11月24日(日)
「笛を吹く飛天」。
おなじみの国宝、薬師寺東塔。その九輪の塔の上の透かし彫りの水煙の中に、なんともロマンチックな、天上に笛の音を奏でる飛天があるということは以前から知っていたのですが、何年か前に訪れた時、いくら眼を凝らしても、地上からその姿を確認することはできませんでした。
「あの塔の上に、天上の音楽が流れているのだ」と想像し、古代の空気を味わうことができれば十分なのかもしれませんが、その飛天が地上に舞い降りたと聞けば、やはり目に焼きつけておきたいと思ってしまいます。
すっかり晩秋の気配の中、急に気圧配置が冬型になり、北西の風が冷たく吹き抜ける日、車を大和盆地へ走らせ、薬師寺のある西ノ京に。
突然の時雨もようの中、中門の左に
30年前に再建された西塔
右側にある国宝の東塔、
実は、解体修理中なのです
薬師三尊像を
拝観して
金堂の後ろの大講堂。10年前に復興された
薬師寺最大の伽藍です
大講堂の東側に、地上に降ろされた
飛天が安置されています
東塔の解体修理にともなって、その姿が目の前で見られるのです。題して「東塔水煙降臨展」
直径1mほどある九つの相輪が展示され、
その向こうに水煙が
1300年の風雪の中、表面は緑青で覆われ、
見えにくいのですが
上に、逆さまに下降する飛天が二体、そして下に、「笛吹童子」とも言われているとおり、童顔の少年が、雲の上でゆったりと宙に舞い、横笛を口にして、天上の音楽を奏でています。この笛の調べが1300年もの簡、天空に流れていたのでしょう。
天平の空より流るや時雨雲 弁人
東塔の水煙に三体の飛天が浮かんでいるということは、昭和に復元された西塔の水煙にも同じ透かし彫りがあるにちがいないと、雨上がりに、もう一度西塔を眺めましたが、
やはり、肉眼では
確認できませんでした
さて、この日の目的は果たしましたが、薬師寺に来れば、歩いて5~6分の鑑真和尚の唐招提寺を素通りとはいきません。
これぞ、
「天平の甍」
前回、西ノ京に来たのは2007年の秋でしたが、その時は、あいにく金堂の修理中で、伽藍の姿を見ることができませんでした。それ以来、少々心に引っかかっていたので、少しすっきりした気分です。
そういえば、唐招提寺には高い仏塔がありません。そんなわけでもないのですが、二年前に斑鳩へ行った時、法隆寺には行かなかったことを思い出して、
どっしりと落ち着いた
法隆寺の五重の塔
百済観音をお参りした後、
夢殿へ
斑鳩の仏しづかに冬初め 弁人
法隆寺は、大学生の時以来二度目です。あの時は真夏の炎天下で、拝観受付窓口のお坊さんから「よく来られましたね、今36度ですよ」と声をかけられたのを覚えています。
そう、帰りにバス停の前の食堂に入って、かき氷で涼をとっていると、お店のテレビに、雫石上空で全日空機と自衛隊機が衝突したという衝撃的なニュースが流れていたのも忘れられません。ネットで調べると、1971年7月30日とのことでした。大学4年生の年です。奈良県の教員採用試験を受けましたので、たぶんその時だったのかもしれません。
中宮寺は初めてです。
「菩薩半跏像」を拝観
子どもの頃から、「弥勒菩薩」として教科書などでよく目にして来た仏様。中宮寺では「如意輪観世音菩薩」となっていました。京都の広隆寺の「弥勒菩薩」もまだ拝観していないのですが、今では両方とも「菩薩半跏像」と言うのが正式のようです。
それはともかく、足の位置といい、手の置き方と曲げ方といい、指先のほのかに頬に触れる様子といい、気品あふれる法隆寺の百済観音にも参りましたが、それにもまして、全て完璧な優美さにすっかり圧倒されてしまいました。
冬めきて漆黒の弥勒微笑みぬ 弁人
「笛を吹く飛天」。
おなじみの国宝、薬師寺東塔。その九輪の塔の上の透かし彫りの水煙の中に、なんともロマンチックな、天上に笛の音を奏でる飛天があるということは以前から知っていたのですが、何年か前に訪れた時、いくら眼を凝らしても、地上からその姿を確認することはできませんでした。
「あの塔の上に、天上の音楽が流れているのだ」と想像し、古代の空気を味わうことができれば十分なのかもしれませんが、その飛天が地上に舞い降りたと聞けば、やはり目に焼きつけておきたいと思ってしまいます。
すっかり晩秋の気配の中、急に気圧配置が冬型になり、北西の風が冷たく吹き抜ける日、車を大和盆地へ走らせ、薬師寺のある西ノ京に。
突然の時雨もようの中、中門の左に
30年前に再建された西塔
右側にある国宝の東塔、
実は、解体修理中なのです
薬師三尊像を
拝観して
金堂の後ろの大講堂。10年前に復興された
薬師寺最大の伽藍です
大講堂の東側に、地上に降ろされた
飛天が安置されています
東塔の解体修理にともなって、その姿が目の前で見られるのです。題して「東塔水煙降臨展」
直径1mほどある九つの相輪が展示され、
その向こうに水煙が
1300年の風雪の中、表面は緑青で覆われ、
見えにくいのですが
上に、逆さまに下降する飛天が二体、そして下に、「笛吹童子」とも言われているとおり、童顔の少年が、雲の上でゆったりと宙に舞い、横笛を口にして、天上の音楽を奏でています。この笛の調べが1300年もの簡、天空に流れていたのでしょう。
天平の空より流るや時雨雲 弁人
東塔の水煙に三体の飛天が浮かんでいるということは、昭和に復元された西塔の水煙にも同じ透かし彫りがあるにちがいないと、雨上がりに、もう一度西塔を眺めましたが、
やはり、肉眼では
確認できませんでした
さて、この日の目的は果たしましたが、薬師寺に来れば、歩いて5~6分の鑑真和尚の唐招提寺を素通りとはいきません。
これぞ、
「天平の甍」
前回、西ノ京に来たのは2007年の秋でしたが、その時は、あいにく金堂の修理中で、伽藍の姿を見ることができませんでした。それ以来、少々心に引っかかっていたので、少しすっきりした気分です。
そういえば、唐招提寺には高い仏塔がありません。そんなわけでもないのですが、二年前に斑鳩へ行った時、法隆寺には行かなかったことを思い出して、
どっしりと落ち着いた
法隆寺の五重の塔
百済観音をお参りした後、
夢殿へ
斑鳩の仏しづかに冬初め 弁人
法隆寺は、大学生の時以来二度目です。あの時は真夏の炎天下で、拝観受付窓口のお坊さんから「よく来られましたね、今36度ですよ」と声をかけられたのを覚えています。
そう、帰りにバス停の前の食堂に入って、かき氷で涼をとっていると、お店のテレビに、雫石上空で全日空機と自衛隊機が衝突したという衝撃的なニュースが流れていたのも忘れられません。ネットで調べると、1971年7月30日とのことでした。大学4年生の年です。奈良県の教員採用試験を受けましたので、たぶんその時だったのかもしれません。
中宮寺は初めてです。
「菩薩半跏像」を拝観
子どもの頃から、「弥勒菩薩」として教科書などでよく目にして来た仏様。中宮寺では「如意輪観世音菩薩」となっていました。京都の広隆寺の「弥勒菩薩」もまだ拝観していないのですが、今では両方とも「菩薩半跏像」と言うのが正式のようです。
それはともかく、足の位置といい、手の置き方と曲げ方といい、指先のほのかに頬に触れる様子といい、気品あふれる法隆寺の百済観音にも参りましたが、それにもまして、全て完璧な優美さにすっかり圧倒されてしまいました。
冬めきて漆黒の弥勒微笑みぬ 弁人