メドレー日記 Ⅱ

by 笠羽晴夫 映画、音楽、美術、本などの個人メドレーです

ベルリーニ「夢遊病の女」、ナタリー・デセイ/ミシェル・ルグラン

2015-01-02 21:55:31 | 音楽一般
ベルリーニ:歌劇「夢遊病の女」
指揮:エヴェリーノ・ピド、演出:マルコ・アルトゥーロ・マレッリ
ナタリー・デセイ(アミーナ)、ハビエル・カマレナ(エルヴィーノ)、ミケーレ・ペルトゥージ(ロドルフォ伯爵)、コルネリア・オンチオユ(テレーザ)、マリー・アドリーヌ・アンリ(リーザ)、ナウエル・ディ・ピエロ(アレッシオ)
2010年2月12日、15日 パリ・オペラ座バスチーユ
2014年9月 NHK BS
 

続けてナタリー・デセイの当たり役。これの前年メトロポリタンでの上演映像では、指揮者は同じだが演出はまるで違うちょっと大胆なものだった。それでも誤解するというわけではなかったが、今回は衣装がおそらく20世紀前半のものというほかはそう違和感がなく、伯爵の位置づけも自然であった。
 

夢遊病とはなんとも変な設定なのだが、こうして2回目になると、それは間違いの喜劇のトリガーになっていると同時に、間違いをいい方へもっていくために心の奥底をなにもかまわずさらけ出していくしかけにうまくなっていることがわかる。娯楽オペラとしてはなかなかにくい。
ナタリー・デセイはここでより歌と動作でこの一途なおとめ心を表現してあまりない。
 
 
ところで、先のジュリアス・シーザーの幕間インタビューで語っていたが、ナタリーは2013年でオペラから引退したようだ。現在49歳のはずで、早いといえば早いのだが、レパートリーがイタリア・ベルカントのソプラノ・リリコ、コロラトゥーラあたりで、ここまで極めると、その後よりドラマティックなものへという人もいるけれど、あの小柄な体格を考えれば、惜しいけれど賢明な選択かもしれない。よくこれだけ楽しませてくれた。ここまであの筋肉トレーニング、ヨガ、ダンスと大変だっただろうが、楽しんでやっていたという雰囲気もよかった。
 

さてこのNHKの放送では、オペラより彼女の屋外ステージがメインで、これは2014年6月11日にベルサイユ宮殿オランジェリー庭園でやったもの。それも組んだのがミシェル・ルグランで、ルグランは相当の歳のはずだが、それを感じさせず、ハイレベルで楽しいセッションだった。ナタリーはこういうミュージカル、ジャズ系の歌もとてもいいし、ルグランも半分余興で過去の幾多の名ジャズ・ピアニストの真似をメドレーで披露した。まるでサミー・デイヴィス・ジュニアがヴェーカルでやるように。脱帽。


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