またボッサ?アンタも好きやねぇ... という声が聞こえてきそうだが、性懲りもなくまたまたボッサである。しかも今回のカヴァー・ネタはあのマイケル・ジャクソン!個性が強くて完成度も高いマイコーのカヴァーはただでさえレア、しかもボッサ・カヴァー集なんて普通ならあり得ない組み合わせなのだが、ガンズやストーンズまでボッサ化してしまうブラジル人の柔軟な発想にかかればこの通り、個々の楽曲のの見事な解釈といい、その脱力具合いの絶妙なサジ加減といい、この「マイケル・イン・ボッサ」、めちゃくちゃエエんである。それもそのはずで制作はブラジル・ボサノヴァ界の重鎮ロベルト・メネスカルのアルバトロス・レーベル... あのマルセラを擁するボッサ・カヴァー界の最強レーベルだ。それにしてもマイコーの楽曲がこれほどボサノヴァに合うなんて... 実に新鮮な感覚だ。マイコーとボッサといえば、カエタノ・ヴェローソが「ビリー・ジーン」をビートルズの「エリナー・リグビー」とメドレーにして歌ったヴァージョンを901さんに教えてもらい、そのサウダージな解釈に驚倒した覚えがあるが、この盤ではあれほど過激な “くずし” は見られず、原曲の持っているメロディーの魅力をストレートに活かす方向でプロデュースされているのが嬉しい。マイコーの作品の多くはクインシー・ジョーンズが総力を結集して練りに練って作り上げたサウンド・プロダクションにマイコーの力強いヴォーカルが加わって初めて生き生きと躍動し始めるのだが、ここではそれらを一旦ブラジリアン・スタイルで換骨堕胎し、同レーベル所属の9人のシンガーがそれぞれユニークな解釈で楽しませてくれるのだ。
まずはクリス・デラノが歌う①「ビート・イット」、このようなコンピレーション盤では一番出来の良い作品を1曲目に持ってくることが多いが、違和感のないボッサのリズムで始まるイントロといい、彼女の気だるさ全開ヴォーカルといい、快適指数を3倍アップさせる脱力コーラス・ハーモニーといい、もう私の知る限り最高のマイケル・カヴァーである。エディー・ヴァン・ヘイレンの例のスリリングなギター・ソロも実にまったりしたユルユル感覚で再現されており、原曲とのあまりの落差にイスから転げ落ちる人もいるかもしれない(笑) とにかくこの「ビート・イット」、何度も繰り返し聴きたくなる逸品だ。続く②「今夜はドント・ストップ」も①同様クリス・デラノのナンバーで、ここでも原曲に近いアレンジながら随所にブラジリアン・フレイヴァーを散りばめた素晴らしい歌と演奏が楽しめる。「プライベート・アイズ」や「トゥルー・カラーズ」の絶品カヴァーも記憶に新しいクリス・デラノ、今後の動向から目を離せないシンガーだ。
③「ヒューマン・ネイチャー」、④「ロック・ウィズ・ユー」では私の大好きなマルセラ姫が登場、その優しく包み込むような歌声で曲の髄ともいえるメロディーの美しさを見事に引き出している。80'sを代表するブラコンの名曲も姫の手(喉というべきか...)にかかればあっという間に美しいボッサに早変わり、一度その魅力にハマッてしまうと抜け出せない究極の癒し系ヴォーカルだ。
バーバラ・メンデスの⑤「ビリー・ジーン」は淡々と呟くような彼女の低い声がミステリアスな雰囲気を醸し出し、ジャジーなテイスト横溢の洗練されたヴァージョンに仕上げている。ルル・ジョパートの⑨「スリラー」、⑩「ワナ・ビー・スターティン・サムシン」の2曲は彼女の声がマイコーの裏声にそっくりなこともあって、何の違和感もなく聴けるのが面白い。特にスローなテンポで歌われる⑨には “こんなアレンジもあったのか!” と唸ってしまう。
パウリーニョ・ロウレイロは本盤でも数少ない男性ヴォーカリストで、今風のR&Bヴォーカルを聴かせる⑪「マン・イン・ザ・ミラー」よりもポップな味付けで気持ち良さそうに歌う⑫「ザ・ガール・イズ・マイン」がいい。ただ、男性シンガーのボサノヴァはどーしてもパンチに欠ける草食系ヴォーカルが多くなるので私的にはやや物足りない感もある。やっぱりボッサ・カヴァーは癒し系女性ヴォーカルに限るなぁ... (≧▽≦)
日本サイド制作のトホホなジャケットが玉にキズ(←何なん、これ!ふざけるのもエエかげんにせえよ...)だが、中身の音楽は文句のつけようのない素晴らしいこのアルバム、数あるボッサ・カヴァー集の中でも屈指の名演集だと思う。
Beat It - Michael Jackson in Bossa Moments
まずはクリス・デラノが歌う①「ビート・イット」、このようなコンピレーション盤では一番出来の良い作品を1曲目に持ってくることが多いが、違和感のないボッサのリズムで始まるイントロといい、彼女の気だるさ全開ヴォーカルといい、快適指数を3倍アップさせる脱力コーラス・ハーモニーといい、もう私の知る限り最高のマイケル・カヴァーである。エディー・ヴァン・ヘイレンの例のスリリングなギター・ソロも実にまったりしたユルユル感覚で再現されており、原曲とのあまりの落差にイスから転げ落ちる人もいるかもしれない(笑) とにかくこの「ビート・イット」、何度も繰り返し聴きたくなる逸品だ。続く②「今夜はドント・ストップ」も①同様クリス・デラノのナンバーで、ここでも原曲に近いアレンジながら随所にブラジリアン・フレイヴァーを散りばめた素晴らしい歌と演奏が楽しめる。「プライベート・アイズ」や「トゥルー・カラーズ」の絶品カヴァーも記憶に新しいクリス・デラノ、今後の動向から目を離せないシンガーだ。
③「ヒューマン・ネイチャー」、④「ロック・ウィズ・ユー」では私の大好きなマルセラ姫が登場、その優しく包み込むような歌声で曲の髄ともいえるメロディーの美しさを見事に引き出している。80'sを代表するブラコンの名曲も姫の手(喉というべきか...)にかかればあっという間に美しいボッサに早変わり、一度その魅力にハマッてしまうと抜け出せない究極の癒し系ヴォーカルだ。
バーバラ・メンデスの⑤「ビリー・ジーン」は淡々と呟くような彼女の低い声がミステリアスな雰囲気を醸し出し、ジャジーなテイスト横溢の洗練されたヴァージョンに仕上げている。ルル・ジョパートの⑨「スリラー」、⑩「ワナ・ビー・スターティン・サムシン」の2曲は彼女の声がマイコーの裏声にそっくりなこともあって、何の違和感もなく聴けるのが面白い。特にスローなテンポで歌われる⑨には “こんなアレンジもあったのか!” と唸ってしまう。
パウリーニョ・ロウレイロは本盤でも数少ない男性ヴォーカリストで、今風のR&Bヴォーカルを聴かせる⑪「マン・イン・ザ・ミラー」よりもポップな味付けで気持ち良さそうに歌う⑫「ザ・ガール・イズ・マイン」がいい。ただ、男性シンガーのボサノヴァはどーしてもパンチに欠ける草食系ヴォーカルが多くなるので私的にはやや物足りない感もある。やっぱりボッサ・カヴァーは癒し系女性ヴォーカルに限るなぁ... (≧▽≦)
日本サイド制作のトホホなジャケットが玉にキズ(←何なん、これ!ふざけるのもエエかげんにせえよ...)だが、中身の音楽は文句のつけようのない素晴らしいこのアルバム、数あるボッサ・カヴァー集の中でも屈指の名演集だと思う。
Beat It - Michael Jackson in Bossa Moments