人間の脳は、五感で直接感じることだけでなく、身体の内外から来る情報全体に応じて、気分、体調、感情、苦痛、快楽、夢、幻想、錯覚、その他いろいろなことを感じる神経機構を持っている。それらは互いに連携して連鎖的に感覚が作られていくが、その過程はまったく意識できない。私たちはそれらの感覚がいつの間にか現れていることに気づくだけです。それらを感じると人間の脳は無意識のうちに、それを客観的世界の空間位置、つまり自分の身体の内部や外部の各部に投射します。たとえば、かゆみを感じると、そのあたりを触ることで、かゆい皮膚の位置を確定できます。また「ピー」という音が聞こえると身体の外の空間のどこかでその音が発生していると感じる。左右の耳に聞こえると方向が分かります。しかし、その音は外し忘れたイヤホンから出た音の場合もある。あるいは、内耳や神経の疾患で幻聴が起こっている場合もある。しかしふつうは、(視覚、聴覚、触覚、運動感覚など)感覚の空間投射はかなり正確に信号発生の原因位置に的中する(この機構に関する脳神経科学の理論としてはたとえば、二〇〇〇年 ジン・ヒン、リチャード・アンダスン『いくつかの座標系での多モード統合空間表現を行う後部頭頂葉皮質のモデル』)。これは進化の過程でこの仕組みが洗練されてきたためでしょう。見当違いの位置ばかり注目する動物は子孫を残せなかったと思われます。
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