東京都は原発停止による電力の供給不安定を解消するために、自前で発電所の開設を計画しています。これまで電力不足への対応策として、「埋蔵電力の発掘」とか、いわゆる自然エネルギーの利用が喧伝されることはしばしばありましたが、本格的な火力発電所の建設計画は初めてであり、その成り行きが大いに注目されます。
埋蔵電力の発掘と言われるのは、電力会社が稼動を停止した老朽発電施設や、企業あるいは病院などがバックアップ用に持っている発電施設を稼動して、需要のピークを凌ごうという発想です。例えば、関西電力が海南発電所2号機(定格45万KW)の再稼動をしていますが、これは昭和45年に建造された老朽機で、もう10年以上も使われていなかったもの。
火力発電所って、原発と違って大々的に報道はされませんが、結構トラブルで止まっているんです。特に電力不足が懸念されている関西、中国地方に限っても、2011年3月の震災から今に至るまで、
2011年5月 関西電力 舞鶴発電所1号機(90万KW)が通風機の損傷により停止
2011年7月 関西電力 姫路第二発電所5号機(60万KW)が電子部品の損傷により停止
2011年7月 中国電力 三隅発電所1号機(100万KW)が蒸気漏れで停止
2011年8月 関西電力 堺港発電所2号機(40万KW)がガスタービンの羽根損傷により停止
2012年4月 中国電力 玉島発電所3号機(50万KW)が蒸気漏れで停止
2012年1月 中国電力 下松発電所3号機(70万KW)がボイラー配管の損傷により停止
2012年5月 関西電力 海南発電所3号機(60万KW)が配管からの漏水により停止
2012年6月 関西電力 南港発電所および姫路第二発電所(合計出力225万KW)でクラゲによる冷却水不足により出力を抑制
といった事故が報告されています。特に老朽化に伴い、通常火力ではボイラーの配管、ガスタービンでは羽根が損傷しやすくなり、定期的な点検に加えて、ある程度の予期しない事故は起こり得ます。このために電力供給には相当の余裕を見込んでおかなければいけません。「埋蔵」されていた老朽施設を活用する場合は、なおさら安全マージンが必要です。
企業や病院のバックアップ用設備については、最初から「埋蔵電力」とカウントするのは無理なものがかなり含まれていると思います。例えば、私の勤務する病院では、年間の光熱水費が3億円弱、と事業概要にあります。年間の利益はかなり変動が大きくて、何とか数億円オーダーの黒字ということになっていますので、光熱費が大幅に嵩むことがあれば、たちまち赤字経営に転落します。自治体病院ですから赤字でもすぐに潰れることはありませんが、企業ならたちまち死活問題です。
さて、その病院の電気設備は、受電用に変圧器の容量が12,175KVAとあります。これに対して発電機は、ディーゼル1,250KVAおよびガスタービン750KVAが2基。つまり、電力会社の電力は12,175KWまで受け入れられるが、自家発電は合計2,750KWしかないよ、ということ。外部電源を切られれば、普段の2割強しか供給能力がありません。従って、いざ電力会社が停電ということになれば、手術室とか緊急検査室、集中治療室のような緊急性のある設備に優先して電力が回されるはずですから、一般の病室や外来診察室、待合室などではエアコンなしで我慢して頂くことになりそうです。消費電力の大きいCTやMRIを深夜に稼動することになるかもしれません。
それにしても、(全電力をまかなえない)病院の非常用電源だけでも2,750KWです。中部電力の「メガソーラーいいだ」の出力は1,000KW、同じく「メガソーラーたけとよ」は7,500KWに過ぎず、しかもこれは日中晴天時の最大出力。よって、「メガソーラーたけとよ」の年間発電量は730万KWhと想定されています。つまり最大出力で1,000時間ほど発電したら、今年の仕事は終わりだよ、という施設です。夜はもちろん使えません。これでは最新のメガソーラーといえども、実用性においては当院の自家発電設備にも及ばないということになります。
ということで、もし原発を再稼動できないのなら、代替は新しい火力発電所以外にありません。問題は東京都環境局の文書にもあるように、多額の建設費用と運転までの建設期間が5年以上掛かることであり、また将来的な燃料費の高騰も予測されますが、ともかく東京都が自ら有効な電力確保に乗り出したことは、国や全国の自治体の範であり、大いに評価できます。
この東京都の実践的な対応に比べますと、河村たかし名古屋市長は
と実にのんびりしています。浜岡の運転再開は数ヶ月で可能ですが、同規模の発電能力を持つ火力発電所の建設には、環境アセスメントなどを入れれば10年近く必要。今に至るまで何も動いてない人が言うべき言葉じゃありません。
それに、
埋蔵電力の発掘と言われるのは、電力会社が稼動を停止した老朽発電施設や、企業あるいは病院などがバックアップ用に持っている発電施設を稼動して、需要のピークを凌ごうという発想です。例えば、関西電力が海南発電所2号機(定格45万KW)の再稼動をしていますが、これは昭和45年に建造された老朽機で、もう10年以上も使われていなかったもの。
火力発電所って、原発と違って大々的に報道はされませんが、結構トラブルで止まっているんです。特に電力不足が懸念されている関西、中国地方に限っても、2011年3月の震災から今に至るまで、
2011年5月 関西電力 舞鶴発電所1号機(90万KW)が通風機の損傷により停止
2011年7月 関西電力 姫路第二発電所5号機(60万KW)が電子部品の損傷により停止
2011年7月 中国電力 三隅発電所1号機(100万KW)が蒸気漏れで停止
2011年8月 関西電力 堺港発電所2号機(40万KW)がガスタービンの羽根損傷により停止
2012年4月 中国電力 玉島発電所3号機(50万KW)が蒸気漏れで停止
2012年1月 中国電力 下松発電所3号機(70万KW)がボイラー配管の損傷により停止
2012年5月 関西電力 海南発電所3号機(60万KW)が配管からの漏水により停止
2012年6月 関西電力 南港発電所および姫路第二発電所(合計出力225万KW)でクラゲによる冷却水不足により出力を抑制
といった事故が報告されています。特に老朽化に伴い、通常火力ではボイラーの配管、ガスタービンでは羽根が損傷しやすくなり、定期的な点検に加えて、ある程度の予期しない事故は起こり得ます。このために電力供給には相当の余裕を見込んでおかなければいけません。「埋蔵」されていた老朽施設を活用する場合は、なおさら安全マージンが必要です。
企業や病院のバックアップ用設備については、最初から「埋蔵電力」とカウントするのは無理なものがかなり含まれていると思います。例えば、私の勤務する病院では、年間の光熱水費が3億円弱、と事業概要にあります。年間の利益はかなり変動が大きくて、何とか数億円オーダーの黒字ということになっていますので、光熱費が大幅に嵩むことがあれば、たちまち赤字経営に転落します。自治体病院ですから赤字でもすぐに潰れることはありませんが、企業ならたちまち死活問題です。
さて、その病院の電気設備は、受電用に変圧器の容量が12,175KVAとあります。これに対して発電機は、ディーゼル1,250KVAおよびガスタービン750KVAが2基。つまり、電力会社の電力は12,175KWまで受け入れられるが、自家発電は合計2,750KWしかないよ、ということ。外部電源を切られれば、普段の2割強しか供給能力がありません。従って、いざ電力会社が停電ということになれば、手術室とか緊急検査室、集中治療室のような緊急性のある設備に優先して電力が回されるはずですから、一般の病室や外来診察室、待合室などではエアコンなしで我慢して頂くことになりそうです。消費電力の大きいCTやMRIを深夜に稼動することになるかもしれません。
それにしても、(全電力をまかなえない)病院の非常用電源だけでも2,750KWです。中部電力の「メガソーラーいいだ」の出力は1,000KW、同じく「メガソーラーたけとよ」は7,500KWに過ぎず、しかもこれは日中晴天時の最大出力。よって、「メガソーラーたけとよ」の年間発電量は730万KWhと想定されています。つまり最大出力で1,000時間ほど発電したら、今年の仕事は終わりだよ、という施設です。夜はもちろん使えません。これでは最新のメガソーラーといえども、実用性においては当院の自家発電設備にも及ばないということになります。
ということで、もし原発を再稼動できないのなら、代替は新しい火力発電所以外にありません。問題は東京都環境局の文書にもあるように、多額の建設費用と運転までの建設期間が5年以上掛かることであり、また将来的な燃料費の高騰も予測されますが、ともかく東京都が自ら有効な電力確保に乗り出したことは、国や全国の自治体の範であり、大いに評価できます。
この東京都の実践的な対応に比べますと、河村たかし名古屋市長は
浜岡原発、再開に確か1400億円。「そんなら、その金で世界最新技術の、火力発電所作ったほうが、エエガや」と河村たかしが、申し上げたところ。そうなんですは、とのお言葉あり。
― 河村 たかし(本人)さん (@kawamura758) 6月 27, 2012
と実にのんびりしています。浜岡の運転再開は数ヶ月で可能ですが、同規模の発電能力を持つ火力発電所の建設には、環境アセスメントなどを入れれば10年近く必要。今に至るまで何も動いてない人が言うべき言葉じゃありません。
それに、
今、電力会社株主総会テレビ、やっとりますが、すんません。なんで、名古屋市、中部電力株主総会に河村たかし、出とらんかと、おもっとられる皆さん多く居られると思います。大変残念だけど、名古屋市は中部電力に、大阪市、東京都と違い、一株も、持っとらんのです。
― 河村 たかし(本人)さん (@kawamura758) 6月 27, 2012
この発言も相当なもんですね。
橋下大阪市長が、関西電力の株を取得して筆頭株主になった上で、株主総会に出席して原発反対を主張したのは、政策としてはともかく手続きとしては真っ当なものです。しかるに、名古屋市が中部電力の株を全く保有していないと言うなら、私企業である中部電力の経営判断に名古屋市長が干渉する権利がどこにあるのでしょう?少なくとも浜岡発電所は、名古屋市に安定した電力をもたらしており、特筆するような事故を起こしたこともありません。自治体の首長としてこんな発言をする合理的な根拠はないのです。河村たかしは資本主義経済を理解していないのでしょうか?
私は福島以外の原発については再稼動して電力の安定供給に資するのが最も合理的だと思いますが、老朽化したものから廃炉、代替していく必要がありますし、火力についても安全マージンなしの運転は危険です。自然エネルギーとやらも実用的にはかなり怪しいものであり、効率のいい新規火力発電所が早急に(と言っても稼動は早くて5年後)建設されるべきだと判断しますので、東京都の電力行政を支持します。河村たかし名古屋市長には、焼酎に猪瀬直樹東京都副知事の爪の垢でも浮かべて飲むようにお勧めします。