メドレー日記 Ⅱ

by 笠羽晴夫 映画、音楽、美術、本などの個人メドレーです

メトロポリタン・オペラのオーディション

2013-10-24 11:09:36 | 音楽一般

2007年、メトロポリタン歌劇場で行われた「ナショナル・カウンシル・オーディション」の記録番組(WOWOW) 。

全米1800人から22人に絞り込まれたセミファイナルがあり、それが半分になったファイナルで、5人~6人が順不同で選ばれ、1万ドルの賞金(この種のものとしてはかなり高い)が出る。

 

セミファイナル以降の記録だけれど、メトロポリタンはその間、選抜のためばかりでなく、トレーナー、奏者、指揮者たちが親身になって指導、相談にあたり、20歳から30歳くらいの男女が、本番でいいところを出せるように最善をつくす。

このあたり、アメリカ的と言えるかどうかわからないがとても気持ちがよく、こうやってMETのすそ野を広げているということがよくわかる。

セミファイナルの22人くらいになると、最後まで残るかどうかはさておき、今後は何らかの形でオペラ界に登場する可能性は多いだろうし、METでもよくある主演クラスが出られなくなった時のピンチヒッター候補リストに入るだろう。

 

ここの公演にもよく出てくる指揮者マルコ・アルミリアートも、とても気さくだが、指摘と助言は的確で、トレーナーとして優れているようだ。

 

もちろんこの上にはMET最初の音楽監督ジェイムズ・レヴァインがいるわけで、この番組とあわせて放送された「天才指揮者ジェイムズ・レヴァイン」を見ると、この人のオケや歌手への指導ぶりは、感心することばかりであった。

 

まだ若かったレヴァインの起用はMETの危機感の現れだったらしく、レヴァインの言では、新しいオペラを定期的に加えていく意義が強く語られていて、このあたり先にあげた「サイード音楽評論1」でサイードがMETの遅れていることを厳しく書いていたけれど、それに全面的に応えたわけではないにしろ、METが危機意識を持っていなかったわけではなく、それなりの行動をしていたことはよくわかる。 

 

面白いのは最終的に選ばれた女性歌手3人とも、かなりの恰幅で、顔もよく似ていたこと。あの大きな劇場では、声がきれいで、容姿もよく、演技力があっても、体力がないと、審査風景でいわれたように「いいけれどヨーロッパ向き」と言われるのだろう。

もっとも、ここで活躍しているルネ・フレミングそしてなによりナタリー・デセイはこの3人とは反対だし、現在一番人気のアンナ・ネトレプコだって細くはないけれど違うタイプだ。

 

そして1年後の2008年、ファイナリストたちのその後が最後に流れるが、勝者であった30歳のテノールがガンのため亡くなり、この番組を彼にささげるとあった。

ファイナルで歌った「冷たい手を」(ボエーム)は見事だったが、、、


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