Sunday Song Book #1172

2015年03月29日 | Sunday Song Book

2015年03月29日プレイリスト
「ジミー・ウエッブ特集 Part 5」
1. I CAN'T GET IT / THE MIDNIGHT MAIL '66
2. LOVE YEARS COMING / STRAWBERRY CHIDREN '67
3. MARIONETTE (DEMO) / JIMMY WEBB "SONGBOOK" '6?
4. MARIONETTE / ART GARFUNKEL "WARTERMARK" '78
5. ONE OF THE NICER THINGS / JIMMY WEBB '68
6. FINGERPAINTING / JIMMY WEBB "THE NAKED APE OST" '73
7. FINGERPAINTING / ART GARFUNKEL "WATERMARK"(REPLACED) '77
8. ALLEGRO FROM MAC ARTHUR PARK / HAL BLAINE '68
9. ALLEGRO FROM MAC ARTHUR PARK / REG WILSON '68
10. PIANO (DEMO) / JIMMY WEBB '04('72)
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■内容の一部を抜粋
・近況
早いもので三月も終わり。年度末になるとラジオのメディアは番組改編の時期。この季節になると「大丈夫なの?」というお便りが届くとか。
「全然大丈夫です。何事もなかったように四月に入るんです。お陰様で来年度もちゃんとやりますので(笑)、引き続きよろしくお願いします」と達郎さん。
達郎さんは今、スタジオに入ってて、今月一杯が締め切りの仕事なのでウンウン(唸って)テンパってるそうだ。今日は番組を前倒しで収録しているという。

・ジミー・ウエッブ特集 Part 5
結局、三月は5週間ジミー・ウェッブ特集になった。これが本来のこの番組のはじめたときの姿で、ここ数年間は柔らかくなったが、昔はパツンパツンにオタクな番組だった。最近はそうじゃなくなっていて反省はしてないけれども、たまにはソングライター特集を。ジミー・ウェッブ特集をはじめたときは3週間の予定だったが5週間でも足らないぐらい。キャリアが長いので大変。今回はジミー・ウェッブ自身の歌を中心に特集するが'70年代以降の作品化されてないデモとかCD化されてないものがほとんど。でも曲はいい曲が並んでいる。

・I CAN'T GET IT
キャロル・キングもバリー・マンももともとは歌手志望だったが、夢叶わずにソングライターになって、その後にまた歌いはじめた。キャロル・キングはソングライター時代にデモ・テープも自分で歌っていたが、それが高じてシンガー・ソングライターとしてソングラターに勝るとも劣らない成功を収めた。日本の作曲家でいうと筒美京平さんは自分で絶対歌わない。彼のデモ・テープは全てキーボードの演奏だという。どうしても歌いたいというソングライターがいて、ジミー・ウェッブは正にどうしても歌いたい人で、ソングライターで大成功しても、自分の歌は自分で表現したいという衝動が初期からあった。モータウンで下働きをしていた後に、オーディオアースというマイナー・レーベルで下働きをしていたときに出させてもらったシングルがある。ミッドナイト・メールというグループを作って、作詞作曲ジミー・ウェッブ、ザ・ミッドナイト・メール・フィーチャリング・ジム・ウェッブというクレジットで「I CAN'T GET IT」(1966年)をリリース。

・LOVE YEARS COMING
ソングライターとしてジョニー・リバースに認められてヒットが出かけた頃に、ジョニー・リバースから「お前、自分で何かやってみろ」と言われてジョニー・リバースのレーベル、ソウルシティで出したのが、友達と作ったバンドのストロベリー・チルドレンという名義で、作詞作曲・アレンジ、ジミー・ウェッブ、プロデュースがジョニー・リバースの「LOVE YEARS COMING」(1967年)。

・MARIONETTE (DEMO)
・MARIONETTE
ジミー・ウェッブはソングライターとして脚光を浴びてスタート。書き溜めた曲を世の中に出すためにはデモ・テープというものを作る。その多くはピアノの弾き語りのデモで、'60年代の末に出たと思われる2枚組のプロモーション用のアルバム『SONGBOOK』にその多くは収められている。3面と4面に既成の曲、例えばフィフス・ディメンションの曲の後にジミー・ウェッブのピアノ弾き語りが8曲入っている。その中から後にレコーディングされた「MARIONETTE (DEMO)」。1971年のジミー・ウェッブのアルバム『AND SO ON』、1978年にはアート・ガーファンクルのアルバム『WARTERMARK』に収録される。せっかくなのでアート・ガーファククルの「MARIONETTE」を続けて。
"マリオネット びしょ濡れじゃないか 雨の中を誰かに置き去りにされたのかい? それとも君の頬に可愛い涙の粒が光ってるのは心が痛んでるからかい? 雨が雨漏りするためかい? 僕が君を新しく生まれ変わらせてあげよう 僕は君の瞳をブルーに塗って かつての僕がそうだったように 君を若返らせてあげよう そして棚の上に座らせてあげよう 操り人形師がまた君を連れて行くまで" メタファーに満ちたジミー・ウェッブらしい歌詞。

・ONE OF THE NICER THINGS
1970年には『JIMMY WEBB SINGS JIM WEBB』がコロンビアからファースト・ソロ・アルバムとしてリリースされた。これは当時のデモ・テープを勝手に出されたものらしくて、ジミー・ウェッブは全く納得していないそうだ。「実際に私は昔聴きましたが、歌は決してうまいとは言えませんので今日はかけませんが」と達郎さん。本格的にシンガー・ソングライターをはじめる前にジミー・ウェッブが歌ってる作品の中で、いちばん出来がいいのはダンヒル・レーベルから1968年にリリースされたリチャード・ハリスに提供した曲のオケをそのまま使って自分で歌っている「ONE OF THE NICER THINGS」。これはなぜか奇跡のように日本盤が出たという。達郎さんは日本盤が出たときに買ったとか。邦題は「想い出のきずな」で、東芝がまだダンヒルを持ってる時代。写真付きで達郎さんは「ほー、ジム・ウェッブはこんな顔してるんだ」と思ったとか。シンガーとして活動するときにジミー・ウェッブになったのかわからないが、このときはもうジミー・ウェッブになっている。
曲をかけてるときに調べたら年代的にジミー・ウェッブのバージョンが先に出て、リチャード・ハリスのバージョンは一年後に出ていることがわかった。

・FINGERPAINTING
この時代は売れっ子で映画のオファーがたくさん来て、その中から1973年に雑誌プレイボーイがレコード業界、音楽業界に進出したときに作られた映画『THE NAKED APE』(たぶん日本未公開だと思われる)のスコアをジミー・ウェッブが担当して2曲歌っている。そのオリジナル・サウンドトラックから「FINGERPAINTING」。

・確定申告
リスナーから「山下さんのような方が税理士さんに任せず確定申告を御自身でなさってるとは意外でした」というお便り。
「ちょっと言葉が足りませんでしたね。もちろん税理士さんにお任せしますが(笑)、でも領収書の項目とか整理は自分でやんなきゃダメなんです。で領収書をまとめてその税理士さんに渡すという、そういうことです。自分そんなことできません。税金大変です。頑張って下さい。もう終わったか、うん」と達郎さん。

・FINGERPAINTING
「FINGERPAINTING」はジミー・ウェッブのピアノのデモが残っていて、そのデモでもよかったのだが、アート・ガーファンクルも歌っている。アート・ガーファンクルの1978年のアルバム『WARTERMARK』は全曲ジミー・ウェッブの作品で占められているが、なぜか一曲だけサム・クックの「WONDERFUL WORLD」のカバーが入ってる。ジェームス・テイラーとポール・サイモンが一緒にやっていて大ヒットしたので、アルバムに無理矢理入ったのだと達郎さんは思っていたとか。何年か前に人から聞いた話では、当初『WARTERMARK』は全曲ジミー・ウェッブの作品で、ヒット曲の「WONDERFUL WORLD」が足されたことにより、一曲差し替えられてしまった。それが「FINGERPAINTING」。オランダでテスト盤で1977年に一度発売されたが、すぐに回収されて今出回ってる『WARTERMARK』になった。アルバムの曲順も違うそうだ。達郎さんも持ってないレアなアルバムだが、その友達にDATでコピーしてもらった音の悪い音源があるので今日はその中から「FINGERPAINTING」。

・ALLEGRO FROM MAC ARTHUR PARK
この5週間聴いてもらったらわかるように、ジミー・ウェッブの初期の作品は、いわゆるレッキング・クルーといわれるカリフォルニアのスタジオ・ミュージシャンの力なしでは、とても成り立たなかったということがよくわかる。その中でも取り分けドラマーのハル・ブレインという人はひじょうに貢献度の高い人。番外編としてジミー・ウェッブがプロデュースしたハル・ブレインのシングル、ハル・ブレイン・ヒズ・ドラムス・アンド・オーケストラと銘打たれて、1968年にダンヒル・レーベルからリリースされた「ALLEGRO FROM MAC ARTHUR PARK」という「マッカーサー・パーク」のアップテンポの部分を引っ張り出して、アレンジ・コンダクト・プロデュース・ジミー・ウェッブで展開している恐ろしい一作。「マッカーサー・パーク」がヒットしたのでダンヒル・レーベルはインストを出そうという目論見があり、この直後にモンコヒギーズが「ALLEGRO FROM MAC ARTHUR PARK」をシングル・カットしていて、本当はそれをかけたかったがシングルを注文したが届かなかった。その代わりにピアニストのレグ・ウィルソンがヒズ・ピアノ・アンド・オーケストラで1968年に「ALLEGRO FROM MAC ARTHUR PARK」を出している。ジャズ・ミュージシャンにもこの実験性が認められたという証拠になる。いかに当時のレッキング・クルーの演奏が凄いかを証明するために聴き比べ。「同じアプローチでもフレッシュさというかアレが違うという、それをお聴きをいただければ十分でございます」と達郎さん。

・PIANO (DEMO)
ジミー・ウェッブは'70年代に入るとバラードが多くなり、まったりとした感じになるが、今でも現役で歌っている。「いつまでもお元気で二十世紀を代表するソングライターでございます。いつまでもお元気で。日本の片隅で応援しております」と達郎さん。最後の曲は達郎さんが取り分け好きな一曲。1972年のジミー・ウェッブのアルバム『LETTERS』に収められている「PIANO」という曲。いかにもミュージシャンらしい一曲で、このデモ・バージョンが2004年にライノから出た'70年代のジミー・ウェッブの作品を全部CD5枚組に詰め込んだボックス・セットに入ってる。
"最後の日が来た もう別れを告げる相手もいない 残されたのはお前だけだよピアノ どうせ聞いちゃいなんだろうし 聞こうともしないだろうけれど お前のために一曲捧げるよ いつもこんな感じだったよな お前がそこにどっしり構え 大きな口を開けてはバカみたいに笑ってる前で 俺は椅子をくるくる回していた 最後の歌を君に捧げよう 一晩中起こしておくつもりはないんだ だからメゾピアノのやさしいナンバーにするよ 俺もなんだか疲れたんだ しゃんと背を伸ばすようにはしてるんだけどね お前のようににこやかに笑ってこの歌を捧げるよ にこやかに笑いながら一緒にこの歌を歌おう 一緒に優しく終幕の音楽を奏で そして俺たちはゆっくりとゆっくりと消えてゆく"

■リクエスト・お便りの宛て先:
〒102-8080 東京FM
「山下達郎サンデー・ソングブック」係

2015年04月05日は、レギュラープログラム「棚からひとつかみ」
http://www.tatsuro.co.jp
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