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中国・内政

『再起する日本』より

党総書記、国家主席、党中央軍事委員会主席に就任し、本格的に政権運営をスタートさせた習近平は、権力基盤強化に向けて、権力集中を進める一方、統制を強めていった。

薄煕来に無期懲役の判決

 2012年に共産党の処分を受けた薄煕来元中央政治局委員兼重慶市党委員会書記に対する第一審公判が2013年8月22-26日に開かれ、9月22日に無期懲役の判決が下された。中央政治局委員クラスの判決としては異例の重刑で、習近平政権が法治と腐敗摘発への強い意志を示した。他方、それは薄煕来が2012年11月の第18回党大会を前に国家主席や国務院総理のポストを狙う「野心」を抱いたことに対する懲罰との憶測に説得力を持たせた。

 この「野心」に荷担したとされた前体制下で政法部門を掌握していた周永康元中央政治局常務委員会委員(常務委員)の人脈が2013年に入っても中央規律検査委員会に次々と拘束された。中国石油天然ガス集団公司の王永春と李華林の両副総経理、蒋潔敏国務院国有資産監督管理委員会主任、李束生公安部副部長などである。そのうち一部は周永康のファミリービジネスに関わる疑惑も指摘されている。

 2014年1月、初の中央政法工作会議が開かれ、習近平が重要講話を行ったことは、周永康の影響力を排除し、自らが政法部門を掌握したことを宣言するに等しかった。しかし、2014年3月末までに周永康への処分は公表されていない。常務委員クラスの処分に対する抵抗の強さを示唆している。

 高官の汚職に対しては、2012年に共産党の処分を受けた劉志軍元鉄道部長が7月8日に執行猶予2年の死刑判決を受けた。また劉鉄男国家発展改革委員会副主任が8月に重大な規律違反で党籍をはく奪された。4月には、徐才厚前中央軍事委員会副主席が汚職関与で取り調べを受けているとの憶測もネット上に流れた。汚職摘発は軍も無縁ではないが、高官の汚職摘発には旧勢力を一掃したい習近平の政治的な意図も見え隠れする。

大衆路線教育実践活動の展開とその成果

 習近平は権力基盤を強化するための政治キャンペーン「党の大衆路線実践教育活動(活動)」をスタートさせた。6月18日の会議で習近平は「活動」を党が大衆の信頼を取り戻すことがねらいと位置づけた。

 6月22-25日の会議では習近平が「活動」のなかで2012年12月に提起した倹約令とも言える「八項目規定」の精神の実現と形式主義、官僚主義、享楽主義、贅沢の風潮という「四つの風」への反対を結合させるよう指示した。

 活動」は一定の成果を収めており、10月末までの各省級での「八項目規定」精神違反は17、380件、19、869人、そのうち処分を受けた者は3、034人に上った。

 また2014年3月5日に開かれた第12期全人代第2回会議で、最高人民法院活動報告に対する非賛成票(反対票+棄権票)が16.3%、最高人民検察院活動報告は非賛成票17.2%と少なくはないものの、前年比ではそれぞれ4.7ポイント、78ポイント低下し、汚職への取り組みが評価されたということもできる。しかし、こうした取り組みに対しては、常態化するという積極的な見方と、いずれまた元の状態に戻るという懐疑的な見方に分かれている。

進む習近平への権力集中

 2013年11月9-12日に開かれた中国共産党第18期中央委員会第3回全体会議(18期3中全会)は、「改革の全面的深化の若干の重大問題に関する党中央の決定」決定」)を採択した。

 決定」は、経済だけではなく、司法、軍事、文化など多岐にわたる改革に言及しており、文字通り「全面的」となった。特に注目されたのは、「中央全面深化改革指導小組(改革小組)」と「国家安全委員会」の創設が盛り込まれたことである。前者については、12月30日に組長に習近平が就いたことが明らかになり、その後経済体制・生態文明体制改革など6つの専門グループの設置が決定し、改革実施体制が制度化された。後者については、2014年1月に「中央国家安全委員会」という名称で設置され、主席に習主席、副主席に李克強と張徳江が就いた。2つの機構のトップに習近平が就任したことは習近平への権力集中が進んでいることを示している。

党中枢を狙う「テロ」事件

 2013年10月28日、四駆車が天安門で炎上し、乗車していたウイグル族の家族3人のほか外国人を含む5人が死亡、38人が負傷した。30日、北京市公安局はこの事件を 「テロ」と断定し、3m、外交部もこの事件とウイグル独立組織「乗トルキスタン・イスラム運動(ETIM)」との関連に言及した。11月25日になってトルキスタン・イスラム党がこの事件を「聖戦」と主張するビデオ声明を発表した。

 11月6日には、山西省太原市の省党委員会ビル前で連続爆破事件が発生し、1人が死亡、8人が負傷した。公安部は容疑者の「個人的な不満を晴らし、罪のない人びとを傷つけた重大なテロ」と結論づけた。

 どちらの事件も党中枢を狙う衝撃事件だったが、容疑者の動機は明らかになっていない。しかし当局はいち早く事件を「テロ」と断定することで、中国の抑圧的な民族政策や宗教政策への不満と関連づける国際的な批判をかわし、事件の連鎖を避けるため、スピード解決を図った。

新公民運動の弾圧と強まる統制

 一党支配を否定するような過激なものではないが、当局に対し人権の尊重や公務員の資産公開などを要求する「新公民運動」を積極的に進める全国各地の活動家らが2013年3月以降、「公共の秩序を乱した罪」で相次いで拘束された。「運動」は組織化されていないが、当局はその広がりに警戒感をもった。

 7月16日、北京の有力な人権擁護団体「公盟」の創設メンバーの1人であり、「運動」の代表的な活動家の許志永が、また9月13日には「運動」を資金面で支援してきた実業家の王功権が拘束された。許志永には20M年1月26日に懲役4年の判決が下された。代表的な活動家である許志永と王功権が拘束されたことで、いったん下T火になった感がある。

 当局は2013年5月、大学教員に対し、普遍的価値、新聞の自由、公民社会、公民の権利、党の歴史的誤り、「権貴」(高官のような職権を利用して豊かになった)ブルジョア階級、司法の独立の「七つについて語らない(七不講)」よう指示したことが判明した。10月10田こは国家新聞出版ラジオ映画テレビ総局が国内メディアなどの全記者25万人に対し全国統一の免許更新試験の実施を決定している。知識人やメディアに対する統制は強まっている。
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