学校給食は、県の学校給食会から食材量を購入するのがある意味では「当たり前」になっている筈なのに、それを変更するとは凄いこと!「アレルギーへの柔軟な対応や経費削減につながる」のであれば、この動きは全国に波及するのではないでしょうか。浦安市の実態を調査しています。
福岡市、学校給食会との取引見直し 脱・一括購入に波紋
学校給食の食材購入をめぐり、福岡市が今年度から福岡県学校給食会との取引を見直したことに全国から注目が集まっている。市は、アレルギーへの柔軟な対応や経費削減につながるとして見直しの効果を挙げるが、大都市の離脱に給食会側は危機感を強めている。
学校給食は、公立小中学校を運営する市町村が提供する。市町村の多くは主食やおかずの一部を公益財団法人の都道府県学校給食会から一括購入し、福岡市も県学校給食会ができた1949年から取引を続けてきた。
それが今年度から生徒・児童ら約12万人分の米飯やパン、牛乳については県給食会との契約をやめ、市内外の業者から直接買う方式に改めた。2001年に給食会との取引を見直した横浜市にならい、18年から準備を続けてきた。
理由の一つが食物アレルギーへの対応だ。児童・生徒の約3%(3763人)に対応が必要とし、業者からの直接購入に切り替えたことで、「パンからゴマの除去」などに柔軟に変更できるようになったという。
県給食会が設定する食材の購入価格も「割高」と見る。市教育委員会は取引見直しで年5500万円の削減効果があると推定する。
市と直接取引するようになった業者は、地産地消をめざす市の方針に応えようと、市内産のイチゴを使ったパンの試作などに取り組む。市教委給食運営課の杉本知裕課長は、「直接取引によって学校現場のニーズへの柔軟な対応が可能になった」と手応えを感じている。
■食材購入費の上昇に懸念
県給食会にとっては、福岡市との取引見直しは痛手だ。昨年度の売り上げは約110億円で、福岡市が契約をやめた分で約25億4千万円を占める。約4分の1の売り上げ減となり、人件費を削減し、食育教室などイベント開催も見直した。県給食会幹部は「給食の提供に影響が出ないよう、今後も事業の見直しを進める」と話す。
全国学校給食会連合会(全給連)は、見直しが全国に波及しないか懸念する。横浜市や福岡市のように政令指定市が取引を打ち切れば、他の市町村へのしわ寄せは避けられない。大量仕入れで価格を抑え、配送費がかかる山間部でも同じ価格を維持しており、都市部の離脱で仕入れ量が減れば、その分食材の購入費が上がってしまうからだ。
小規模自治体の場合、業者との直接取引では採算が合わず、給食会に頼らざるを得ない。全給連の国府(こう)島(じま)勇三事務局長は、「もうけに関わらず県内同一価格で取引するのが私たちの使命。格差なく子どもに必要な栄養を補うため、さらにきめ細かな対応を進めなければいけない」と話す。
■「規模に頼る運営から転換を」
取引を見直した福岡市には、全国から問い合わせが相次いでいる。県内外の約30自治体に加え、大阪市や名古屋市など政令指定市の7市教委からも電話があったという。
大阪市の担当者は取材に「人件費などの高騰で給食費の値上げが検討されるなか、コスト削減につながる取り組みには関心がある」。北九州市は福岡市を参考に取引を見直した場合の利点や課題の洗い出しを始めた。
ただ、実現には困難も伴う。仙台市は「直接取引する業者の協力が得られない限り難しい」。別の政令指定市も「自治体の人員が限られ、給食会並みの調達はできない」と話す。堺市は「台風で停電した時、代わりの業者を手配してもらい食材を購入できた」として、災害対応などで給食会を評価する声もある。
給食経営に詳しい梅花女子大の西村智子教授は、「福岡市の見直しは給食会との慣習的な取引に一石を投じた」と評価する。その上で「大量仕入れによる価格の安定だけでは、学校現場のニーズを満たせなくなりつつある。格差のない給食を維持するため、給食会は規模の大きさに頼る運営からの転換が必要だ」と指摘する。(神野勇人)