Sunday Song Book #1171

2015年03月22日 | Sunday Song Book

2015年03月22日プレイリスト
「ジミー・ウエッブ特集 Part 4」
1. THE MAGIC GARDEN / THE 5TH DIMENSION "THE MAGIC GARDEN" '67
2. WHEN IT WAS DONE / HUGO MONTENEGRO "COLORS OF LOVE" '68
3. MONTAGE / PICARDY '68
4. CRAZY MIXED-UP GIRL / PIPER GRANT '69
5. LITTLE TIN SOLDIER / BARBRA STREISAND "WHAT ABOUT TODAY" '69
6. THE MOON IS A HARSH MISTRES / JUDY COLLINS "JUDITH" '75
7. SOMEONE ELSE / ART GARFUNKEL "WATERMARK" '78
8. SHE MOVES, EYES FOLLOW / KENNY RANKIN "HIDING IN MYSELF" '88
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■内容の一部を抜粋
・近況
新曲のレコーディングがはじまったそうだ。先週までデモ・テープを作っていたが、スタジオに入って具体的な音を作る作業に入ってるとか。久しぶりのスタジオ仕事なのでノリがつかめるまで時間がかかるという。

・ジミー・ウエッブ特集 Part 4
3週の予定ではじめたが、やればやるほどどんどん出てきて、とても終わりそうにないので三月いっぱいジミー・ウェッブ特集をすることにしたそうだ。5週間ソングライター特集をやったのはギャンブル / ハフだけで、リーバー / ストーラーが4週間、バリー・マン、キャロル・キングが3週間。キャロル・キングは全曲ワンコーラスずつという感じで、今回のようにフルコーラスかけていたら二月ぐらいやってもいいような感じ。ジミー・ウエッブ特集、前3回は基本的に時系列だったが今週は達郎さんの好きなジミー・ウェッブの作品を中心に。来週はジミー・ウェッブのシンガー・ソングライターとしてのソロ作品やレアなデモ・テープの音源を中心に番外編というかたちでお届けする。今週がいちばん曲の粒が揃っているという。

・THE MAGIC GARDEN
フィフス・ディメンションの1967年のセカンド・アルバム『THE MAGIC GARDEN』は全面的にジミー・ウェッブの作詞作曲・アレンジ。プロデュースはエンジニアのボーンズ・ハウ。'60年代、カリフォルニアの最高のサウンド。この中から「THE MAGIC GARDEN」。一枚目のアルバム『UP,UP & AWAY』はベスト10に入ったものの、このアルバムは100位に入ることができなかった。ちょっと実験色が強すぎたという感じ。同時期に出たテルマ・ヒューストンも同じで、評価は高いけれどチャート的にはあまり成功したとはいえない。今聴くと全然そんなことなく関係なく良し悪しで皮肉なもの。

・WHEN IT WAS DONE
1967年、1968年のジミー・ウェッブの曲の多さはもう寝ないで書いてるんじゃないか、毎日書いてるんじゃないかというほど多い。リチャード・ハリスの「WHEN IT WAS DONE」は1968年に作られた曲だが、1970年に映画音楽の作家ヒューゴ・モンテネグロが『COLORS OF LOVE』というアルバムで取り上げている。アルバムには作詞作曲ジミー・ウェッブでリチャード・ハリスがオリジナルという作品の「DIDN'T WE」と「WHEN IT WAS DONE」の2曲が収められている。

・MONTAGE
ジミー・ウェッブの作品はロックンロールというよりかはどちらかというとミドル・オブ・ザ・ロード。やさしいメロディとやさしい曲調が特徴なので、どちらかというとそうした分野からオファーがたくさん来る。ほっとかないのが映画業界で「映画音楽をやらないか?」というオファーが来てサウンドトラックを手がけるようになる。そのいちばんとっかかりの一作、1968年の映画『HOW SWEET IT IS』。デビー・レイノルズ、ジェームス・ガーナー主演の映画のサウンドトラックに収められてる「MONTAGE」。映画には「MONTAGE」と「HOW SWEET IT IS」の2曲を提供している。歌ってるのはピカルディ・シンガーズで、たぶんスタジオ・ミュージシャンのグループだと思われる。ダンヒル・レーベルからこの2曲がカップリングでシングル・カットされた。作曲・アレンジ・コンダクト・プロデュースはジミー・ウェッブ。この時点ではもうジミー・ウェッブとクレジットされている。シングルはピカルディのクレジット。この時代のアナログ・シングルはラジオのプレイの音圧を稼ぐためにものすごくレベルを入れてるので、しばしば音が歪(ひず)む。もともとの歪みから来ているので盤質が良くても歪む。そういう時代。サウンドトラック盤『HOW SWEET IT IS』のほうがいい音かもしれないので、もう二月も前に中古レコード屋にオーダーしたがまだ来ない。最近個人輸入が滞っているのはテロの影響だという話。シングルが歪んでいるのでサントラでかけようと思ったそうだがオンエアには間に合わなかった。「また機会があれば」と達郎さん。

・CRAZY MIXED-UP GIRL
この時代のジミー・ウェッブの作品はいろんな人にカバーされて「マッカーサー・パーク」なんて何人がカバーしているかわからないほど。「DIDN'T WE」もそう。この曲もそのうちの一曲でタイトルは「MIXED-UP GIRL」。テルマ・ヒューストンの1969年のシングルがオリジナルなのか、イギリスの女性シンガー、パイパー・グラントのほうがリリースが先なのかわからない。微妙にところで、多分同時期であると思われる。そこからはじまりダスティ・スプリングフィールド、ジミー・ウェッブが自分でやってるやつ、ナンシー・ウィルソンからアレサ・フランクリン、いろんな人がカバーしている。ジミー・ウェッブの作品としては有名な一曲。達郎さんは何といっても1969年のダンヒル・レーベルから出たイギリスの女性シンガー、パイパー・グラント、一説によるとピケティ・ウィッチのポリー・ブラウンの変名という説もあるがわからない。ボーンズ・ハウのプロデュースでエンジニアリング。アレンジがボブ・アルシバー、ビル・ホールマンというウェストコーストのミドル・オブ・ザ・ロード系のアレンジャー。このパイパー・グラントのバージョンだけ「CRAZY MIXED-UP GIRL」というタイトルでリリースされた。イギリスの女性シンガー、パイパー・グラントだが、録音はL.A.なのでハル・ブレインの炸裂したドラムが聞ける。
"あなたを手放せば引き留めることができるのはわかってる 私はなんて哀れなんだと嘆き悲しみ あなたに芽生える罪悪感で行く手を遮ることもできる 二人の間に時は過ぎ 今ではあなたが去っても去らなくても何も変わらない そう私が諦めてることをあなたも知ってる なぜ私は誰かを必要としないのか なぜあなたまで混乱してしまったのか 私みたいな混乱した女と一緒に"という冷めた恋の歌。

・LITTLE TIN SOLDIER
1969年にリリースされたバーバラ・ストレイサンドのアルバム『WHAT ABOUT TODAY』に収められた「LITTLE TIN SOLDIER」。「ニューヨークのレコーディングですのでオーケストレーションがまた一味違って素晴らしいテイストになっております」と達郎さん。

・芸術選奨 文部科学大臣賞
達郎さんが昨年行われた“Maniac Tour ~Performance 2014~”の功績が認められて平成26年度(第65回)芸術選奨 文部科学大臣賞(大衆芸能部門)を受賞した。
「先週も申し上げましたが芸術選奨をいただきましたが。この番組宛にもたくさんのお便り、お祝いのおハガキ、お手紙、祝電まで下さる方がいらっしゃいまして、本当にありがとうございます。マスコミに報道が出ましたら各方面の方からたくさんのお祝いをいただきまして、じぶんの誕生日とか還暦のアレのときの数倍来まして、じぶんが思ってるより凄かった(笑)。私はそんなもんかと思っていたんですが、あとからだんだんだんだん恐ろしくなってきましてですね、とんでもないものいただいちゃったという感じでございますが。本当にありがとうございます。この場を借りて御礼申し上げます。今後とも精進してまいりたいと思いますので、何卒ご指導ご鞭撻の程、よろしくお願い申し上げます」と達郎さん。

・THE MOON IS A HARSH MISTRES
1970年代に入るとジミー・ウェッブ自身のシンガー・ソングライターの活動へと軸足が移って行く。ヒット曲の数がガタッと落ちてしまうが、それでも書き下ろし、その他のジミー・ウェッブが録音した曲のカバーというかたちで名曲が残っている。この「THE MOON IS A HARSH MISTRES」もそのうちの一曲。ジミー・ウェッブは小さい頃からSFが好きでロバート・ハインラインの『月は無慈悲な夜の女王』というタイトルをそのままとって「THE MOON IS A HARSH MISTRES」という一曲を作った。1975年にジュディ・コリンズが最初にレコード化して、ジョー・コッカー、ジミー・ウェッブ自身、グレン・キャンベル、リンダ・ロンシュタッド、いろんな人がカバーしている。なんといっても最初のジュディ・コリンズのバージョンはアリフ・マーディーンのプロデュースで、ジュディ・コリンズがじぶんでピアノを弾いてる、なかなか情緒あふれるテイクになっている。
"彼女が空を飛ぶ様子を見てごらん 黄金の翼で空を駆ける 手が届きそうなくらい近く見えるけれど気をつけて 黄金のように温かく見えるけれど月は無情な夜の女王 月は過酷なまで冷たくなれる"となかなか深い意味を持った詩で綴られる。1975年のジュディ・コリンズのアルバム『JUDITH』から「THE MOON IS A HARSH MISTRES」。ロバート・ハインラインの『月は無慈悲な夜の女王』は月が地球の植民地で、そこから独立して革命を起こすというような話。

・SOMEONE ELSE
ジミー・ウェッブをカバーした最高のアルバムはアート・ガーファンクルの1978年の『WATERMARK』だと思います、と達郎さん。全曲ジミー・ウェッブではなく、なぜか一曲だけサム・クックの「WONDERFUL WORLD」のカバーが入ってる。実は全曲ジミー・ウェッブのカバーで出される予定だったが、その話はまた来週。このアルバムの中で達郎さんが好きなのは「SOMEONE ELSE」。ジミー・ウェッブのインタビューでは「もう一曲ないか」とアート・ガーファンクルが言ったので、じぶんが若い頃にいちばん最初に作ったような曲があると言って弾いたら、「これをやろう」ということになった、と話している。
"誰か他の人 前から僕にはわかっていたんだ 君は僕のものじゃないし これからだってそうはならないだろうって 誰か他の人 昨日の晩僕は君を見かけたんだ 彼にしがみついてた そう僕ではない誰か他の人 でも僕は彼を憎めないんだ だってこの苦しみはいつか彼も味わうことになるから そう絶対にいつか そして彼にはわかるんだ 他のだれかはそこら中にいるってことを 僕が今知ったように"とジミー・ウェッブらしい一作。達郎さんは'70年代しばらくジミー・ウェッブを聴いてなかったが、このアート・ガーファンクルのアルバムを聴いて、ジミー・ウェッブは全然健在だなと思った記憶があるとか。もうブラック・ミュージックどっぷりの時代だったがこのアルバムはよく聴いたという。

・SHE MOVES, EYES FOLLOW
1988年のケニー・ランキンのアルバム『HIDING IN MYSELF』から「SHE MOVES, EYES FOLLOW」。ジミー・ウェッブの作詞作曲・アレンジ・コンダクトを務めたケニー・ランキンとのコラボレーション。
"彼女が動く 視線が這う 触れてみたい 誰もが彼女の虜 じっと見つめている 彼女が笑う 笑い声が広がる 石の波紋のように プールに落ちる雨のように 彼女の立ち振舞うところ 僕の目がそこに釘付けになる"と珍しく素直。

■リクエスト・お便りの宛て先:
〒102-8080 東京FM
「山下達郎サンデー・ソングブック」係

2015年03月29日は、「ジミー・ウエッブ特集 Part 5」
http://www.tatsuro.co.jp
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