1972年日フィル最終定期公演(マーラー「復活」)の3ヶ月前、3月23日(木)に聴いたのがブルックナーの交響曲第3番ニ短調であった。
指揮はフィンランドのオッコ・カム、カラヤン・コンクール最初の優勝者だったはずである。
この曲を聴いたのはこのときが初めてで、ブルックナーの交響曲全般としても初めて何か味わえた、わかったという感を持った。
それは始まってすぐに予感があったのだ。このオーケストラからそれまで聴いたことのないみずみずしく溌剌とした響き、そして何か底知れない奥の方からその響きがゆらゆらとやわらかく迫ってくる。
未だになぜだかわからないのだが、こういうことはあるのだろう。その後は同じ曲をカール・ベーム、ウィーン・フィルのLPで聴くようになった。
ブルックナーの他の交響曲となると、少しずつ付き合えるようになったが、その次の飛躍となると、カラヤン晩年の第7、第8あたりまでかなりの時間がかかっている。
このカムのブルックナー、放送録音を保持しているわけでもなく、その場で聴いたきりであるけれども、こうして思い出して言葉にするのに何も困らない、そういう数少ない機会の一つである。
なおこのコンサートでは他に、
サリエリ「フルートとオーボエのための協奏曲」
武満徹「ユーカリプス1」
が演奏された。加わったソリストは丁度来日していたバーゼル・アンサンブルのメンバーで、
フルート:オーレル・ニコレ
オーボエ:ハインツ・ホリガー
ハープ:ウルスラ・ホリガー
今から見てもすごいメンバーである。