レーヌスのさざめき

レーヌスとはライン河のラテン名。ドイツ文化とローマ史の好きな筆者が、マンガや歴史や読書などシュミ語りします。

エノーラ・ホームズ

2017-04-20 09:39:01 | 
ナンシー・スプリンガー『エノーラ・ホームズの事件簿』

 私は二次創作というものが好きであり、ホームズ・パスティーシュにも関心があるので以下の本を入手した。
「シャーロック・ホームズ・イレギュラーズ 未公表事件カタログ」

「ジュブナイル」に分類されている『エノーラ・ホームズ』を知った。
「エノーラ・ホームズの事件簿」
 ホームズの身内に関しては兄マイクロフト以外は判明していないが、この作品では、母が高齢出産した年の離れた妹を設定している。エノーラの14才の誕生日に母ユードリアが姿を消す。急ぎ戻ってきた兄たちは、使用人のほとんどいない屋敷、レディ教育をまるで受けていない妹の状態に驚愕する。ユードリアは婦人参政権論者の変わり者(当時としては)で、その点保守的な息子たちとはそりが合わなかった。夫の死後領地の管理をしていた。家庭教師の費用、馬車の費用等々、マイクロフトから金を送らせていたが、それらを着服ーーしかしエノーラの考えでは、領地管理をしていたのは母なので母にも受け取る権利はあるーーしていたことになる。ともかくマイクロフトはエノーラを寄宿学校へやろうとするが、閉じ込められることを拒否するエノーラも家出してロンドンに行く。母は暗号が得意で、それによってエノーラの資金も用意してあった。兄たちの追跡をかわしながら、「人探し屋」を始めるのだった。
 「ルルル文庫」という少女向けのレーベルながら、ロンドンの繁栄の影の貧困とか、女性たちの不自由さとか、ある意味では原作よりもシビアな要素がある。ファッションの描写に気を配っているあたりは少女マンガっぽくもある。
 2007~09に5巻まで出た。そのあとがきに、6巻で終わりでもう原書原稿は手元にあると書いてあるーーのに、その6巻は邦訳が出なかった模様。訳書が少し出ただけならまだしも、あと1冊なのに途絶えたというのは悔しさが増す。いまからでもなんとかならないものだろうか。
 直接に登場していない母の行方は不明なままだし、21歳の成人まで14才の少女が切れ者の兄たちをまききれるのも無理があるし、なにか譲歩し合うことが必然だろうけど、どういうふうに結末をつけたのだろうかと気になる。

 それにしても、ライトノベルも私は視野にある程度入れているし、小学館ならば目に入りやすいし、ホームズものとなると注目していてよさそうなのに、私がこれの存在を知らなかったのは我ながら不可解である。


北原尚彦『ホームズ連盟の事件簿』『ホームズ連盟の冒険』『シャーロック・ホームズの蒐集』
 これらはふつうにまだたぶん買えるくらいの本。前者二つは脇役たちのスピンオフ。『蒐集』は「語られざる事件」(原作中に○○の事件と名前だけ挙がっていて作品にはなっていないもの)を扱った正統派。
 ワトスンがホームズに誘われて出ている間に、妻メアリを昔の雇い主が訪ねてきて心配事をうちあける、それでメアリが探りに行って・・・という話で、「タイビリウス屋敷」という名前に「ティベリウス」?と思ったらやはりそうだった。
コメント (2)
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