「YES オノ・ヨーコ」展

2005年12月09日 | Beatles

それは1966年の11月のことだった。ロンドンのインディカ・ギャラリーを訪れたジョン・レノンは会場の入り口に展示された<<天井の絵/イエス(YES)・ペインティング>>という作品に感銘を受けた。白い梯子の上の天井に額縁が取り付けられ、そこから吊り下げられた拡大鏡でのぞくと額縁の中に「YES」という文字があったのだ。インディカ・ギャラリーのオーナーはジョン・ダンバーという男でマリアンヌ・フェイスフルと結婚していた。彼に紹介されてオノ・ヨーコと出会ったジョン・レノンは1枚の名刺を手にした。そこには「呼吸しなさい」と書かれていた。

38年後の11月、僕は滋賀県立近代美術館で開催されている「YES オノ・ヨーコ」展で<<天井の絵/イエス(YES)・ペインティング>>を見た。作品保護のため梯子に登ることは出来なかった。僕は目が悪いので「YES」という文字は見えなかった。それでもこの作品を実際に見たという体験は何物にも代え難いものだった。

展示された作品の中で<<クリーニング・ピース(Cleaning Piece)>>に参加した。石を木の入れ物に積んでいくというもので、悲しいことがあったなら悲しみの山に、幸せなら喜びの山に石を積んでいくのだ。僕はやはり悲しいことが溢れた世界に胸を痛めていたので石を悲しみの山に積んだ。でも僕が悲しみの山と思った木の入れ物は喜びの山だったのだ。間違えて積んでしまったわけだが、それが逆に僕を肯定的な気持ちにさせた。

近年の作品とされる<<信頼して駒を進めよ(Play It By Trust)>>もよかった。真っ白に塗られたチェス盤とチェスの駒がテーブルに置かれていて、これでチェスをすれば敵味方の区別がつかなくなるというもの。

帰宅後、ジョン・レノンが"小さなお祈りの本"と言っていたオノ・ヨーコ著『グレープフルーツ・ジュース(講談社文庫)』が読みたくなり、本棚を探したけれど見つからなかった。展示されていた青い部屋には「この部屋は毎秒蒸発している」と書き記された紙が貼ってあった。僕の本も毎秒少しずつ蒸発して消えてしまったのだろうか。あるいは本の最後に書かれていた「この本を燃やしなさい。読み終えたら。(Burn this book after you've read it.)」のとおり燃やしてしまったのだろうか。僕は今日、ジョン・レノンのTシャツを着ていた。

コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« ジョン・レノン・ミュージアム | トップ | 「星の下 路の上」専用プレー... »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。

Beatles」カテゴリの最新記事