愛知県瀬戸市で、フェロシルトを現地で処分しようとの話がでている4月14日。
瀬戸市での15日の第一回会議のことが報道されたので記事を2つ紹介し、封じ込めや少量除去を撤回した2つの事例を紹介する。
(1)また学者の登場。「データが不十分としながら『そのままの状態の方が安全ということもありうる。除去しない案も含めて複数の選択肢を提示したい』」と。
(2)非公開だった会議は、次回から公開に。
(3)青森岩手県境の不法投棄事件の後始末では、現地封じ込め案は結局否定された。この経緯が日弁連報告書にまとめられている(関係者は読む価値あり)。
(4)岐阜市の不法投棄でも、費用負担が大変と、封じ込めとか一部しか撤去しない方向付けを匂わせてきた市長。それを受けた学者と住民側委員との激論のあった委員会の今年3月の報告。そして市の最終方針は、コンクリートガラなどはともかく、大部分を撤去・除去すること。
●(1) 封じ込め案浮上。全量撤去を困難視
土壌埋め戻し材「フェロシルト」の撤去が手つかずの愛知県瀬戸市幡中町で、県や製造元の石原産業(大阪市)などでつくる「幡中地区フェロシルトルト撤去方法等検討会」の初会合が十五日あった。大量で撤去が困難視されるなどの理由から、検討会委員の学識者は現地でのフェロシルトの封じ込め案も提示。同所でも全量撤去の方針が打ち出されていただけに、論議を呼びそうだ。
地上デジタル放送用タワーに隣接する約五万平方メートルの造成地で、全国最大規模の約十三万七千トンが埋まり、土砂との混在分を合わせた撤去量は百五十万~三百万トンに上る見込み。膨大な量のために埋設状態の調査が遅れ、八月十五日の撤去期限は事実上不可能になっている。
検討会は県や市、住民代表ら十八人で構成。非公開で行われ、終了後の会見で笠倉忠夫・豊橋技術科学大元教授はデータが不十分としながら「撤去作業により飛散などの危険性が増え、そのままの状態の方が安全ということもありうる。(コンクリートで囲うなどで)除去しない案も含めて複数の選択肢を提示したい」と述べた。
地元自治会が十八日に発足させるフェロシルト対策特別委員長の伊藤明さん(六六)
は「あくまで全量撤去が希望だが、撤去工事は住民生活への影響も大きい。(封じ込め案
などは)確かな情報を得た上で判断したい」と話した。
県はフェロシルトを産業廃秦物と認定し、神田真秋知事は「(石原産業に)速やかに全量撤去させる」と繰り返している。
会合では市民グループが公開を求めて紛糾、開始が約三十分遅れた。
次回の五月二十一日から公開されることになった。
(4月16日中日新聞)
●(2) 非公開、市民側反撥
有害物質を含む土壌埋め戻し材「フェロシルト」が最も多く埋められている愛知県瀬戸市幡中地区の撤去方法などを協議する検討会が15日、同市内であった。地元住民や製造元の石原産業、大学教授ら18人が出席したが、事務局の同市が会議を非公開としたため、市民団体メンバーらが反発。市は次回から検討会を公開することにした。
市は「出席者が自由に発言しづらい」と非公開とし、傍聴に訪れた市民団体「瀬戸市にこれ以上産廃はいらない会」などのメンバー8人を会議室から閉め出して、検討会を行った。この措置に市民団体側が反発し、会議終了後、井上勝・同市市民生活部長は「公開の要望が強かったので次回からは公開する」と釈明した。産廃はいらない会の川村正子代表は「三重県ではすべて公開され、誰でも傍聴できた。密室で行われると『何か問題があるのでは』と不安に思う」と話した。同地区の埋設量は約13万7000トンで、撤去には数年かかる見通し。検討会で、市は改めて全量撤去の方針を示した。
(4月16日毎日新聞)
●(3) 青森・岩手県境大規模不法投棄事件での封じ込め案への批判⇒全量撤去へ
青森・岩手県境大規模不法投棄事件に関する調査報告書
(日本弁護士連合会/公害対策・環境保全委員会/平成16年6月)
この報告が、経過を適格にまとめている。学者は読んで欲しい。要点抜粋。
◆ページ2 冒頭
不法投棄された廃棄物の総量は、青森県側67万立方メートル、岩手県側18万8000トン(約20万立方メートル)の合計約87万立方メートルと公表されており、これに汚染土壌を含めれば、撤去を要する廃棄物等は、100万立方メートル以上にもなる。これは、香川県豊島の不法投棄事件(廃棄物と汚染土壌の総量49.5万立方メートル)を遙かに上回る。
◆ページ10 ア
岩手県が早期の段階で全量撤去の方針を示し、住民側の支持を受けているのに対し、青森県は、当初、現地封じ込めを中心とする案を示したために住民側の猛反発を受け、その後、紆余曲折を経て、最終的に、全量撤去を基本とする案を示すに至ったという違いがある。
◆ページ10 ウ 以降
岩手県は、同委員会でも前記と同様の方針を示したのに対し、青森県は、遮水壁による囲い込みを優先すること自体は維持しつつ、囲い込み後に、特管相当廃棄物及びこれによる汚染土壌は撤去する意向であることを示し、一部撤去の方針を示した。
これに対し、住民側などから、岩手県と同様に原則全量撤去を求める声が強くなされ、その後、青森県は、特管相当廃棄物等のみを撤去する案から全量撤去までの3案を示し、同委員会の対応に委ねたい意向を示すなど、変遷を重ねた。
・・すると、同県は平成15年8月に、全量撤去を基本とする旨を表明、撤去方針を巡る問題に、一応の決着をつけた。尤も、田子町側の不信は根強く、一部封じ込めの余地を残すものではないかと批判している。
岩手県は、全量撤去を骨子とする原状回復方針をまとめ、岩手県が見込んだ総費用は、約220億円である。
青森県が見込んだ総費用は、約440億円で同県の計画案も全量撤去を基本方針とする内容になっている。
・・但し、とりわけ青森県側の現場下部で流出している汚水については、この時点まで浄化措置が講じられなかったことに対し、批判する声が強い。
◆ページ14 ア 両県の原状回復・汚染拡散防止対策に対する技術的評価
岩手県では、汚染拡散防止のため、遮水シートで現場をキャッピングしたあと、々の投棄エリア毎に、順次廃棄物等を除去していくとされ、遮水壁は設置せず必要に応じて鋼矢板を設置するに止めるとしているのに対し、青森県では、遮水壁を設置し汚水流出等を防いだあとで撤去を行うとしており、大きく異なっている。
・・・技術的検討の過程では、青森側の遮水壁案には批判的見解も強く向けられた。すなわち、遮水壁では岩盤からの汚水の漏出(いわゆる底抜け)を防ぐことができないのではないかという問題である。また、遮水壁の設置には膨大な費用を要することから、事実上の封じ込めにつながるのではないかとの批判も根強い。
・・地元、特に田子町から、現地に処理施設(溶融炉)を設置し現地処理して欲しいという要望が寄せられているが、両県とも、現地処理施設の設置は否定し、自県内の遠隔地などに所在する既存施設で処理するものとしている。・・環境アセスメントなどの手続をとる必要があるため、特措法の期限(10年)内に計画を完了することが不可能になることなどが、その理由とされている。この点に関し、岩手県では、以前から公設の処分場(第2クリーンセンター)の建設計画があり、県北地区への建設が有力視されていることから、同施設が本件の廃棄物等の処理のため活用される可能性がある。
●(4) 岐阜・山林産廃不法投棄:行政代執行の場合「一部撤去」--検討委最終報告書
◇岐阜市産廃対策検討委、最終報告書市長に提出
岐阜市椿洞の産業廃棄物処理業「善商」の大量不法投棄事件で、現場に投棄された産廃の処理方法などを検討する「市産業廃棄物不法投棄対策検討委員会」(吉田良生委員長)が23日開かれ、処理を行政代執行する場合は「一部撤去」とする最終報告書をまとめた。委員会後、吉田委員長は報告書を細江茂光市長に提出した。
報告書では、生活環境の安全は確保できると指摘。処理方法は、不法投棄行為者や排出業者などに責任に応じた撤去を求める一方、代執行の場合は混合ごみを木くずや紙、プラスチック類に分別したうえでの撤去を提言。金属類などそれ以外の廃棄物については選別状況やモニタリング調査の結果と地元意見を踏まえて判断するとしている。
費用負担については代執行が見込まれる場合、事業者や職員などからの拠出による基金の設置の検討と国、県への財政支援を求めている。
また、委員から要望のあった市民参加型の委員会の設置などを再発防止策として盛り込んだ。
細江市長は「29日に開かれる市産廃不法投棄対策本部会議で市の方針を決める予定。報告内容を十分尊重していきたい」と語った。【佐野裕】 毎日新聞 2006年3月24日
ちょうど今朝17日の中日新聞朝刊で特集されています。見出しは「処理にメドついたけど・・。費用180億円。完了に十数年」。
しかも、とても分かりやすい図解入り。新聞はカラー。必見。
インターネットにでていないのでとりあえず、しばらくはこちら。 (写真をクリックすると拡大。写真右下あたりのクリックでさらに拡大)
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