Life in America ~JAPAN編

I love Jazz, fine cuisine, good wine

愛と夢は子どもを救う

2007-05-23 06:29:31 | アメリカ生活雑感
今週月曜日、サンフランシスコのミッション地区のとあるレストランで行われたとあるイベントに招待されお出かけしてきた。
このイベントというのは、Missionハイスクールという地元の高校が毎年行っている大学サマーキャンプへの派遣&4年制大学へのスカラーシッププログラム(通称“ASAP”:The Athletic Scholare Advancement Program)が主催するパーティ。

Mission地区というと、比較的治安のいいサンフランシスコの中でも「一人で歩いてはいけない区域」というのがガイドブックの決まり文句。ここを歩くと聞こえてくるのはほぼ100%スペイン語。メキシコや南米からの移民や不法滞在者労働者の多い、ちょっとやばやばなエリアなのだ。
この地区のど真ん中にあるMissionハイスクールに通う生徒の多くは、不法滞在や低所得の移民の家庭の子どもたち。経済上の理由から家業を手伝わざるをえなかったりして満足に学校に通えないというハンディキャップや英語をうまくしゃべれないというコンプレックスから、社会から足を踏み外す子どもたちが多いのが悲しい現状だ。

そんな子どもたちを劣悪な犯罪社会から守り、人生の“Next Step”を考えるきっかけを与えようと、夏休みを利用して彼らを大学のスポーツ・サマーキャンプに送り込むのがこのASAPのファーストステップ。ひと夏の“模擬大学生活”を経験した子どもたちは、これをきっかけにスポーツの魅力、団体生活やコミュニケーションのルール、教育の大切さに見ざめすさまじく変貌するのだという。
ASAPの第2のステップはそれを受けてのその後の大学進路指導。スポーツをきっかけに今度は将来どういう専門分野を学びたいか、また彼らにはどんなポテンシャル(潜在能力)があるかを丁寧にカウンセリングしていくのもASAPのミッションだ。
そして最も重要なのが彼らの進学資金のドネイション(寄付)を集めること。経済力のない親に代わりこの寄付金こそが唯一の進学資金となるわけだ。こういった一連のASAPの活動を全面的に支えているのは、ハイスクールの教師陣となんと一般のボランティアメンバーたち。アメリカは「ボランティア文化」が根付いているとは感じていたが、この一筋縄ではいかないプロジェクトにも一般の人たちが我が身を削って参加しているということにただただ、頭が下がる思いだ。

さて、どうして私がここに参加することになったかというと・・
きっかけは、このASAPのボランティアとして活動しているDedeから1週間前にきた“S・O・Sメール”。
「今、たのまれて(ASAPの)パンフレットを作っているんだけど私のパソコン技術とデザインセンスでは限界。助けて!」
本職がライターということもあり、Dedeは昨年度このプログラムに参加した子どもたち7人のインタビュー記事を執筆し、それをこの日のパーティー出席者に配布するために20ページのミニパンフレットにまとめようとひとりで悪戦苦闘しているというのだ。
急遽ふたりでランチミーティングを行い、ページネーションを決め、コピーやタイトルといった要素をもらい、コピーセンターに行き表紙の紙を選び、パンフ制作を開始した。パーティーに間に合わせるにはわずか1日しか制作時間がないというタイトなスケジュールだったが、運よくこれといった予定も入っていなかったのでこの仕事に集中することができ、とりあえず格好はついた。しかし、100人以上もの来客に配って募金を募るという目的からしてせめて表紙だけでももっと気の利いた体裁にしなければと不安になり、長年の仕事仲間兼友人のグラフィックデザイナーJ子さん(東京)にダメもとで泣きついた。彼女は半日しかないところを快く引き受けてくれ、あっという間に思い通りのデザインに仕上げて送ってくれた。おお、神様!!(彼女にはず~っとこうして助けてもらってばかり)
いやぁしかし、インターネットってすごいなぁ。これで日本→アメリカの仕事も意外と簡単ということがわかり、何かできそうな予感もわいてきた。



日・米共同合作でできあがったパンフレット。
Dedeによるインタビュー記事にもほろりとさせられる。


パーティー会場はMissionのレストランのルーフガーデン。
ダウンタウンのこぎれいなツーリストエリアよりも、私はむしろMissionのざわざわとした感じが大好き。
穴場のBarやクラブなどもこのあたりに密集している。


受付に並んだパンフレット。来客は真剣に読んでくれただろうか・・心配。


来客の中には地元SFの49's(プロアメフトチーム)のコーチやメンバーもいた(ようだ)。
その方面にはちょっと疎いものであまり積極的に写真を撮らなかった。



ASAPを支える重要なふたり。
(左)この地区の行政執務官(Borad of Supervisor)を勤めるBevan Duftyさん。彼は自らゲイであることをオープンにしており、“家族”を作るためにレズビアンのートナーの間に子どもをもうけているというお人。彼の地域を愛する心と子どもたちに注ぐ無償の愛が、このハイスクールを大きく変えたそうだ。
(右)ASAPの共同設立者であるJudy Grossmanさん。ボランティアでありながら子どもたちの進学指導をするscholarship programの責任者を務める。Dedeいはく“歩くホスピタリティー”。自ら3人の子どもの母親でもある。


ASAPのスカラーシップを受けてカレッジに通うことになった息子のスピーチをうれしそうに見つめる母親(右)と、
Missonハイスクールの校長、Kevin Truitt氏(左)


“お涙頂戴コーナー”のハイライト。スピーチ後にハグする母と子。
当初「大学に行くというなら私の屍をまたいで行きなさい」とまで言って反対していたいた母親は、「大学は“行かなければならないもの”でも“なんとなく行くもの”でもなく息子が自分の意思で学びたいことを決めて行きたいと言ったことがうれしかった」とスピーチ。ほろりとした。
子どもの教育を通して親も成長していく。我が子に自分よりも高い教育を受けさせることに否定的な親もまだまだ多いと聞くにつけこの親子のような例が少しでも増えてくれれば、とつくづく思う。


招待されていたシャイな学生にインタビューを試みるDede。「ここしばらくパンフレットのことで頭がいっぱいだったけれど、本当に助かったわ」と何度もお礼を言われた。
「お礼を言うのはむしろこちらのほう。アメリカって社会がどうやってお金(寄付)を集めるのかいい勉強になったわ(笑)」


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