9月21日(日) 雨。
テアトル梅田で北野武監督作品『アキレスと亀』を観た。
http://www.office-kitano.co.jp/akiresu/
■アキレスと亀
テアトル2 11時45分の回 指定席C-01
[あらすじ]
幼い頃から絵を描くのが好きだった真知寿(まちす)。
父の会社の倒産、両親の自殺という辛苦を味わい、
やがて画家になるだけしかない人生を歩むことになる。
青年期には彼は生活のため働いていた印刷工場で
幸子という女性と出会い結婚する。
よき理解者を得た真知寿だが、
世間の評価や成功を得ることはできなかった。
中年になった真知寿。創作は続けるものの、
作品は全く売れず、
常軌を逸した創作姿勢に夫婦の絆も破綻してゆくのだった.....
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タイトルの「アキレスと亀」は、足の速いはずのアキレスが、鈍くても一歩一歩、着実に歩を進める亀を追い越すことができないという数学上の理論「ゼノンのパラドックス」という逆説からで、現実には詭弁であるそうだ。この作品では真剣にアートをやっていれば売れる売れないは別の話で、創作し続けること自体がアートで、それに意味があるし、いちばん大切なことなんじゃないだろうか、という北野武の想いが込められている。
『TAKESHIS'』、『監督・ばんざい!』とこの作品で三部作になるのだという。前の二作で俳優、映画監督としての北野武を自己批判したが、その答えとして『アキレスと亀』では、たとえ興行成績が悪くても、変わらずにこれから先も映画を撮り続けるのだということを表明している。
そういう意味で北野武監督作品の中でも異色で、拍子抜けするようなラストに観終わった後は、果たしてこれでよかったのだろうかと思ってしまったが、次作に繋がるような淡い期待感を胸の内に感じた。そうした希望というのは明らかに前作までの作品にはなかったもので、ある種の戸惑いがあったものの余韻が静かに心を満たしたのも事実であった。