shiotch7 の 明日なき暴走

ビートルズを中心に、昭和歌謡からジャズヴォーカルまで、大好きな音楽についてあれこれ書き綴った音楽日記です

New Jersey / Bon Jovi

2009-03-08 | Hard Rock
 ボン・ジョヴィの代表作といえば、全米だけで1,200万枚を売り上げ彼らを一気にスターダムへと押し上げた「スリッパリー・ホェン・ウェット」(86年)である。このアルバムの大成功によって彼らは80年代後半のハード・ロック・ブームの頂点に君臨し、シーンを牽引していった。しかし私が個人的に最も思い入れが深いのはその2年後に出た「ニュー・ジャージー」なのだ。「スリッパリー...」は“気がついたらいつの間にかアルバム・チャートのトップに立っていた”って感じで、シングル・チャートでもあれよあれよという間に№1ヒットを連発、山本リンダもビックリの“もぉどぉにも止まらない状態”で、ファンとしても必死でついていくのがやっとだった。
 だが「ニュー・ジャージー」は違う。今度はこちらもしっかりと心の準備が出来ているし、それはボン・ジョヴィの方も同じだろう。挑戦者の立場だった前作とは違い、今度は“王者ボン・ジョヴィ”として新作をリリースするのだ。そのプレッシャーの大きさは想像を絶するものだったに違いない。「スリッパリー...」で2曲の全米№1を共作したポップ・メタルの天才デズモンド・チャイルドがここでも②③⑤というヒット性の高いナンバーの共作者に名を連ね、再びブルース・フェアバーンのプロデュースと、勝利の方程式に抜かりはない。
 アルバム1曲目の①「レイ・ユア・ハンズ・オン・ミー」はまさにライブ・ショウの始まりを告げるが如きオープニング・ナンバーで、場内がが暗転しPAからこの曲のイントロが流れてきてファンが総立ちになって手を挙げる...という光景が目に浮かぶようだ。ファースト・シングル②「バッド・メディスン」は「ユー・ギヴ・ラヴ・ア・バッド・ネーム」の流れを汲むパワフルな曲で、確かサンヨーのCMにも使われてたような記憶がある。それにしてもハードロックのバンドがお茶の間に何の違和感もなく溶け込んでしまうとは時代も変わったものだ。③「ボーン・トゥ・ビー・マイ・ベイビー」は「リヴィン・オン・ア・プレアー」をよりタイトでソリッドにしたような、最もボン・ジョヴィらしい青春賛歌。スプリングスティーンの「サンダー・ロード」と「ボーン・トゥ・ラン」を足して2で割ったような歌詞をはじめ、演奏からコーラスに至るまですべてがニュー・ジャージーしまくっている。心を震わすようなジョンのヴォーカルがたまらないソウルフルでグルーヴィーな④「リヴィング・イン・シン」に続く⑤「ブラッド・オン・ブラッド」もやはりスプリングスティーンの「ボーン・トゥ・ラン」を彷彿とさせる怒涛のようなドラマ展開で、イントロを聴いただけでアドレナリンが逆流しそうになる。友情よりもっと強い絆の存在を歌ったボン・ジョヴィ史上屈指の名曲だ。
 ⑥「ホームバウンド・トレイン」のライブ感溢れるヘヴィーなサウンドにはジェフ・ベックへのリスペクトが横溢、この曲に限らずこの「ニュー・ジャージー」には彼らが多くのことを学び取った先輩たちへの敬意がストレートに表出されている。ビートルズの「ドント・レット・ミー・ダウン」をボン・ジョヴィ流に煮詰めて煮詰めて作り上げたような⑩「アイル・ビー・ゼア・フォー・ユー」はある意味クッサクサの泣きのバラッドだが、逆にそこがたまらん魅力になっており、ファンならフニャフニャの腰砕け状態になるだろう。⑪「99イン・ザ・シェイド」はスピード感溢れるノリノリのロックンロールで、車で飛ばしながら聴けば気分も爽快だ。⑫「ラヴ・フォー・セール」はノリ一発のワン・テイクで録ったような楽しい曲で、ブラッシュの小気味良いリズムに乗ってジョンがはしゃぎまくる。この曲をラストにもってくるあたり、ボン・ジョヴィの余裕と遊び心が表れている。
 それにしてもこのアルバムのクオリティーの高さは尋常ではない。どの曲もエネルギーに満ちていてしかもメロディアスという、実に煌びやかで色彩豊かなアルバムだ。

Bon Jovi - Blood On Blood - (Live 1990)

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