メドレー日記 Ⅱ

by 笠羽晴夫 映画、音楽、美術、本などの個人メドレーです

エリザベス:ゴールデン・エイジ

2009-03-03 21:53:15 | 映画
「エリザベス:ゴールデン・エイジ」 (Elizabeth:The Golden Age、2007英・仏、114分)
監督:シェカール・カプール
ケイト・ブランシェット、ジェフリー・ラッシュ、クライヴ・オーウェン、アビー・コーニッシュ、サマンサ・モートン
 
エリザベスという強い女王が主人公で面白いドラマが可能か?それもいろいろあって女王になるまででなく、なってからどうなのか。映画としては中途半端なものになった。ほかにありようがあったかどうかは別にして。
 
スコットランド女王メアリーの処刑とスペイン無敵艦隊を破るという二つの大仕事、その時期のエリザベスの私生活上の問題、特に後者の話になると割合ゆっくり描かれるから、全体として緊迫感がなくなってしまう。
 
日本でいえば、大河ドラマのようで、エリザベスとウォルター・ローリーは、篤姫と小松帯刀のようなもの、英国人にとっては進行のテンポを気にせず見ることができるのだろう。
 
そういえば前作も見たはずだがあまり印象はない。その前の話で彼女の出生までが描かれている「プーリン家の姉妹」(2008)を見ていたから、背景の感覚が少しつかめていたようだ。
エリザベスが最後、私生活についても決心し、無敵艦隊を迎え撃つべく馬上から檄を飛ばすところはまるでジャンヌ・ダルクで、こんなだったの?こんな風であってほしいの?と思われた。
 
ブランシェットにとって、そんなに得な出演でなかっただろうが、それは第一作「エリザベス」(1998)で世界に有名になったからしょうがない。それでもここは、俗な見え方を気にせず演じきっているのはさすがである。
こうして2作に出ていても、すでに彼女はエリザベス女優ではない。同じ時期に「アイム・ノット・ゼア」(2007)でなんとボブ・ディランを演じているし、これからもどんな役を演じてくれるか、非常に楽しみな女優だ。
 
ほかには、侍女ベスのアビー・コーニッシュは適役、ケイト・ブランシェットと同じオーストラリア出身というのも面白い。今や英米映画界はここの俳優なくして成り立たないようだ。
メアリーのサマンサ・モートンは、あまり演技をしようがない脚本・演出だがなかなかの演技、評判の人だけのことはある。
 
スコットランド、スペインを諜報で切り崩したらしいフランシス・ウォルシンガムのジェフリー・ラッシュ(近代のMI6のもととか)、これもメアリー同様、出番が少ないので英国にくわしくないとわかりにくいのだろうが、手堅い演技。
 
ウォルター・ローリーのクライヴ・オーウェンは他の作品よりどこかにやけていて、それは女王との身分のひらきをあえてはっきりさせるつもになのだろうか。あまりしっくりしなかった。

  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする