メドレー日記 Ⅱ

by 笠羽晴夫 映画、音楽、美術、本などの個人メドレーです

金沢21世紀美術館

2007-03-20 22:38:36 | 美術
金沢21世紀美術館に行くのは約1年ぶり2回目である。
相変わらずの盛況、現代アート主体で出来るだけこれを継続してほしいものである。そうすると何かが見えてくる。そうなるとこちらも気軽に遊んでみようという気になる。
常設展扱いのものも、半分近くは以前と異なるもので、なかでも奈良美智が半年ほど金沢に滞在して作った一室と屋外のカフェは、この21日までだったから、幸運というべきだろう。
 
Moonlight Serenade と題した小屋の上の黄色(月の色)の女の子の顔と、その下にあるいくつかの白いプラスティックの頭、小屋の中は奈良のアトリエ。女の子は頭の中に何か重いものが一杯つまって怒っているようないつもの顔よりは心なしか柔和で、たまたま別の展示の部屋で見かけた奈良本人とよく似ていた。
また奈良が作るPup(子犬) Up the Dog という巨大な犬のぬいぐるみの部屋では、子供に様々な色・サイズのぬいぐるみが貸し出され、それを着たまま館内を見て回るという仕掛けが人気であった。どの子が着てもかわいいものである。
 
その他、田中敦子(1935-2005)のレコード盤状のものを針がトレースし金属片の配置によって導通がくると部屋の特定のところにあるベルがなるという作品は、あたかも明和電機の前史というべきもの。たまたま売店で明和電機の定番を発見し、笑ってしまった。
 
企画展(600円でこれを含み全部見ることが出来る)は「リアル・ユートピア~無限の物語」で、イ・ブル、草間彌生、岸本清子、木村太陽の四人で構成されている。草間以外は名前を聞くのもはじめて。
 
イ・ブル(1964~)の空間を贅沢に使った、それも壁と同じ白主体の巨大なオブジェ、線画風のもの、なにやら有機的でエロティック。
 
草間彌生(1929~)は20世紀前衛そのもので歳を重ねても前衛なのはいい。蛍光が光る部屋はゆっくり味わうことが出来る。
 
岸本清子(1939-1988)は戦前生まれだが、ゴリラ、怪獣のイメージが一世代前への郷愁を誘う。
 
木村太陽(1970~)では部屋の中央のほぼ円の中に方向自在滑車が頭になっているハトと思われるものを沢山置き、その上を1m四方平底の荷台上のものを動かすと、それがハトたちの上を無事に滑っていくという意味ありげな作品。
 
一通り見終わって売店に入り見ていると、何故かカズオ・イシグロの「私を離さないで」が売られており、ポップに「リアル・ユートピア~無限の物語」の企画者はこれに触発されたとあった。
後から美術館のサイトを探してみたら確かに企画の意図が述べられていた。
しかし読んでもよくわからない。わからないが、この作品たちとこの小説がイメージとしてつながるというのは、多少理解できる。
ただ、「私を離さないで」の主人公はユートピアを想っていない、だから読むものに感銘を与えるのだが。
 
なお、無料スペースにある加賀友禅をイメージしたの色と文様からなる大きな壁、そしてその文様を切り出して貼り付けた多くのロッキングチェア、ここは休憩場所でもあるのだが、椅子をゆすりながら光庭を眺めるのは、天気がよいこともあり悦楽であった。マイケル・リンの作品。

  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする