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ディープ・エコロジー VS シャロウ・エコロジー

『哲学カフェ!』より

 なぜ、環境問題は解決しないのか? ディープ・エコロジー VS シャロウ・エコロジー

 先生 今回のテーマは「なぜ、環境問題は解決しないのか?」です。

 イチロー たしかに、もう何十年もやっているのに、いっこうに解決しませんね。

 トム 人間のエゴでしょう。

 内藤 そうは言っても難しいですよ。環境を意識して生きる、ということじたいに無理があるから、いつまでたっても変わらないんじゃないでしょうか?

 森下 それは、開き直りじゃないの?

 内藤 そうじゃないっすよ。人間ってなにかすれば、必ず環境に負荷を与えるわけですよ。食物を食べれば自然が損なわれ、家を建てれば自然が損なわれる。そういう存在だから、しかたないんじゃないかって言いたいんです。

 先生 そうだとしても、程度を抑えることはできると思います。たとえば自然の動植物を食べるとしても、それはほかの動物も同じであって、食物連鎖の範囲なら、自然の体系を維持するためにかえって必要なことですよね。

 内藤 人間は、その範囲を超えざるを得ないんです。

 森下 どうして?

 内藤 それは、人間だけが文明を持ってしまったからですよ。文明というのは、自然にとって、すでに過剰なものなんです。そこをなんとかしないと。

 和田 でもそんなこと言ったら、原始人みたいな生活をしない限り、だめってことになるじゃない。

 内藤 そこまでは言いませんけど、スロー」ライフとか実践してる人がいますよね。

 イチロー そんなのファッションじゃないの? 本当に自然のことを考えるなら、もっとラディカルにやらなきゃなんないと思うよ。それこそ、原始人並に。私はできませんけど。

 先生 そういう発想をするのが「ディープーエコロジー」の人たちです。自然と人間を同等に見ることで、環境問題を根源にさかのぼり解決しようとする思想です。その反対が「シャロウーエコロジー」。つまり、環境問題はたんなる技術的な問題であって、技術により解決すればいいという立場です。ふっう、私たちが採る発想です。エコ技術とかね。

 トム プリウスとかでしょ。人間ってすごいと思いますよ。逆境をバネにして、ちゃんと新しい環境技術を武器に、経済を発展させてますから。

 内藤 本当にそれで解決してるんですか? なんか、ごまかしてるように感じるんだけどな。

 トム そうかな? 環境は、いま私たちが生きていくための最後の望みの綱でもあるよ。アメリカのオバマ大統領が就任した時に、「グリーンーニューディール」というのが話題になったけど、経済も環境頼みなんだよ。

 先生 内藤君は、ディープ・エコロジーがいいと思うんですか?

 内藤 う~んどうかな。確認ですけど、ディープーエコロジーは自然と人間を同等に扱うってことは、木を切ったらまさか殺人罪になるんですか?

 先生 殺人なのか殺木なのかわかりませんが、建物を建てたいけど、由緒ある木がある場合、それを切らずになんとかするということになるでしょうね。

 内藤 それだとディープ・エコロジーというのは、ちょっと非現実的な感じがしますね。

 トム たしかに、グリーンピースとかシーシェパードとか、過激な環境団体が捕鯨船にボートで突っ込んでいったりしてますけど、なんか違うような気がします。

 マリリン あくまで人間社会を前提にして考えないと、逆になにも変えられませんよ。そういう発想は大事なんでしょうけど。
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