この梅雨時期では「星」を見ることもままなりませんね。そんなワケで「久喜天文自然クラブ」でも「梅雨」だからできる事として、「光学」の話をする事に。講師は「久喜」での天体観望会でもお手伝いをしてくださっており、この「こなここブログ」でも何度かコメントをいただいている「よしの」さんがしてくださいました。
さて、「光学」ですが「望遠鏡」を扱うに必要な知識であり、どうして「望遠鏡」は「遠くのものが見えるのか」、どうして接眼レンズを換えると倍率が変化するのかを知るに必要な学問なのです。
まず、「光学」を学ぶに当たって、「光の気持ちになって考えよう」という事で「物理の根本原理」である、「物は無駄な動きをしなく、動かされない限り動かない。「慣性の法則」があり、動かされたときは「一番短い距離で済む道を通って動く」、「最小時間の原理」に基づき、動くとしても「物が右から左へ動くときある道を通るなら、左から右へ動くときはやはり同じ道を通る」。わざわざ別の知らない道は通らない。この事は「可逆性の原理」と言い、これらは全て物理の根本的な事であり、全ての物質の動きに当てはまるのです。つまり「光」も例外ではないのです。
コレを簡単に言えば「全ての物質はめんどくさがりで寂しがりや」であるのです。なので「光」は「光源」から最短のルート、つまり「直線」を進むのです。光源を発した光があちこちに曲がったりはしませんものね。ただ「空気中」では「曲がったり」する事がありますが、これも「最小時間の原理」に沿っているのです。「光線」は「マクロの世界」でみれば「光子」と呼ばれる「粒」の集まりで「光子」は、「隣の光子」たちとは付かず離れず、足並みをそろえて一緒に進もうとします。しかし、何か「障害」があると心ならずとも「足並みが乱れて」しまうのです。つまり、空気中では「水蒸気」や「ゴミ」や「チリ」によって真っ直ぐ進もうとしている「光子」が「抵抗」を受けるのですが、それでも「最小の時間」でそこをすり抜けようとします。この事を「光の屈折」、「屈折の法則」なのです。
「光」の「抵抗」を受ける割合が「屈折率」で、「屈折率2」というのは「光の速さを1/2」にするという意味なのです。ちなみに「空気」は「屈折率1」であり、「水」は抵抗があり「1.33」。「ガラス」はさらに「抵抗」を受け「1.3~2」の屈折率となり、「ダイヤモンド」となると「2.4」とかなりの抵抗を受ける事になります。ちなみに「真空中の光の速さ」は「秒速29万9792.458km」コレを「c」と表し、「水中」での「光の速さ」は「c/1.33=約22万5564km/s」になります。
「光」の進む先に「鏡」があると光は「反射」します。「反射」とは「光の進む向きがその表面で変わる」事を意味します。この時にも「最小時間の原理」は当てはまり、「光は常に最短距離」を進もうとしますから、「鏡」によって「反射」しても「向き」は変わりますが「鏡が無い」ものとした時の「最短距離」、つまり「直線」と同じ距離を進もうとします。なので、いくら鏡で反射させても光の進む距離は「c」なのです。
「反射」にも「法則」があり「鏡を挟んで合同な三角形」ができる。三角形の合同関係と、対頂角等しい事により、光の入射角と反射角は等しくなる。従って「反射の法則:入射角=反射角」となります。コレは「曲がった鏡」でも成り立ち、光子一つ一つが「反射の法則」に従い鏡の各面で成り立つ。なので「半球状」の鏡を使えば、「遠くから来る光の向きをことごとく変え、「半球の中心」あたりに「反射光」を「集める」事ができる。この仕組みを使えば「反射望遠鏡」を作る事ができるのです。
「光」を「曲面」を持った鏡でうまく集めるにはどうすれば良いのでしょう。
「球面の一部」を切り取ってできた鏡、「球面鏡」を使い、「球面の中心に光源がある場合、光線は常に鏡面に垂直(入射角=反射角=0)ですので「球面鏡」によって「反射した光」は「球面の中心」である「光源」に戻りますね。しかし、「光源」が「球面の中心」から「離れる」と「光線」と「鏡」は「垂直」ではなくなりますので「反射光」は「球面の中心付近」でバラけてしまい、この「バラけ具合」を「球面収差」と呼びます。「球面収差」がある状態を「眼で見る」と像がボケて見えるのです。
一方、「放物面の鏡」では「光源が近く」だと「反射光は1点」に集まりませんが、無限遠にある光源、「平行光線」が入射すると「反射光」は「光軸上のある1点」に「集中」するようになるのです。そういう面を「放物面」だと言う事もできるのです。なので「反射望遠鏡」で使用する鏡は「放物面鏡」を使う事が望ましいのです。
ここで少し考えてみましょう。「球面鏡」の「球心」に「光源」を置いて、その「球心」のすぐ隣から、光源その物に覆いを被せて「鏡に反射した光」を見るとどうなるでしょうか?当然光が集中しているのでいるので眩しいですね。そこに「スリット」で減光した「反射光」を見ると…「光源」から出た光がムラ無く「球面鏡」で反射し「ムラ無く球心に戻る」ので、「均等な明るさ」で「鏡が光っている」ように見えるはずです。逆にこの方法で「反射光」にムラがあればその「鏡」は「球面鏡」ではないとも言えますね?
この仕組みを利用して「楕円面」、「放物面」の場合などの「明るさのムラのでき方をあらかじめ知っていれば、どの程度「放物面」に鏡が近づいているか?を確かめる事ができる事を発見したのが、「19世紀」の「物理学者」であり「望遠鏡職人」であった「ジャン・ベルナール・レオン・フーコー」。そうあの「地球の自転」を証明した「実験装置」である「フーコーの振り子」を発明した、その人なのです。また、「回転している銅版」に「磁石」を近づけると「誘導起電力」による「渦電流」を発見。こちらは「フーコー電流」を呼ばれていますね。ちなみにこの「放物面鏡」を「光の反射」によって調べるのは「フーコーテスト」と呼ばれています。
そんなワケで実験開始です。
まず、用意するものとして「光源」、「凹面鏡」。これらを固定する「三脚」などの台。それと「スリット」として「名刺」や「クレジットカード」などの「光を通さない板」が必要になります。今回の実験では「直径100mm」の「反射望遠鏡」の「凹面鏡」のみがあったのでそれを利用しましたが、実際に「凹面鏡」だけなんて無いんですよね。当初は「反射望遠鏡」を「そのまま」使おうとしたのですが、当然「焦点」には「接眼部」への「斜鏡」があるので、できませんでした…。そして「光源」ですが、LEDや蛍光灯、白熱灯などを試しましたが、最終的に「豆電球」式の懐中電灯。コレは「電球」だけにした状態でさらに「光源」に覆いをつけ「鏡」に向かう部分に「小さな穴」、「ピンホール」を空けて使います。これらはテープなどで「三脚」に固定。「凹面鏡」は「位置」を調節できるように「雲台」に固定しておくと調整が簡単です。それでは、「設置」する位置ですが、「放物面」の「準球心」の位置は「放物面の焦点位置の2倍」なので「焦点距離1000mm」の反射望遠鏡なら球心の位置は「主鏡」から「焦点距離の倍」である「2000mm」離れた位置になります。「光源」の位置も「焦点」と等しくなり、見る位置も「光源の隣」となるのです。今回は楽にそして見やすいように「顔」が固定できるよう「椅子」を置いておきました。
実際にどう見えるか、「放物面鏡」はその形から「外側」と「内側」では反射する距離が違うため「外周部」を通る光は「鏡」から遠くで焦点を結び、「内部」を通る光は鏡に少し近くで焦点を結びます。なので「カード」で「片側スリット」を、「眼の近くでカードを使い光を半分ほどさえぎった」場所が「内部」が焦点を結ぶ位置では「外周部」を通る光が密なため明るく、「内部」を通る光は焦点を結んでいるので、ここで光線をさえぎると「外周部」でははっきり明暗が出て、内部が薄暗いんpが合わさった影になります。逆に「外周部」が「焦点」では「外周部」を通ってきた光が焦点を結び、「内部」を通ってきた光はまだ密で明るく、ここで光を遮ると「外周部」は薄暗く、内部は明暗がはっきりでるのが合わさった影ができます。これらの中間では「外周部」を通る光が密なため「外周」が明るく、また「内部」を通る光も密になっているので「明るい」。従ってここで光線を遮ると外周、内部とも明暗がハッキリ出るのです。つまり「外周部」と「内部」で明暗が「反転」した影となり、試験は一般的にここで行います。
調整する目安「球面鏡」の場合を簡単に説明すると「遮った」のと「同じ方向」から「暗く」なれば、「カードは球心より主鏡で近い側」であり、遮ったのと「反対側」から「暗く」なれば「カードは球心より主鏡に「遠い」側となり、どちらともいえず薄暗くなればそこが「球心」となります。
実際に見てみますと「鏡面」全体が「明るく反射」して見え、そこを「カード」で少しづつ光を遮っていくと、「中心」が「凹む」ように見える地点があるのです。そんなにハッキリとしている訳ではないのですが、何度か試してみると解ります。
ただ、この「フーコーテスト」さすが光を集めた「焦点」で見るので「豆電球」で「ピンホール」に通した光でさえも相当眩しく「眼が焼け」ます。実際に「フーコー」は「ロウソク」の炎で行ったそうですが、確かに「1cd」の光で十分ですよ。
実際に実験方法や見え方を知っていても、自身が体験するとこの凄さが解りますよ。
現在でも「フーコーテスト」を使用して「凹面鏡」の研磨目安にはなるようですが、あまり「厳密な精度」では測定できませんが。それでも「すばる望遠鏡」の「主鏡」を研磨した「最初の試験」では「フーコーテスト」を応用した「ナイフシフト法」で試験をしたようです。まぁ「フーコーテスト」で通らなければその先のテストも通るワケはありませんからね。
と、まぁ、とても普段はできないような面白い実験と光学に対しての基礎知識は学べました。ただ今回は「反射望遠鏡」でしたが「レンズ」の「色収差」の原理を学ぶ「屈折望遠鏡」版もあるようです。
ちなみに「フーコーテスト」ですがなぜか「キャノン」の子供向けサイトでその原理が簡単に動画付きで紹介されていたりします。URLはこちら
http://web.canon.jp/technology/kids/mystery/m_02_06.html
それでは、本日の登場人物は「天文自然クラブ」が関連している話でしたので、この方。「非公認」の「久喜天体自然クラブ」のパッチに登場しているキャラクターである「天体」が好きで「宇宙」に憧れる「桜宮 ツアイシア」さん、通称「シア」さんです。「反射望遠鏡」の仕組みとして「凹面鏡」に関しての講義を受けた「シア」さん。その実験として「フーコーテスト」を実験です。ちなみに背景が「久喜天文自然クラブ」での実験の時に使った設備です。