バート・バカラックの『At This Time』。輸入盤は昨年の秋に発売されていました。インフォメーションも何もなくて、あまりに唐突にリリースされたものですから、最初は買うのをためらっていたのです。
その後、今年になり日本国内盤が発売されることになりました。BMGジャパンのサイトには次のように紹介されています(以下引用します)。
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SONY BMG UKと契約して完成させた待望の新作アルバム。すでに50年を超えるキャリアを誇るバート・バカラックは、レコード音楽の世界で数多くのスタンダード・ナンバーを持ち、音楽史のなかでも名実ともに傑出した第1級の優れたソングライターであり、実際に世界中で最もよく知られている作曲家だといえるでしょう。
今回の『At This Time』は、彼のソロ名義のオリジナル・アルバムとしては、1977年にA&Mからリリースされた『フューチャーズFutures』以来、実に28年ぶりの新作にあたるもの。アメリカのポピュラー音楽を代表する彼のひさしぶりのアルバムにはHIP-HOP界からドクター・ドレーが、ジャズ界からクリス・ボッティ、そしてエルヴィス・コステロ、ルーファス・ウェインライト、など、多彩な豪華ゲストが参加!!
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SONY BMG UKのヘッド、ロブ・ストリンガーは「"今のバート・バカラック"を表すものを作ってほしい。売れるアルバムでなく、いいアルバムを作ってほしい」と言って口説いたそうです。バカラックはそんな申し入れに「今の自分の人生や考えを伝えたいという気持ちが芽生えた」とプロモーションで話してます。
「私の"今"、聞き手の"今"、私の子どもたちの"今"。今、この地球上で起こっていることを考えたら、一体何を子どもたちに残せるのか真剣に悩んでしまう。一体彼らはどういった環境で生きてゆくことになるんだろう。そんな気持ちを一種のステートメントとして音楽で伝えることがこの上なく重要だと感じたんだ。私が今感じてる怒れる気持ちをストレートに表現する必要があったんだ」とバカラックは話してます。
そこでバカラックは初めて作詞に取り組むことになりました。1曲目の「Please Explain」ではかつての代表曲「What The World Needs Now Is Love」の一節を引用し、"私は覚えている「What The World Needs Now Is Love」と歌っていた歌を / その愛はどこにあるんだ / どこへ行ってしまったんだ / 太陽も月も今や泣いている / 夢はどこにあるんだ / 誰が私たちのハートを壊してしまったんだ / さあ私達にわかるように説明してください"と歌っています。
他にも子どもたちの将来を心配する楽曲や、アメリカを支配する指導者に抗う気持ちを歌にした楽曲などが続きます。絶望した気持ちが交差しながら、状況が好転することを切に願うようにアルバムは閉じていきます。
「ここにあるのは一対一のラブ・ソングではない。荒んだ世界に向けたラブ・ソングなんだ」とバカラックは言ってます。