「終着駅 トルストイ最後の旅」 (THE LAST STATION、2009独・露、112分)
監督・脚本:マイケル・ホフマン、原作ジェイ・バリーニ
クリストファー・プラマー(レフ・トルストイ)、ヘレン・ミレン(ソフィア・トルストイ)、ジェームズ・マカヴォイ(ワレンチン)、ポール・ジアマッティ(チェルトコフ)、ケリー・コンドン(マーシャ)
(WOWOW)
いわゆるトルストイ(1828-1910)の家出、それも死の直前、家出の途中死んでしまう、その話である。
成功したトルストイは、村に住み大家族と農民たちとともに、一見理想郷のようなものを作っていた。おそらく武者小路実篤らの「新しき村」もその影響らしい。
しかし、最後に自らの作品の著作権を放棄すると言い出し、妻の猛反対にあう。それが大きな原因の一つになり、夫婦の不仲になって、家出に至ったものと想像されている。
この話については、2010年12月にNHKで特集番組があり、田中泯・余貴美子というすごいメンバーが夫婦の手紙を朗読していた。
トルストイの思想に共鳴した協会の中心である秘書チェルトコフ、彼がうまく取り入ったとソフィアは思っている。そこに新しい秘書として若いワレンチンが来る。TV番組と比べるとこっちは普通に映画としても楽しめるように作ってあるから、いくつかの問題が拡散気味になっている。
実は、この世界的大作家の作品を一つも読んでいない。ドストエフスキーの主要作品は若いころ一通り読んだのだが。
したがってというのもおかしいが、興味は一つ「著作権放棄」である。このようなことを言い出した過去の有名作家(画家などもふくめ)は記憶にない。
協会のチェルトコフはそれを進め、当然ながらソフィアは半狂乱になる。そしてトルストイは家出し、まもなく肺炎で倒れ、留まった駅舎で息を引き取る。ソフィアは娘とともに駆けつけるが、息を引き取る直前まで会わせてもらえない。
ヘレン・ミレン、ポール・ジアマッティなどうまい役者はそろっている。ただヘレン・ミレンのソフィアはもう少し悪い人の印象を残してもよかったのではないか。
さて、映画の最後、クレジットのところで、後に著作権は妻に継承されたとある。なぜかはこの映画を見てもわからない。私も仕事で著作権関連の事例を集めているから、詳しい事情を知りたいところだ。
ひょっとして、死後のロシア革命情勢が何か影響したのか。