本章の表題として、冒頭で小説から引用した「私はここにいる」という神秘的な自意識の表現は、まさに言葉の限界を超えて言葉を使おうとしている。言葉の限界を気づかずに超えてしまうことから起こる神秘感です。あるいは、もしかしたら作家は、それに気づいていながら、あえてこのような言葉の使い方をしたのでしょう。巧妙な文学技法です。しかし、このように作られた神秘感を、人間存在の神秘と思うのは間違っている。
哲学はここから間違っていく。言葉の限界を超えて言葉を使おうとするとき、言葉は意味を失う。はっきりした意味がない言葉になります。はっきりした意味がない言葉に神秘はない。言葉の限界を超えて使われる言葉に、実は、神秘はない。
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