レーヌスのさざめき

レーヌスとはライン河のラテン名。ドイツ文化とローマ史の好きな筆者が、マンガや歴史や読書などシュミ語りします。

暗夜行路、細雪、嵐が丘

2009-08-28 16:01:00 | 
 清水義範『独断流「読書」必勝法』で取り上げた本を、再読も含めてわりに読んでみた。

 『暗夜行路』
 再読。こんなタイトルのわりに根が楽天的だという印象を持った。だいたい、出生の秘密なんてあったって、こいつ生活の苦労なんてぜんぜんしてないもんね、単に、売れもしない小説書いてるだけだし、教養のために旅行だって平気でできるし。
 ところで、ふつうこの話の内容は、「母と祖父の不義の子である時任健作が結婚後妻の過失に苦しむ」と説明される。私はこの、「妻の過失」という言葉にひっかかっていた。妻は被害者だろう!と。再読したのはそこの確認も目的の一つだった。で、その結果、・・・直子に隙は確かにあった、しかし悪いのが男であることには変わりない、もっとも、暴行されたとかなんとか書くのは抵抗を感じるので、「過失」程度にしておくのが無難なのかいなぁ・・・。「不貞」だったら明らかに不当だ!と怒るけど。

『細雪』、
ほかの古典で連想したのはJ.オースティン。ハイソな人々の結婚をめぐる浮き沈みという点で。蒔岡のほうが「非常時」のくせにゼイタクさが目立つけど。

『嵐が丘』
 これを読むのは3度目くらいか。最初は、高校1年のとき、「ララ」で伊藤愛子がマンガ化したのがきっかけだった(ヒースクリフが家出したところで中断した)。
 だれだったかこの小説を論じた作家が、映画化ではキャシーが善人になってしまっている、彼女が死ぬのは「怒り」のせいなのに、と主張していた。確かに、キャシーがエドガーと結婚した動機は不純だ。お嬢様の身分にある人が、下僕ではなくて釣り合った相手を選ぶこと自体は非難できないと思うけど、それによってヒースクリフの立場を引き上げたいということまではまだ認めるとしても、もどってきた彼と夫が仲良くしてくれることを望むのはあまりにも非常識ではなかろうか~~。・・・・・・だからこそキャシーなんだけど。あっけにとられるほどのエゴイストぶり。
 唐突ながら、私はシシィを連想した。ワガママものという点で。夫とはやはり異った人種であったという点で。いや、シシィとフランツ・ヨーゼフの間に愛はあったと思うけど。でも魂の同類ではありえなかったろう。
コメント
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