。
ブルーノ・マデルナ(1920-1973)はノーノ、ベリオなどと並んで20世紀イタリアを代表する作曲家の一人だが、同時代の作曲家達と付き合いがよくまた彼らの作品の指揮もよくしたから、皆に好かれていたようだ。
今も手元に死の少し後に発売された「ブルーノ・マデルナの芸術」と題する愛聴のLPがあり、ここでは1973年夏のザルツブルク音楽祭でメシアン、ストラヴィンスキー、ブーレーズ、ルトスラフスキーの作品をマデルナが指揮している。
何か、友達によるマデルナへのトリビュート・アルバムを自身が指揮しているような雰囲気だ。
今回のマーラーを聴くと、もっと他にも録音はないだろうかと思う。