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陽関三畳 王維

2023-12-14 06:17:04 | 文学
初唐の詩人、王維は、使者の役目を帯びて安西に旅立つ元二(げんじ)を「陽関三畳」を詠んで送りました。以来、送別の時には、王維のこの詩を三度繰り返して詠うのがならわしとなったというように、代表的な送別の詩です。

 送元二使安西

渭城朝雨浥軽塵 
客舎青青柳色新
勧君更尽一杯酒
西出陽関無故人

         「読み方」

元二ノ安西ニ使イスルヲ送ル

渭城ノ朝雨 軽塵ヲ浥(うるお)シ 
客舎青青 柳色新タナリ
君に勧ム 更ニ尽クセ一杯ノ酒
西ノカタ陽関ヲ出ヅレバ 故人無カラン

「訳」
        別れの朝、渭城の町は夜来の雨が軽い土ぼこりをしっとりとうるおしている。
        旅館の前の柳は芽吹いたばかり。ほこりが洗い落とされ、水をふくんで、よりいっそう青々と見える。
        いよいよ旅立つ元二君、さあ、もう一杯酒をのみたまえ。西のかた、陽関という関所を出たならば、もういっしょに酒を汲み交わす友達もいないのだから。

「鑑賞」

       前半二句は、すがすがしい雨上がりの春の情景。昨夜、長安から元二を送ってこの渭城の町にきて、別れの宴を催し、今朝はいよいよお別れ。宿屋の前の柳の芽は雨に洗われて目にしみるように青々としている。中国では昔から送別の時、楊柳の枝を手折って環を作り、それを旅人に送って旅の平穏を祈るならわしがあり、柳は別れの詩によく登場します。
       後半二句、昨夜は遠く旅立つ元二と心ゆくまで酒を飲んだ。だが、いよいよ別れの間際となれあ、また寂しさがこみ上げてくる。そこでせめてもう一杯。ひとたび西の陽関を出れば、そこは砂漠が広がる未知の世界。もう一緒に酒を酌み交わす友もいないだろう。
       
石川忠久「ビジュアル漢詩 心の旅」世界文化社 



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