こたなたよりこんなこと

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113番目の「ニホニウム」って?

2016年06月13日 | 天文・科学

 6月8日に「113番目の元素名がニホニウムに決定」と報道されていましたね。日本の「理化学研究所」にて「発見された元素」と言うトコですが、どういうことなのでしょうか?

 以前もお話した事がありますが、私は「元素」が結構好きでして、高校の時に「イオンと元素」がテスト範囲だった時に「99点」をとった事があったりします。そんなワケでこの「113番目元素」については2010年からその存在と、理化学研究所が命名権を持つ事になるのは知っていました。当時は「ウンウントリウム」と「ラテン語」で「113番目の元素」という「仮名」で呼ばれていました。

 さて、この「113番目元素」、「ニホニウム」ですが、どんな元素なんでしょうか?基本的に「教科書」の「元素周期表」には「103番目 Lr」、「ローレンシウム」までは乗っていますね?その先104番目から先は何個まであるかはご存知でしょうか?現時点で118番目の「ウンウンオクチウム」「IUPAC」が認証すれば「オガネソン(Og)」までが発見されています。ちなみに「114 Fl フレロビウム」と「117 Lv リバモリウム」は2012年5月に正式認定をされています。

 話がそれましたが、「ニホニウム」は「天然元素」では無く「加速器により合成された元素」なんですよ。自然界で発見された元素は「92番 U ウラン」まで(43番Tc テクネチウムと85番At アスタチンを除く)でして、それ以降は「加速器」などにより「合成」された元素「人工元素」なんですよ。「113番Nh ニホニウム」も例外では無く、理化学研究所が所有する「線形加速器 RILAC」により「亜鉛の原子」を「1秒間に5兆個」も「ビスマス」の「薄膜」へ飛ばしたのです。この時の「亜鉛原子」の速さは「光の10%」つまり「3万km/s」まで加速されたのです。

 なぜ「亜鉛」と「ビスマス」なのか?は「30番Zn 亜鉛」と「83番Bi ビスマス」の原子、「元素番号」は「陽子の数」で決まるので「30+83=113」となるワケですよ。コレだけ聞くと簡単そうに思えるでしょうが「電気的にプラスの電荷」を帯びている「原子核」同士は磁石と同じように近づけると「反発」してしまうのです。その為「超高速」でぶつけ合成するのです。それでも「プラスの電荷」を帯び、重い原子核同士がぶつかり融合することは稀なのです。しかもぶつけてからも問題があり、核融合反応の結果できた原子核は亜鉛原子核がビスマスをめがけてくる方向と同じ方向に飛び出てしまうのです。このため1秒間に5兆個の勢いで飛んでくる余分な「亜鉛原子核」から「数ヶ月に1個あるかないか」の稀な頻度で生じる原子核を捕まえなければなりません。そこで余計な亜鉛原子核の中から目的の原子核を効率的に検出器に導くため「気体充填型半跳核分離装置」、通称「GARIS(ガリス)」が開発されました、コレにより亜鉛とビスマスの原子核の融合によって合成された原子核は「GARIS」により分けられ検出器へ入っていくのです。

 未知の元素を確認するには「その元素の崩壊のようす」を観測することが重要となり、今回の「ニホニウム」の原子核の場合も「崩壊の過程」で観測された「元素をさかのぼり」、113番目の元素が合成された事を確認できたのです。

 「70Zn 亜鉛」と「209Bi ビスマス」の「原子核」が衝突し「核融合反応」が起こり、「279 113元素」が合成された瞬間は不安定な状態ですが「中性子」を1つ放出して「278Nh」が誕生します。その後「α粒子(ヘリウムの原子核)」が飛び出る「α崩壊」が起き、「ヘリウム原子核分」が抜けるので「111番目」の「274Rg レントゲニウム」へ、さらに「α崩壊」をして「109番目」の「270Mt マイトネリウム」になり、また「α崩壊」を起こす事を合計6回し、最終的に「101番目」である「254Md メンデレビウム」(278Nh→274Rg→270Mt→266Bh→262Db→258Lr→254Md)となった事が3個目の合成で観測されたので合成された原子核が「ウンウントリウム」である事が証明されたのです。なお、「アメリカ」と「ロシア」でも「ウンウントリウム」は合成されたとの報告があり、2013年には、米露の研究グループも状況証拠のみで命名権を満たす程度の充分なデータを揃えており、もし前年に理化学研究所が3例目の証拠を提出していなければこの時点で米露のグループが命名権を得ていた可能性が高かったようです。

 「ニホニウム」もそうですが、合成された元素は「α崩壊」するのも早く、2004年に合成された「ニホニウム」では「344マイクロ秒」で「α崩壊」し「Rg」へなってしまったのです。他の合成元素も「109番Mt マイトネリウム」は「0.07秒」、「110番Ds ダームスタチウム」なんて「0.00017秒」ですからね。α崩壊が早く特性などを確認できないまま無くなってしまうので、化学的特性はわからず、用途としても「研究用以外」には使用されないのです。

 「ニホニウム」が「アジア初の元素名権獲得」となりましたが、実は1908年に「ニッポニウム」という命名された元素があったのです。それは当時43番目元素である「Tc テクネチウム」の発見競争にて「日本」の「小川正孝」氏が「43番目元素」を発見し、「ニッポニウム」と命名して発表したのですが、その後「43番元素が地球上には存在しない」と判明した事により取り消されてしまったのです。1936年に「加速器」である「サイクロトロン」で「重陽子線」を「42番Mo モリブデン」にぶつける事によって「人類初の人工放射性元素」である「43番Tc テクネチウム」となりました。では、この「ニッポニウム」は何だったのか?それは周期表では「43 Tc」の一つ下にある「75番 Re レニウム」だったのです。当時「スペクトル」により新元素を証明したのですが、「X線分光装置」が入手できず正確な「スペクトル」が観測できなかったために誤って43番元素で「原子量およそ100の元素」として発表されたのです。もし、当時正確な観測ができていれば、そして1996年以降10年にわたりさまざまな証拠品が発見されており「小川正孝」氏の遺品から「ニッポニウム」の「X線分光写真乾板」が発見され、解析してみた結果キレイに「レニウム」特有の「X線スペクトル」が写っていたそうです。日本人特有の自己主張をしない事が「レニウム」が「ニッポニウム」になれなかったのかも知れませんね。「レニウム」はその「17年後」の「1925年 ノダック」により発見されました。

 元素は現在「理論上」では「173番目」までは存在するという説もあります。今後まだまだ新元素は発見されていくでしょう。

 それでは、本日の登場人物は科学な話題ですのでこの方。「ベルギー国立博物館」。「化学・科学館会場職員」である「ブラッド・ハウンド」の「Chiefille」、「二ノン・グリュミオー」さんです。「新元素」はぶつける事で合成して作られるのですよ。

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