木曜日の「これは見に行かないと」で紹介した「国立科学博物館 シアター360」今日行ってきました。結果から言うと、良いです。結構面白いですよ、でも上映時間が短いのが残念。まぁ席もないですし、回転率を考えたらアレで十分なのかな?とは思いましたがせめて15分番組は欲しいです。アレだけの映像だったらそれ位の番組は楽しみたいです。それで、今回上映されていたのは「愛・地球博」で上映していた「青の輝き」と、国立科学博物館オリジナル「恐竜の世界-化石から読み解く-」。2番組ともなんとなく「博物館」的で良いですね。まず「青の輝き」はデモですが、360度全球面スクリーンの特性を巧く使って表現しています。「恐竜の世界-化石から読み解く-」は「科学博物館」の展示内容を使っていて、実際に展示されている「トリケラトプス」の「化石」から、どのような事が解り、どんな生活をしていたかをホントに簡単ですが紹介しています。生物学的からの観点と歴史的考察を交えているので、大人も十分楽しめ理解できる内容です。
それで、これからは、今回の上映作品に対して、私なりのお薦め鑑賞方は、まず土日、休日はかなり込み合うと思いますので、9時35分~45分くらいに行くのが良いと思います。第1回目は9時30分からですが、博物館の開館時間が9時ですので並んでいる可能性があるからです。実際にこの時間に見ましたが、並んでいたのは2人だけでしたし、上映時には10人居るかいないかでしから。そして、見る位置ですが、ドームの中はその名前の通り「360度全面」がスクリーンになっており入り口から出口へと伸びている「橋」があり、この上で見ることになります。この橋、左右の両端がガラス張りになっており下も見れます。なので、なるべく橋の中間点で左右両端のどちらかにいると下も見れます。さらにこの橋は中央部分、ガラスになっていない部分に手すりがあり右側、左側に分かれています。今回の上映作品では、入り口から入って右側が主な進行方向、つまり正面になりますから、迫力の映像を見たい方は右端に、全体を満遍なく見たい方は左端で見るのがベストでしょう。だたし「青の輝き」のラストは左側がメインになります。
こう言った全面スクリーンは座って見るのが大抵ですが、この「シアター360」のように立って、しかもある程度移動が出来る(でも上映中は移動しちゃダメですよ)状態で見るのは面白い状態で、考えられいるなぁって感心しました。そんなこんなで、結局2回見ちゃいました。行きと帰りで。
話は変わって、今日のイラストです。「シアター360」ガイダンス学芸員の方が、まだ展示されてから時間があまり経っていないからでしょうかね、結構ガイダンスがカミカミで、初々しい感じだったので、そこから想像力を働かせでSSを作って見ました。登場人物は「Chiefille」より「博物館の学芸員」である「リリアーヌ」さん。ちなみにSSの文章はアスカちゃんです。
Creator Works Noel SP Nouvelle 「代役」
12月23日、そろそろクリスマスが近く、世間の大抵の企業は「Vacances de fin d'annee」つまりクリスマス休暇に入って街は大いに賑わっている。私、「リリアーヌ・コラフェイス」が勤めている「ベルギー国立博物館」も連日大入り。休日だからって事もあるけどそれ以上にアレの効果が大きいんじゃないかと私は思っている。極東の小さなハイテク国家「日本」から来た「全球面投影システム」通称「シアター360」。球面のドーム全面、左右は勿論、上下も映像を映すシステムが設置されたからだと思う。でも、じっさいそれは「科学館」の方で私のいる「古代歴史美術館」は直接は関係ないけど、それでも、シアター360目当ての来館者が来るので結構混んでいて良い相乗効果を産んで、「ベルギー国立博物館」は大賑わい。さて、今日も古美術品の素晴らしさを来館者さんに解ってもらえるようにガンバロっと!
さて、時計をして、お財布は持ったし・・・ん!?携帯に着信?誰からだろ?あ、「コレット」からだ。どうしたんだろあの娘?
「はい、リリアーヌで~す。どうしたのコレット?」
「あ、リリアちゃん。ケホッ。あのね、ケホッ、ケホッ…」
「大丈夫?ねぇ?」
「・・・ん、んっ。はぁ~。うん、大丈夫」
「ん、そう、それで一体何の用かしら?」
「うん、あのね、リリアちゃん。今日ね、私、ケホッ。こんな調子ケホッ、ケホッ。風邪引いちゃったみたいで、こんな調子なの。ケホン。・・・それで、今日、ケホッ。お休み貰ったんだけど、私、ケホッ、ケホッ。新しく出来た「シアター360」の案内して、ケホッ。いるでしょ?」
「そうね、結構楽しいって言っていたものね」
「うん、ホント面白いよ、ケホッ。リリアちゃんも、一回見に来たら?ケホン。それで、リリアちゃんに・・・ケホッ、ケホッ、ケホッ・・・」
「って、まさか、私にその案内を代わりにやってって言わないでしょうね?」
「はぁ、はぁ・・・。さすがリリアちゃんだね。ケホッ。あたりぃ~」
「え?チョ、チョット。ホント?だって部署が違うじゃないの!?私は古代歴史美術だし、コレットは天文でしょ?」
「ケホッ、うん、それは、ケホッ。大丈夫。古代歴史美術の室長さんにもケホッ。許可貰ってるし。ケホッ、ねっ。」
「そんな、いきなり。私に出来る・・・」
「大丈夫、ケホッ。リリアちゃんなら。ケホッ、ケホッ。じゃ、頑張ってね~」
「ちょっと、コレット!コレット!!」
必死に携帯に叫ぶけど、コレットからの返事の代わりに、ツーツーって、無機質な音がスピーカーから流れてくるだけ。ともかく、コレットの冗談かも知れないから、ってあの娘そんな冗談言う娘じゃ無かったっけ・・・。言ってみれば解る事だし。でも、ホントだったらどうしよう・・・。
こうして私は、一抹どころじゃない、初出勤の時以上の不安を抱えて出勤した。
「おはようございます」
「おはよう、コラフェイス君。所で、天文のアバック君から話は聞いたかね?」
「はい?まさか、あの代役の話ですか?」
「おお、その通りだよ、そうなら話は早いな。」
「え、まってくださいよ、室長。だって私はここの、古代歴史美術の学芸員ですよ?それに科学をやれって・・・」
「あぁ、その事か、どうやら、あっちは相当人手が足りないようだしな。あと、あっちから是非君にやってもらいってオファーもあった事だしな。君ならきっと大丈夫だ、頼んだよ」
「え?あ、まってくださいよ、室長」
室長は、満足そうな顔で自分のオフィスに入っていって、ポツンと残された私と、「頑張れよ」とか「大丈夫」とかの古代歴史美術の学芸員の声。頼まれるとnonって言えないリリアーヌ・コラフェイスでした…。さすが「ベルジアン・タービュレン」の「Chiefille」。
目の前には「天文室」のプレートが掛かっている扉。天文室長さんは妙齢の女性でかなり人なつこっくって良い人。結構私達からの人気も高いんだけど・・・まぁ、あの人の頼みじゃ、ウチの室長も断われないよね。
コンコン
「古代歴史美術のコラフェイス。入ります」
扉を開けて入ると、忙しそうにしている数人の学芸員と、ふわふわで緩いカールのライトブラウンの髪を揺らし、白衣を翻しながらワタワタと走っている妙齢の女性。この人が科学の室長さん。どうやら私の声に気がついたらしくワタワタと私の方に走って、って何で勢いがそのままで突っ込んでくるの?
「あ~ん。リリアちゃ~ん来てくれたのね~」
バフッ
うっ、飛びつかれた。
「あ~もう、今日ね、コレットちゃん、風邪引いてコンコンでお休みでしょ?それでこっちも人が足りなくってぇ。コレットちゃんみたいに綺麗な声の娘が他にいないし、それで、おばちゃんね、リリアちゃんの事思い出してね古代歴史美術の室長さんにお願いしてOKもらちゃった」
「は、はい。そうなんですか。あの、どうでもいいんですが耳、フニフニするの止めていただけません?聞きづらいので・・・」
「あら、ごめんなさいね。おばちゃん可愛い物を見るとついつい、悪い癖ね~。それでね今日リリアちゃんにやってもらうのはシアター360の案内をして欲しいの」
「ええ、それはコレットからあらかた聞いています。それで具体的には何をするのですか?」
室長さんはそう言いながらも私の耳をフニフニでも、これだと話が聞きづらいって解ってくれたのか2.3回フニフニっとして名残惜しそうに私から離れて白衣のポケットから1枚の紙を取り出して
「簡単な事よ。入場時の注意事項とシアター360の大体の概要に番組の事を説明して欲しいの。それで、これがその資料よ」
白衣から取り出して手渡された紙は、シアター360のチラシ。
「え?資料って、これチラシですよね?台本は・・・?」
「そうなの、ごめんなさいねぇ。台本コレットちゃんしか持っていなくってね、しかも覚える為にねお家に持って帰ったままみたいなのね。だから、それでリリアちゃんオリジナル案内を作って欲しいのよ」
「でも時間が、もうあまり無いですよ?」
「大丈夫よ、リリアちゃんなら。ね。じゃぁ、頑張ってね。おばちゃんもこれから機械の準備で出ちゃうから、おばちゃんの席でゆっくり作ってね」
室長さんはそういって、部屋に残っていた学芸員達と唖然とした私を残し部屋を出て行ってしまい、ドアが閉まる音で私は我を取り戻した。ともかく案内文を作らないと。時計を見ると8時45分、チラシを見ると第一回上映は9時30分。残り時間は45分。でも列を整理して案内もしないといけないからそれよりも早く…、あ、開館時間時間は9時じゃない!残り時間は殆ど無いじゃない。急がないと!
ともかく、私は間に合わせる為 ポケットメモに要点を纏めてあとは頭の中で再構築。現場で最適な言葉を作る事にして12分で終わらせ、展示場まで2分で向かって何とか開館前に到着。シアター360はその大きさから、増築した所に作られていて、ドームの入り口の前に建物の入り口がある、そこには、もう一人の係り、順路案内の娘がいてその娘から連絡用の無線機を受け取とった。どうやら、建物の入り口は20分までは開かない。それをを聞いて私は持ち場である、ドームの入り口前で、ドーム内の係りの娘とさっきのメモの詰めにかかった。
「コラフェイスさん。扉開けます」
「はい、了解しました」
扉が開き待ちかねたように人が流れ込んで来ると思ったら、5、6人がチラホラとゆっくり入ってきた。ヤッパリお休みの日はゆっくり寝ている人が多いのかしら?ちょっと拍子抜けした感じだけど、お仕事お仕事。ちなみに私は列整理が得意で、良く特設展の列整理をやらされる。まぁ、キライじゃないから良いけど。
列を2列に整列させて落ち着いた所で、タイムキーパー役も兼ねている順路案内の娘から開始5分前の連絡が入ってついに私の出番。落ち着いて、深呼吸。
「本日は、ベルギー国立博物館にご来館いただき真にありがとうございます。あと5分程で上映が始まりますが、皆様にはこの「シアター360」についてのご、ご案内をさせていただきます、え~、まず・・・」
私の説明が終わり、ドームへ全員が入場して、入り口の扉が閉まる。結局、私の案内は、カミカミのガチガチ。
「あーもう、何やってるんだろう、私。セリフカミカミだし、メモをみながらだし、ガチガチだったし・・・キャッ!」
そういって、しゃがみ見込んで自分の不甲斐なさに嘆いていると、フニっと、しっぽを触られ、顔を上げてしっぽの方を見てみると、科学の室長さんがしゃがみこんでいる私の横にしゃがみ、しっぽをフニフニして優しい顔で、でもいつもとチョット違った表情で
「リリアちゃん。巧くいかなかったんでしょ?」
また顔を伏せていた私は無言で、頷いた。
「そうよ、リリアちゃん解説しようとしかしていなかったもの」
「え?でも解説するのが・・・」
「ううん、違うの。確かに解説するのが今日のリリアちゃんのお仕事よ。確かに注意事項とかの部分はきちんと出来てたわよ。でもね、ただ説明するだけじゃないでしょ?いつもリリアちゃんは古代歴史美術品の説明をする時はどうしてるの?見ている人に解ってもらおうとして、興味を持って欲しいって思ってるんじゃなぁい?」
「はい・・・」
「そうでしょ?だから私はリリアちゃんに、台本じゃなくって、チラシを渡したの。それに、コレットちゃんの台本もあの娘が自分で書いたのよ、だた、実際の映像を見てからだけどね。そうだ、次の回、一緒に見ましょうよ、そうすればリリアちゃんも来館してくれた方々にも案内できるでしょ?ほら、立って」
室長さんはそう言って、しっぽをフニフニしていた手を、私の手に差し伸べてくれた。
二回目の解説と案内も一回目と同じでカミカミだったけど、チョットは気が楽になったせいか、そんなに気にならなかった。それから、ドームの案内の娘と案内終了後入れ替わって貰い私は、室長さんと並んでドームに入った。そこには、チラシの文章じゃ表現出来ない綺麗な、そして興味深い映像が流れ出した、高高度から、雲を抜け渡り鳥に群れを横に海に潜り、熱帯の極彩色の魚に上を見れば海面からゆらゆらと差し込む光、さらに深海に潜って、マリンスノーが星に変わって、最後に青い惑星が暗い宇宙に浮かぶ。私は今は古代歴史美術を専攻しているけど、小さい時は星も好きだったし、綺麗なさんご礁の海にあこがれてもいた。そして、この作品の素晴らしさを多くの人に解って貰いたいとも思った。ドームに映し出された青い惑星は徐々に暗くフェードアウトし映像が終了した。ドアの横にいた室長さんがドアを開け、ドームの外にお客さんを誘導していく。全てのお客さんが出て行って中には私と室長さんだけになった。
「次からは巧く案内出来るような気がします」
「大丈夫よ、リリアちゃんなら」
そう言って私の耳をフニっとしてから室長さんはこの部屋から出て行った。それから私は、代わってもらっていたドーム案内役の娘にお礼を言って、自分の持ち場であるドームの入り口に戻り、入り口を閉めた。そして、しばらくすると、人が集まりだし、私は列整理を始め、順路案内の娘から5分前の合図がはいった。私はこのシアター360に関してのメモをポケットに入れたまま説明を始めた
「本日はベルギー国立博物館にご来館いただき真にありがとうございます。これからシアター360と上映内容についてご案内します。」
†
「お疲れ様でした~」
今日の勤務時間が終わり、私は職員通路から外に出た。外はもうすっかり暗くなって、空には星が輝いている。しかし、こんな街中じゃ満天の星は見えないけど、私は知っている星座を探そうとしばらく空を見上げていたら
「きゃっ!な、何しっぽフニフニしてるんですか?」
「う~ん、なんかねリリアちゃんのしっぽ見てたらフニフニしたくなっちゃってね」
「フニフニしたくって・・・もうやられる身にもなってくださいよ」
私はしっぽを自分で抱えながら抗議したけどこの人は止める気はないんだろうなぁ・・・。
「今日はご苦労様ね。おばちゃんホント、助かっちゃった。またこんな事があったら、お願いね」
「いえ、もう頼まないでください。ただでさえなれない事は疲れますから」
「ホントに?」
室長さんは私の目を見つめながら聞いてくる。
「まぁ、どうしてもって言うのでしたら…」
「それじゃぁ、その時はお願いね?」
「ええ、その時がくれば。ですが」
「何はともあれ、今日は、リリアちゃんとっても頑張ってくれたし、感謝の意味もこめて、晩御飯ご馳走しちゃうから。そうそう、お友達も呼んでおいたからホラ」
そうして室長さんは博物館の正面玄関の方を指差した。そこには、私の友人でもあり、今日この出来事を起こした張本人がいた。
「コレットちゃん。午後にはお熱とセキがすっかり引いて、お医者様からももう大丈夫って許可が下りたから、呼んじゃった。・・・って、あらあら」
私は、正面玄関で可愛く手をこちらに振っている友人に向かい、室長さんの言葉が終わらないうちに駆け出していた。今日、私を大変な目に合わせてくれた不満と、今日の出来事を報告する為に。
Fin
※この物語はフィクションです。実在する人物、団体、施設等は一切関係有りません。