「しあわせの雨傘」 (POTICHE、2010年、仏、103分)
監督・脚本:フランソワ・オゾン
カトリーヌ・ドヌーヴ、ジェラール・ドパルデュー、ファブリス・ルキーニ、カリン・ヴィアール
夫(ファブリス・ルキーニ)に代わって雨傘会社の素人社長になるはめになった妻(ドヌーヴ)が、意外にうまく経営をする、という話だときいていたので、やり手オゾンとしてはずいぶんおとなしいほのぼのとした映画、と思っていたら、確かにそういう筋なのだが、次から次へと、短い筋は先が読めない展開になり、楽しめる作品になっている。
こういう意外な話が次々というのは、舞台ではよくあるケースだろうが、映画は70年代(1977年の設定)の背景を忠実に出しているなかで、集中してみることが出来る。ファッション、車、タバコをスパスパなどが懐かしい。
70年代後半という、政治の季節が過ぎた倦怠感ただよう状況をうまく使って、それを知っている人には会話が面白い。
工場で組合指導者だった現在の市長(ジェラール・ドパルデュー)が実は彼女の昔の不倫の相手という設定で、浮気ものの夫に対してこれがじわりときいてくる。
ところでドヌーヴと雨傘といえば、彼女をスターにした名作「シェルブールの雨傘」を思い浮かべる人が多いのはオゾンも計算済みだろう。それで、シェルブールでは男を待っていられなくて金持ちと結婚した娘(ドヌーヴ)が未亡人になり、つつましい幸せな家庭を作っている男のガソリンスタンドに来る、という彼女にはつらいラスト(名場面!)を思い浮かべるが、今回はこれが逆転して、残念なのはドパルデューというのが面白い。
原題のPOTICHEは陶磁の壺で、飾りの置物、妻は夫にとってこういう壺か!という会話が随所に出てくる。