メドレー日記 Ⅱ

by 笠羽晴夫 映画、音楽、美術、本などの個人メドレーです

綴り字のシーズン

2007-03-03 23:49:58 | 映画
「綴り字のシーズン」(Bee Season、2005年、米、105分)
監督:スコット・マクギー、デヴィッド・シーゲル
リチャード・ギア、ジュリエット・ビノシュ、フローラ・クロス、マックス・ミンゲラ、ケイト・ボスワース
 
米国で熱い人気があるときいていたスペリング・コンテスト、spelling bee、で才能を発揮し始めた娘の家族の物語である。 bee というのはスペリング・コンテストがぶんぶんいうようにきこえるということからこう呼ばれるようになったときいている。
 
娘の才能がわかると、父親(リチャード・ギア)はユダヤ教徒で宗教学の教授ということもあって、それまで娘の兄を気にかけていたのに、今度は言葉と神、言葉の神秘という考えから、国のコンテスト優勝に向けて異常に娘に熱心になる。
 
このあたりから、家族4人のベクトルが少しずつ違いはじめ、演出、音楽ともにミステリータッチが強くなっていくのだが。
 
個人の、そして日本人としての好みからいうと、こういうしつらえよりは、もっとスペリング・コンテストそのものに焦点をあてて欲しかった。
まあ結末は、予想できたとはいえ、的確な着地だろう。
 
リチャード・ギアはこういう何か半分欠けている夫、父親をやるとうまくはまるし、最初はどうしてこの人がというジュリエット・ビノシュの妻も、ミステリー仕立ての中でこの人ならではの演技を見せる。娘役のフローラ・クロスが評判になったというのはもっともだろう。
 
息子役のマックス・ミンゲラはアンソニー・ミンゲラの息子、ということはジュリエット・ビノシュとならんで「イングリッシュ・ペイシェント」つながりなんだろう。
スペリング・コンテストは、本当に米国で人気があるらしい。確かに出張の折りにTVでも見た覚えがある。フランスにも言葉のクイズ番組はあるけれどちょっと違った作りのようだ。 
 
この映画でもちょっと触れられているように、コンテストでは知っている単語のスペルを答えられるのは当然として、そうでない言葉に対してどうするかも問題となる。だからここでも父親からちょっとカルト的な世界も出てくるのだが、そうでなくても、出題されたときに、どういう意味か、起源はなどきいてもいいようで、ギリシャ語から来たとか答えられた後に、頭の中をめぐらして正解ということもある。
 
以前たしか土曜午後のNHKラジオでこのあたりの事情に詳しい方が話していたことには、英語というのはブリタニアがローマに侵略された後、ギリシャ語、ゲルマン語、フランス語、ケルト語など様々な言語が入ってきて、しかもそれが原型をかなりとどめているという珍しい言語だそうで、それがスペルを覚えることを困難にしているそうだ。
 
そういえば、他の言語は少しやると字面を見て発音して、微妙な発音は別としてそんなに間違いはないのに、英語は難しい、ということもなるほどと、納得できる。だからスペリング・コンテストが成立する。
 
このカリフォルニア州には、いろいろこのテーマで興味深い実話があるそうだ。今回のようにインテリ家庭でなくても、天才が出るようである。
 
あと、娘の名前がイライザというのは「マイ・フェア・レディ」を思い起こさせる。あそこでイライザに正統英語を教えるヒギンスは確か言語学の教授だった。
 
もう一つ、アニメの「ピーナッツ」で、この種のコンテストに出るチャーリー・ブラウンに、後からスヌーピーが応援に行く、という話があった。

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