メドレー日記 Ⅱ

by 笠羽晴夫 映画、音楽、美術、本などの個人メドレーです

レオニード・コーガン「アンコール集」

2015-05-20 21:14:10 | 音楽一般
レオニード・コーガン「アンコール集」
ヴァイオリン:レオニード・コーガン、ピアノ:アンドレイ・ムイトニク
録音:1958年 ニューヨーク
 
名盤コレクション1000というシリーズで2015年4月にリリースされ、世界初のCD化とのこと。確かにコーガンという人はアンコールによく使われる小曲をひくイメージはあまりわかないし、そういうアルバムもあったかどうか。それで、聴いてみてもいいだろうと思った。結果は当たり。
 
ナルディーニ、ショスタコーヴィチ、メンデルスゾーン、クライスラー、ヴュータン、ドビュッシー、プロコフィエフ、ブロッホ、ブラームス、グラズノフ、サラサーテとヴァラエティも十分。そして半分想像した通りなのだが、こういう曲でも厳しく正確さを追求したヴァイオリンは変わらない。でも、そうやって弾き進めていくと、そこにはそういう演奏だから出てくるこういう曲の華ともいうべきものが見事に出てくる。そしてこういう演奏であれば、何回も繰り返し聴いてもすぐ飽きるということはない。
 
サラサーテのバスク奇想曲は初めて聴くが、この個性的なテーマとそれをもとにした推進力ある進行、アルバムの最後を飾るにふさわしい。そしてコーガンなら当然だろうがフィナーレの「ブラブーラ」はない。繰り返し聴くアルバムであればないほうがいいが、そうでなくてもコーガンなら、、、
 
さてレオニード・コーガン(1924-1982)はウクライナ生まれ、1950年代には来日したこともあり、私も知ってはいた。60年代後半だろうか、レコード屋で安売りの輸入盤を見ていたら、コーガンのパガニーニの協奏曲があり、この曲の録音があまりなかったこともあって、買って聴いてみたら、テクニック、深く追求していく表現、ともに素晴らしかった。ただあれはソ連のMKというレーベルだったか、盤質がよくなかったのか、その後どうも処分したらしい。この人は同じヴァイオリンのオイストラフやピアノのギレリスと比べ、西側のレコード契約にあまり恵まれなかったように思う。ギレリスだってそんなに恵まれていたわけではないが、コーガンのように早死に(列車で移動中の心臓発作)でなかったから、晩年ドイツ・グラモフォンでベートーヴェン、グリーグなど、いいものを残すことができた。
コーガンの録音、これからまだ出てきてリマスタリングによってはいいものがあるかもしれない。捜してみようと思っている。
 
ところで、コーガンとギレリスはソ連の対外文化政策なんだろうが、親日的なイメージが我が国でもあった。あの佐藤陽子をモスクワに誘って教え、デビューさせたのもコーガン。夫人はやはヴァイオリニストでギレリスの妹。確か彼らは一緒に日本に来て、コーガンだったかギレリスだったか、娘の練習用にとヤマハのアップライトを買って帰ったということが知られ、半世紀以上前の日本としてはうれしい評価だったはず。
 
また今回驚いたのは、このアルバムのレーベルはRCAだが、もうVICTORはなく、リリースはソニーだったこと。もう大手はユニバーサル、ワーナー、ソニーに再編されてしまったようだ。

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