レーヌスのさざめき

レーヌスとはライン河のラテン名。ドイツ文化とローマ史の好きな筆者が、マンガや歴史や読書などシュミ語りします。

駄作 仔羊の頭 アイム・トラベリング~ ホームズの気晴らし

2017-04-13 09:51:39 | 
ジェシー・ケラーマン『駄作』  2014ハヤカワ文庫
 アメリカ産ミステリー。借りた本の巻末の広告で面白そうだと思ったので。
 アーサーは、過去に1冊の小説を出したきり売れず、大学で創作科の講師をしている。長年の親友ビルは売れっ子作家で、密かに嫉妬を感じている。そのビルが事故死した。アーサーは、ビルの未完の遺作を、結末を書き足して自分の名前で発表して大ヒットするが、意外な方向へと引きずりこまれていく。
 実は~~だった!が二転三転して、こっちももうなにが正しいのかわからんようになってくる。
「本書には奇想天外な展開があることを警告しておきます」と裏表紙にわざわざ書いてあるが、・・・確かに奇天烈である。怒りやしないけど。でも二人の作家の間にある屈折した友情は読みどころ。


フランシスコ・アヤラ『仔羊の頭』 現代企画室 2011年
 現代スペインの作家(ただしすでに故人)。内戦後にアルゼンチンにまず亡命し、その後あちこちへ居を移したあと帰国した人物。
 内戦に絡んだ短編集、とはいえ直接に戦争が出てくるいうわけではあまりなく、それを痛手としてひきずっている人々の鬱屈が描かれる。最も印象に残ったのは『帰還』、亡命していた主人公が叔母に手紙で頼まれて帰国する。自分の逃亡のあとで友人が裏切っていたことを知り、再会を恐れながら町をさまよい、そして裏切りの原因を考えてみる。悩みや怒りや恐れの入り混じった心理の変化が面白かった。
 ところでこの本、私の個人的な「スペインイヤー」のころに岩波文庫で出た『スペイン文学案内』に載っていたリストで存在は知っていたが、市内の図書館になく、市外・県内に広げてもなかった。ところが、私のメモした『子羊の頭』が誤りで、『仔羊の頭』が正しいということを発見、それで検索したらなんと県内どころか市内にある本だと判明した。なんて融通のきかない機能だろう。


サムエル・ビョルク『オスロ警察殺人捜査課特別班 アイム・トラベリング・アローン』 ディスカバー・トゥエンティワン
 ノルウェー産ミステリー。
 ミア・クリューゲルは、有能な刑事であるが、ある事件ゆえに問題視され、本人も鬱屈を抱えていた。
 いっそ死のうと決めていたところで、幼い女の子たちへの猟奇な殺人事件の捜査に引き込まれる。
 ところでこの副題は、殺された女の子についていた「一人旅をしています」を意味する航空会社で使うタグからとっている。なんとかならんのかこのカタカナそのまま手抜き題!


ルネ・レウヴァン『シャーロック・ホームズの気晴らし』 国書刊行会
 フランスの作家によるパスティーシュ。正統派。
 シェイクスピア=フランシス・ベーコン説等文学・歴史の題材が多いことも興味を引く。
コメント
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