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蜀相(しょくしょう) 杜甫

2023-12-17 06:21:27 | 文学
詩聖・杜甫の七言律詩を紹介します。
  蜀相
丞相祠堂何処尋 
錦官城外柏森森
映階碧草自春色
隔葉黄鸝空好音
三顧頻繁天下計
両朝開済老臣心
出師未捷身先死
長使英雄涙満襟
         「読み方」
丞相ノ祠堂 何レノ処ニカ尋ネン 
錦官城外 柏(はく)森森
階ニ映ズルノ碧草 自カラ春色
葉ヲ隔ツルノ黄鸝(こうり) 空シク好音
三顧頻繁(ひんぱん)ナリ 天下ノ計
両朝開済ス 老臣ノ心
出師(すいし)未ダ捷(か)タザルニ 身 先ズ死シ
長ニ英雄ヲシテ 涙 襟ニ満タシム
    「訳」
   蜀の丞相諸葛孔明の祠堂は、どこに尋ねたらよいのだろうか。
   錦官城外、柏の木々がこんもり茂っている所がそれだ。
祠堂の階段に映える緑の草は、春の来るにまかせて美しく萌え、
葉かげの鶯は、聞く人もないままに美しい声で鳴いている。
昔、蜀の劉備は三度も孔明を訪ねて、天下を安定させる策を問うた。
孔明はこれに心動かされて、劉備・劉禅(りょうぜん)の二代に仕え、 
創業・守城にと老臣のまことをつくした。
しかし、魏を討とうと兵を出し、
まだ戦いに勝たないうちに、彼の命はつきてしまい、
長く後世の英雄たちに涙を流させ、襟を濡らさせることになった。
 「鑑賞」

「三顧」は、劉備が孔明の草堂を三度訪れて出馬を乞うたこと。「開済」は国を開き、民を済(すく)うこと。劉備とともに国の礎を築き、劉備の子の劉禅を補佐してよく国を治めたことをいいます。「出師(すいし」は出兵。孔明は魏討伐のため関中に出兵するに際し、有名な「出師の表」を劉禅に奉りました。先帝の遺志を継ぎ、漢王朝を復興すべく粉骨砕身しますが、魏軍と対峙中、業半ばにして五丈原の陣中に没しました。その諸葛孔明の誠忠が、杜甫自身の唐王朝に対するそれに強く共鳴したのでしょう。最後の二句は、特に諸葛孔明に対する杜甫の敬慕の情と深い感慨が込められた名句として、長く愛誦されています。
        石川忠久「ビジュアル漢詩 心の旅」世界文化社 
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