電力各社と家電メーカー各社(以下「電気連合」)が、家庭における省エネルギーの切り札として普及を進めていた電動ヒートポンプ給湯システム、「エコキュート」に対して、ガス会社とガス機器メーカー各社(以下「ガス連合」)は都市ガスによるコジェネレーションシステム「エコウィル」とまだまだ高価な燃料電池「エネファーム」で対抗していましたが、これまでのところ電気連合のエコキュートが圧倒していました。
エコキュートのエネルギー効率の高さは画期的でしたし、「給湯をエコキュートに任せてオール電化にすれば、ガス配管も基本料金も不要。しかも電気料金が割安になる」という販売戦略も説得力のあるものでした。新築一戸建てではオール電化の割合が年々高くなり、ガス連合の前途には暗雲が立ち込めていました。しかし思いもよらぬ電力不足が現実のものになり、ガス連合の逆襲が始まったようです。
ガス連合の武器になるエコウィルは、ホンダの小型エンジンをガスで駆動するシステムで、エンジンの動力で発電し、エンジンの熱で給湯します。発電量が1kw、熱量が2.5kwということなのですが、この電気は太陽光発電と違い「自然エネルギー」と見做されていないため、電力会社による買い取り義務がなく、余っても買い取ってもらえません。かと言って電力は貯蔵できないため、「シャワーのために湯を沸かしたら、一緒に発電したけど使い道がない」という無駄なことになります。仕方がないので余った電力はヒーターで給湯の方に流用する仕組みになり、エネルギー効率が高いとは言えません。このため設置家庭での評価が今ひとつで、何とか新型で巻き返しを図りたいのでしょう。
私はエコウィルそのものには魅力を感じません。発電と給湯が常に並行してなされるため、電気が欲しいときにお湯を沸かし、お湯が欲しいときに発電するというちぐはぐがあり、お湯は貯めておけるにしても電気は貯められないし、売ることもできない。太陽光発電なら発電のピークが晴天の昼間ですから、まあエアコンによる需要期です。しかし風呂やシャワーは電気の需要ピークを過ぎた夕方以降に利用されることが多いので、電力会社としては買い取りのメリットがない。コジェネはビル単位など、もっと大きな規模でないと利点がはっきりしないように思います。
しかしこの新型エコウィルに使われるホンダのエンジン、EXlinkが面白いです。圧縮比よりも膨張比が大きい、アトキンソンサイクルが熱効率に優れているのは昔からわかっていたことですが、それを実現しようと思ったら、バルブタイミングをずらして擬似的に圧縮比と膨張比を変化させるミラーサイクルしかないと思っていました。こんなシンプルな機構で小型にまとめたのは立派です。ホンダが説明のため用意してくれた動画を見て、その動きの巧みさに見とれてしまいました。それにしても圧縮比と膨張比を変化させるキーデバイスが(ロータリーに使われる)エキセントリックシャフトとは!マツダのエンジニアが見たら悔しくて寝られないでしょうね。
副産物としてピストンとコンロッドの角度が小さく、ピストンの面圧が小さくなることでフリクションが低減できるのも結構なことです。もちろん燃費が優れているわけですが、それに加えて実質的なコンロッドレシオが大きくなることで、騒音の低減も図れますし、笹目二郎さんがいつも指摘されているエンジンフィーリングの向上にもつながります。
発電機のエンジンフィーリングなど誰も気にしないでしょうが、ホンダはこのエンジン機構を自動車に載せてくるに違いないと私は予想しています。現状で圧縮比が12.2、膨張比が17.6ですから膨張比が圧縮比の1.4倍以上という素晴らしい数値で、プリウスの同数値(都合が悪いのか明記されていない)を大幅に上回っていると考えられます。これに可変バルブ機構を組み合わせればアトキンソンサイクルの作動範囲を更に広げられ、兼坂弘さんが提唱されていたガソリンエンジンの理想が実現するわけです。
機構の複雑さから中大型車専用になると思いますが、EXlinkで重くなるのはエンジンの下半分なので、バルブ周りが複雑になるよりは対応しやすいでしょう。慣性質量が大きいため、レスポンスに問題が出るかもしれませんが、出力を瞬時に変化させられる電気モーターと組み合わせれば問題なし。時期レジェンドの飛び道具として期待していますが、もしかしたら小型車用に2気筒エンジンが出るかもしれません。エコウィルの逆襲は売電ができない限り難しいと見ますが、新世代エンジンの開発に立ち遅れていたホンダの逆襲は見ものだと思います。
エコキュートのエネルギー効率の高さは画期的でしたし、「給湯をエコキュートに任せてオール電化にすれば、ガス配管も基本料金も不要。しかも電気料金が割安になる」という販売戦略も説得力のあるものでした。新築一戸建てではオール電化の割合が年々高くなり、ガス連合の前途には暗雲が立ち込めていました。しかし思いもよらぬ電力不足が現実のものになり、ガス連合の逆襲が始まったようです。
ガス連合の武器になるエコウィルは、ホンダの小型エンジンをガスで駆動するシステムで、エンジンの動力で発電し、エンジンの熱で給湯します。発電量が1kw、熱量が2.5kwということなのですが、この電気は太陽光発電と違い「自然エネルギー」と見做されていないため、電力会社による買い取り義務がなく、余っても買い取ってもらえません。かと言って電力は貯蔵できないため、「シャワーのために湯を沸かしたら、一緒に発電したけど使い道がない」という無駄なことになります。仕方がないので余った電力はヒーターで給湯の方に流用する仕組みになり、エネルギー効率が高いとは言えません。このため設置家庭での評価が今ひとつで、何とか新型で巻き返しを図りたいのでしょう。
私はエコウィルそのものには魅力を感じません。発電と給湯が常に並行してなされるため、電気が欲しいときにお湯を沸かし、お湯が欲しいときに発電するというちぐはぐがあり、お湯は貯めておけるにしても電気は貯められないし、売ることもできない。太陽光発電なら発電のピークが晴天の昼間ですから、まあエアコンによる需要期です。しかし風呂やシャワーは電気の需要ピークを過ぎた夕方以降に利用されることが多いので、電力会社としては買い取りのメリットがない。コジェネはビル単位など、もっと大きな規模でないと利点がはっきりしないように思います。
しかしこの新型エコウィルに使われるホンダのエンジン、EXlinkが面白いです。圧縮比よりも膨張比が大きい、アトキンソンサイクルが熱効率に優れているのは昔からわかっていたことですが、それを実現しようと思ったら、バルブタイミングをずらして擬似的に圧縮比と膨張比を変化させるミラーサイクルしかないと思っていました。こんなシンプルな機構で小型にまとめたのは立派です。ホンダが説明のため用意してくれた動画を見て、その動きの巧みさに見とれてしまいました。それにしても圧縮比と膨張比を変化させるキーデバイスが(ロータリーに使われる)エキセントリックシャフトとは!マツダのエンジニアが見たら悔しくて寝られないでしょうね。
副産物としてピストンとコンロッドの角度が小さく、ピストンの面圧が小さくなることでフリクションが低減できるのも結構なことです。もちろん燃費が優れているわけですが、それに加えて実質的なコンロッドレシオが大きくなることで、騒音の低減も図れますし、笹目二郎さんがいつも指摘されているエンジンフィーリングの向上にもつながります。
発電機のエンジンフィーリングなど誰も気にしないでしょうが、ホンダはこのエンジン機構を自動車に載せてくるに違いないと私は予想しています。現状で圧縮比が12.2、膨張比が17.6ですから膨張比が圧縮比の1.4倍以上という素晴らしい数値で、プリウスの同数値(都合が悪いのか明記されていない)を大幅に上回っていると考えられます。これに可変バルブ機構を組み合わせればアトキンソンサイクルの作動範囲を更に広げられ、兼坂弘さんが提唱されていたガソリンエンジンの理想が実現するわけです。
機構の複雑さから中大型車専用になると思いますが、EXlinkで重くなるのはエンジンの下半分なので、バルブ周りが複雑になるよりは対応しやすいでしょう。慣性質量が大きいため、レスポンスに問題が出るかもしれませんが、出力を瞬時に変化させられる電気モーターと組み合わせれば問題なし。時期レジェンドの飛び道具として期待していますが、もしかしたら小型車用に2気筒エンジンが出るかもしれません。エコウィルの逆襲は売電ができない限り難しいと見ますが、新世代エンジンの開発に立ち遅れていたホンダの逆襲は見ものだと思います。