いーなごや極楽日記

極楽(名古屋市名東区)に住みながら、当分悟りの開けそうにない一家の毎日を綴ります。
専門である病理学の啓蒙活動も。

コンコルドの次に来るもの

2011年07月01日 | 極楽日記
 ボーイングに次ぐ世界有数の航空機産業であるヨーロッパのEADS社(エアバスの親会社と言った方が通りがいい)が、6月下旬に開催されたパリ航空ショーに合わせて超音速機のコンセプトを発表しています。

 コンニチハ、コンニチハの大阪万博があって日本経済が右肩上がりムード絶頂だった1970年頃、世界の有力な航空機メーカーは競って超音速旅客機(SST)の開発を進めていました。その嚆矢となったのが英仏共同開発のコンコルドで、これは1969年に初飛行しています。少年向きの雑誌にはコンコルドの写真と並んで、ボーイングが開発中の大型超音速機2707や、ロッキードL2000、そして当時のソ連が計画していたツポレフTu-144の未来的な絵が掲載され、子供を大いに喜ばせたものでした。

 結局、折からの環境問題や石油ショックに影響されて、実用化されたSSTはコンコルドと、ソ連の威信のため大赤字で運行されたTu-144のみであり、それも同時期に大量輸送と経済性、省力化を追求して開発されたボーイングB747などに圧倒されて商業的には失敗に終わります。

 今回のコンセプトはZEHST (Zero Emission High Supersonic Transport)と称されています。ゼロエミッションだって?つまり液体水素を燃料にしているため、巡航状態で炭酸ガスを出さないということのようです。超音速でラムジェットの効率がいいことは昔から言われていましたが、能動的な圧縮装置がないため高速飛行状態でないと始動できないという使いにくさがあります。このためラムジェット機は音速以上に達するまでを通常型のターボジェットなどで加速するハイブリッド機にならざるを得ず、ラムジェット自体が簡単な構造(だからと言って開発や製造まで簡単なわけではないが)で軽量なのにもかかわらず、全体としては複雑で重いものになってしまいます。

 ZEHSTにおいても、離陸からマッハ0.5までは通常のターボジェット、そこから音速の壁を越える抗力の大きい領域ではロケットブースター併用、そして40,000mの高高度で巡航する時のみ液体水素を燃料としたラムジェットだけで飛行します。ターボジェットは通常のジェット燃料ですから、もちろん炭酸ガスを排出しますが、これはバイオ燃料を使ってクリアするそうです。巡航速度はおよそマッハ4で、うまくいけば東京とパリあるいはロンドンが2時間半。

 構想は科学雑誌などでたまに見るようなものであり、同じようなことはボーイングや他のメーカー、研究機関でも考えているでしょう。EADS社としては2050年を目途にしているようです。エンジン3種類を使い分け、という複雑さが少なからぬ障害になるだろうとは思いますが、日本が不況と震災、原発事故の影響で何もかもしぼんで見える時には、こんな大風呂敷がまぶしく見えます。
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