shiotch7 の 明日なき暴走

ビートルズを中心に、昭和歌謡からジャズヴォーカルまで、大好きな音楽についてあれこれ書き綴った音楽日記です

Gems / Aerosmith

2009-06-11 | Hard Rock
 エアロスミスは私が音楽を聴き始めた70年代の半ば、日本ではクイーン、キッスと共に “3大ロック・バンド” として君臨していた。クイーンはブライアン・メイの歌心溢れるギター・プレイが、キッスはそのシンプルで楽しいロックンロール・サウンドが好きだったが、エアロスミスは何と言ってもジョー・ペリーの攻撃的なリフとスティーヴン・タイラーのたたみかけるようなヴォーカルの相乗効果による凄まじいまでのエネルギーの奔流が最大の魅力だった。
 私が初めて買った彼らのレコードは「ウォーク・ディス・ウェイ」のシングル盤で、あのイントロのリフのカッコ良さは言葉に出来ないほどのインパクトがあった。とにかくまだロックを聴き始めたばかりの中学生に “これがロックや!” と確信させるだけのヤバイ感じが充満していた。80年代にRUN DMCがカヴァーし、日本でも「踊るさんま御殿」のエンディング・テーマに使われるなど、すっかりエアロの代表曲の1つになった感のある名曲だ。
 次に買ったのは彼らの最高傑作アルバム「ロックス」で、アルバム1枚を一気呵成に聴かせてしまう凄まじいエネルギーといい、その硬質な音作りといい、ただただ圧倒されて聴いていた。続くアルバム「ドロー・ザ・ライン」に至っては予約までして発売日に買った記憶がある。タイトル曲の信じられないくらいテンションの高い演奏は鳥肌モノだったが、アルバム全体としては少しとっ散らかった印象で、「ロックス」後の行き詰まりというか迷いのようなものが感じられた。後になって知ったことだがこの頃バンドはドラッグ漬けで、人間関係も徐々に悪化していたらしいのだ。ライブ盤1枚を挟んで出された「ナイト・イン・ザ・ラッツ」はそんなに悪い内容ではないし結構好きな演奏も入っているのだが、やはり前2作に比べると明らかにテンションが落ちており、これでジョー・ペリーが脱退して第一期エアロスミス黄金時代は終焉を迎える。その後80年代半ばにゲフィン・レコードから出した「パーマネント・ヴァケイション」で華麗な復活を遂げて第2期黄金時代を迎えることになるのだが、やはり私が一番愛聴しているのは70年代の火の出るようなハードロック曲の数々である。そんな私の気持ちを見透かしたかのように88年に古巣CBSから出された “裏ベスト” 的なアルバムがこの「ジェムズ」である。
 このアルバム、まず何と言ってもその選曲が素晴らしい。副題が「エアロスミス・ハードロック・ヒッツ」というだけあって、毒を撒き散らしながら暴走していた頃のスピード感溢れるロック曲ばかりが選ばれている。まずはいきなり「ロックス」の中でも特に好きな2曲①「ラッツ・イン・ザ・セラー」②「リック・アンド・ア・プロミス」のワンツー・パンチには参ってしまった。「ロックス」の配置と違うだけでこんなに印象が変わるものかと思ったが、ドライヴ感溢れるギター・リフがたまらない①からヘヴィーなグルーヴ感がかっちょ良い②までのスリリングな流れは新たなマジックを生み出している。全盛期のエアロスミスの魅力を凝縮したようなこの2曲が放出する凄まじいばかりのエネルギーは圧巻だ。
 ③「チップ・アウェイ・ザ・ストーン」はこの盤が出た当時はスタジオ・テイクが初CD化!というのが大きなウリで私もワクワクしながら聴いたのだが、期待を更に上回るようなポップなロックンロールで、 間を活かしたギター・リフと “チプウェ~イ♪” のフレーズが脳内ループを起こすノリノリ曲だ。これ、めっちゃ好き!!!
 ④「ノー・サプライズ」は「ナイト・イン・ザ・ラッツ」の中でも最も「ロックス」~「ドロー・ザ・ライン」時代の雰囲気に近いナンバーで、デビュー当時の自分たちを歌った歌詞をキャッチーなブギー・ロックに乗せて歌っている。⑤「ママ・キン」は誰が何と言おうとイントロのリフ、これに尽きる。エッジの効いたギター・リフは何回聴いてもゾクゾクする。曲自体も実にシンプルな構成がら、聴く者をウキウキワクワクさせてくれるナンバーだ。⑦「ノーバディーズ・フォルト」はシンデレラのトム・キーファーの源流を見る思いがするブルージーなロック。こういうエアロもカッコエエんよね(^o^)丿
 ラストの⑫「トレイン・ケプト・ア・ローリン」はヤードバーズも演っていたロック・クラシックスで、これまで聴いてきた中でエアロのヴァージョンが一番好きだ。2分10秒あたりからライブの音源と巧くドッキングさせてあり、後半部の盛り上がりはハンパではない。この独特のグルーヴ感は彼らにしか出せないものだ。
 モトリー・クルー、ガンズ&ローゼズ、シンデレラを始め、エアロスミスをリスペクトするバンドは数多い。このアルバムを聴けばその理由が一聴瞭然に分かるのではないだろうか?

Aerosmith - Chip Away the Stone



この記事についてブログを書く
« Waltz For Debby / Bill Evans | トップ | Sing Sing Sing / Clark Sisters »