『童貞王』 カチュール・マンデス 国書刊行会
すごいタイトルである。
同社の本の巻末の広告で、ルートヴィヒ2世やワグナーをモデルとしたキャラが出てくるというこれを知った。
プロイセンが力を伸ばしているご時世、「チューリンゲン」国の若い王フリードリヒ2世は、美貌の女王に憧れている。
一方、その女王の側近である貴婦人は、ある歌姫が女王によく似ているので、その女を仲介することを王の使者にもちかける。
歌姫、元娼婦のマグダレーナは王に引き合わせられるがーー
たいへん大胆な展開と結末。オーバーアマガウの受難劇は名高いが、こういうふうに話に取り入れられるとは驚いた。
「チューリンゲン」国はもちろんバイエルンを指しているけど、実際のチューリンゲンにはヴァルトブルク」があって「タンホイザー」の舞台でもあるから、まったく無縁というわけでもない。
解説では、「狂王」の名前は「ルートヴィヒ・フリードリヒ・ヴィルヘルム」なのでこの話で「フリードリヒ」はおかしくないと解釈しているけど、「大王」も男色という共通点はある。(『ヴェニスに死す』のアッシェンバハの代表作がフリードリヒをテーマにしているのも意味深長)
「フリードリヒ」の祖父は踊り子にいれあげて退位するはめになったというのはもちろんローラ・モンテスを指している。小説でのマグダレーナはその再来を狙わせられるというわけである。解説で、王が思慕する女王のモデルであるシシィと、その女王と似ているという設定の歌姫が狙う役割のローラ・モンテスとが、そういえば似ていないか?と書かれているがーーー似てないってば!
この小説、1881年に出ているというのがすごい。ルートヴィヒ2世の死は1886年、それより早い。バイエルンで発禁になったというのも無理あるまい。
この小説が、パリでのワグナー人気につながっていったそうだ。数年後に出たやはりフランスの小説『神々の黄昏』も影響が大きいという。たぶんその小説は読んだと思う、30年以上まえに。ヴィスコンティの映画等、どうも「神々の黄昏」という名称は往々にして、神話本来のラグナロクと違って、けだるい、もっと言えば軟弱なイメージで使われることは歯がゆくもある。
『二度生きたランベルト』 ジャンニ・ロダーリ
イタリア文学の棚で目についた。
コモ湖畔で暮らす老男爵ランベルト。世界旅行の途上、賢者から、名前が呼ばれ続ける限り死なないと告げられて、人を新たに雇って交代で「ランベルト、ランベルト」と絶えずアナウンスさせる。そのせいか、ランベルトは若返り始める。そこへ強盗団が屋敷を占拠してーー。
愉快な物語であった。
来月出る文庫本で、図書館待ちは光文社新訳文庫の数冊、岩波の『失われた時を求めて』10巻。
本屋で手にしてぱらぱらでいいかというのは『眠れないほど面白くて怖い世界史』(王様文庫)。
買おうと思っているのは
『サザエさんからいじわるばあさんへ 女・子どもの生活史』樋口恵子 朝日文庫
『オーディンの末裔』 ハラルド・ギルバース 集英社文庫
ここでも言及した『ゲルマニア』の続きであろう。
これらのほかに、翻訳ミステリーで気になるのがけっこうある。
頭休めが欲しかったらツチケンの『無理難題が多すぎる』を買うかもしれない。
すごいタイトルである。
同社の本の巻末の広告で、ルートヴィヒ2世やワグナーをモデルとしたキャラが出てくるというこれを知った。
プロイセンが力を伸ばしているご時世、「チューリンゲン」国の若い王フリードリヒ2世は、美貌の女王に憧れている。
一方、その女王の側近である貴婦人は、ある歌姫が女王によく似ているので、その女を仲介することを王の使者にもちかける。
歌姫、元娼婦のマグダレーナは王に引き合わせられるがーー
たいへん大胆な展開と結末。オーバーアマガウの受難劇は名高いが、こういうふうに話に取り入れられるとは驚いた。
「チューリンゲン」国はもちろんバイエルンを指しているけど、実際のチューリンゲンにはヴァルトブルク」があって「タンホイザー」の舞台でもあるから、まったく無縁というわけでもない。
解説では、「狂王」の名前は「ルートヴィヒ・フリードリヒ・ヴィルヘルム」なのでこの話で「フリードリヒ」はおかしくないと解釈しているけど、「大王」も男色という共通点はある。(『ヴェニスに死す』のアッシェンバハの代表作がフリードリヒをテーマにしているのも意味深長)
「フリードリヒ」の祖父は踊り子にいれあげて退位するはめになったというのはもちろんローラ・モンテスを指している。小説でのマグダレーナはその再来を狙わせられるというわけである。解説で、王が思慕する女王のモデルであるシシィと、その女王と似ているという設定の歌姫が狙う役割のローラ・モンテスとが、そういえば似ていないか?と書かれているがーーー似てないってば!
この小説、1881年に出ているというのがすごい。ルートヴィヒ2世の死は1886年、それより早い。バイエルンで発禁になったというのも無理あるまい。
この小説が、パリでのワグナー人気につながっていったそうだ。数年後に出たやはりフランスの小説『神々の黄昏』も影響が大きいという。たぶんその小説は読んだと思う、30年以上まえに。ヴィスコンティの映画等、どうも「神々の黄昏」という名称は往々にして、神話本来のラグナロクと違って、けだるい、もっと言えば軟弱なイメージで使われることは歯がゆくもある。
『二度生きたランベルト』 ジャンニ・ロダーリ
イタリア文学の棚で目についた。
コモ湖畔で暮らす老男爵ランベルト。世界旅行の途上、賢者から、名前が呼ばれ続ける限り死なないと告げられて、人を新たに雇って交代で「ランベルト、ランベルト」と絶えずアナウンスさせる。そのせいか、ランベルトは若返り始める。そこへ強盗団が屋敷を占拠してーー。
愉快な物語であった。
来月出る文庫本で、図書館待ちは光文社新訳文庫の数冊、岩波の『失われた時を求めて』10巻。
本屋で手にしてぱらぱらでいいかというのは『眠れないほど面白くて怖い世界史』(王様文庫)。
買おうと思っているのは
『サザエさんからいじわるばあさんへ 女・子どもの生活史』樋口恵子 朝日文庫
『オーディンの末裔』 ハラルド・ギルバース 集英社文庫
ここでも言及した『ゲルマニア』の続きであろう。
これらのほかに、翻訳ミステリーで気になるのがけっこうある。
頭休めが欲しかったらツチケンの『無理難題が多すぎる』を買うかもしれない。