前回は藤圭子の追悼特集最終回と銘打って彼女の最高傑作と言えるライヴ盤「演歌を歌う」を紹介したが、アタマの中はまだ “昭和歌謡モード” 全開だし、藤圭子という不世出の大歌手の魅力を徹底的に掘り下げるせっかくの機会でもあるので、今日はこのブログでまだ取り上げていない彼女の隠れた名唱をいくつかピックアップしてみようと思う。
①東京流れもの
シングル盤のB面というのはA面がヒットすればするほど影が薄くなり忘れ去られていく傾向にある。彼女にとって最大のヒット曲「圭子の夢は夜ひらく」のB面に入っていたのが何を隠そうこの「東京流れもの」で、シングルを買った時に一応両面聴いてはいたものの、B面は針飛びせぇへんかチェックするだけみたいなおざなりな聴き方で、1回聴いただけでこの曲のことはすっかり忘れていた。ところがその後、彼女のファースト・アルバムを入手することが出来てワクワクしながら聴いていた時、B面3曲目に入っていたこの曲に耳が吸い付いた。曲そのものは竹越ひろ子(1965年)のカヴァーだが、歌詞の方は彼女を育て上げた恩師でもある石坂まさを氏が新たに書き下ろしたオリジナルで、一段と凄味を増した彼女のドスの効いたヤクザなヴォーカルと絶妙なマッチングを見せており、数多いこの曲のカヴァーの中でも断トツの存在感を誇っている。特に3番の “笑いなさるな 極道の~♪” の節回しなんかもうゾクゾクさせられるカッコ良さだ。
東京流れもの / 藤圭子
②はしご酒
藤圭子のシングルは、彼女を “演歌” という狭い枠に限定して売ろうとしたレコード会社の誤った戦略のせいで、ヒット曲に不可欠な “大衆性” という観点からみると4枚目の「命預けます」を最後に曲のクオリティーがガクンと落ちている。実際に1971年以降の彼女のシングルを一気聴きしてみても “相変わらず歌は上手いけど曲がイマイチ” なものがほとんどで、 “一聴しただけで耳に残り脳内リフレイン確定” だった最初の4枚のシングルとは雲泥の差がある。そんな中後期のシングル曲の中で私がめちゃくちゃ好きなのが1975年に出たこの「はしご酒」で、 “よってらっしゃい よってらっしゃい おにいさぁん~♪” のフレーズが強烈なフックとなって聴き手の心をグワッとつかむキャッチーなナンバーだ。低迷が続き “あの人は今...” 状態だった彼女にとって久々に10万枚を超えるスマッシュ・ヒットになったのも当然だろう。良い曲と出会い水を得た魚のように活き活きと躍動するこの粋なヴォーカルを聴いてくれぃ!
はしご酒 / 藤圭子
③朝日のあたる家
1971年7月にサンケイホールで行われたコンサートの模様を収録した彼女にとって2枚目となるライヴ盤「藤圭子リサイタル」は「東京ブルース」を始めとするカヴァー曲が並ぶA面が白眉だが、その中でも唯一の洋楽カヴァーとして異彩を放っていたのがこの「朝日のあたる家」だ。私にとっての藤圭子とは “演歌の星” なんかではなく “女の情念を歌わせたら右に出る者がいない不世出の和製ブルース・シンガー” なのでこの選曲には大いに納得、彼女も “私の大好きな歌” と紹介しているが、アニマルズの古典的名曲を和製ブルースとして解釈し、説得力溢れるヴォーカルで聴く者を圧倒するキラー・チューンに仕上げている。彼女と同じく曲によってブルースと演歌を歌い分けていたちあきなおみもこの曲をカヴァーしており、そちらもこの曲屈指の名カヴァーになっているので興味のある方はYouTubeでどーぞ。
朝日のあたる家 / 藤圭子
④鈴懸の径
私がこの「鈴懸の径」という曲を知ったのはちょうどジャズを聴き始めてすぐのことで、ジャズ・ヴァイブ奏者である鈴木章治の演奏を聴いてあの “ディア・オールド・ストックホルム” に匹敵する哀愁舞い散るメロディーに感動し、それ以来日本のジャズ界が生んだ屈指のスタンダード・ナンバーと信じて愛聴してきたのだが、ある時 YouTube でザ・ピーナッツがこの曲を歌っているのを見つけて不思議に思い、よくよく調べてみるとオリジナルは1942年(←戦時中やん!)の灰田勝彦のヒット曲だと知ってビックリ(゜o゜) この「圭子の鈴懸」はオリジナルへのリスペクトを強く感じさせるもので、曲を慈しむかのようにしっとりした歌唱で歌い込んでいるのが印象的だ。例の5枚組CDボックスの収録曲の中にこの曲の名前を見つけた時はめちゃくちゃ嬉しかった。
鈴懸の径 / 藤圭子
⑤生命ぎりぎり
彼女のデビュー・シングル「新宿の女」のB面、そしてファースト・アルバムのラストに置かれていたのがこの「命ぎりぎり」だ。彼女が生涯かけて歌ってきたメロディーを一点に凝縮させたような曲想のナンバーで、この曲を聴けば藤圭子という歌手が分かる!と言い切ってしまっても過言ではないと思う。考えすぎかもしれないが、石坂まさを氏による “私のことなら 放っといて 誰も知らない 東京で 生命ぎりぎり 生命ぎりぎり 燃やして 死ぬのさ~♪” という歌詞の一節が、今となってはその後の彼女の運命を暗示しているように思えてならない。
生命ぎりぎり / 藤圭子
【おまけ】ジュリーが作曲した曲を藤圭子が歌うという珍しい組み合わせが貴重な「愛と罰」。イントロを聴いて一瞬クリームの「ホワイト・ルーム」が始まるのかと思ったが、どうせなら開き直って「圭子の白い部屋」というタイトルでクリームのカヴァーやった方が面白かったかも...(笑)
愛と罰 / 藤圭子
①東京流れもの
シングル盤のB面というのはA面がヒットすればするほど影が薄くなり忘れ去られていく傾向にある。彼女にとって最大のヒット曲「圭子の夢は夜ひらく」のB面に入っていたのが何を隠そうこの「東京流れもの」で、シングルを買った時に一応両面聴いてはいたものの、B面は針飛びせぇへんかチェックするだけみたいなおざなりな聴き方で、1回聴いただけでこの曲のことはすっかり忘れていた。ところがその後、彼女のファースト・アルバムを入手することが出来てワクワクしながら聴いていた時、B面3曲目に入っていたこの曲に耳が吸い付いた。曲そのものは竹越ひろ子(1965年)のカヴァーだが、歌詞の方は彼女を育て上げた恩師でもある石坂まさを氏が新たに書き下ろしたオリジナルで、一段と凄味を増した彼女のドスの効いたヤクザなヴォーカルと絶妙なマッチングを見せており、数多いこの曲のカヴァーの中でも断トツの存在感を誇っている。特に3番の “笑いなさるな 極道の~♪” の節回しなんかもうゾクゾクさせられるカッコ良さだ。
東京流れもの / 藤圭子
②はしご酒
藤圭子のシングルは、彼女を “演歌” という狭い枠に限定して売ろうとしたレコード会社の誤った戦略のせいで、ヒット曲に不可欠な “大衆性” という観点からみると4枚目の「命預けます」を最後に曲のクオリティーがガクンと落ちている。実際に1971年以降の彼女のシングルを一気聴きしてみても “相変わらず歌は上手いけど曲がイマイチ” なものがほとんどで、 “一聴しただけで耳に残り脳内リフレイン確定” だった最初の4枚のシングルとは雲泥の差がある。そんな中後期のシングル曲の中で私がめちゃくちゃ好きなのが1975年に出たこの「はしご酒」で、 “よってらっしゃい よってらっしゃい おにいさぁん~♪” のフレーズが強烈なフックとなって聴き手の心をグワッとつかむキャッチーなナンバーだ。低迷が続き “あの人は今...” 状態だった彼女にとって久々に10万枚を超えるスマッシュ・ヒットになったのも当然だろう。良い曲と出会い水を得た魚のように活き活きと躍動するこの粋なヴォーカルを聴いてくれぃ!
はしご酒 / 藤圭子
③朝日のあたる家
1971年7月にサンケイホールで行われたコンサートの模様を収録した彼女にとって2枚目となるライヴ盤「藤圭子リサイタル」は「東京ブルース」を始めとするカヴァー曲が並ぶA面が白眉だが、その中でも唯一の洋楽カヴァーとして異彩を放っていたのがこの「朝日のあたる家」だ。私にとっての藤圭子とは “演歌の星” なんかではなく “女の情念を歌わせたら右に出る者がいない不世出の和製ブルース・シンガー” なのでこの選曲には大いに納得、彼女も “私の大好きな歌” と紹介しているが、アニマルズの古典的名曲を和製ブルースとして解釈し、説得力溢れるヴォーカルで聴く者を圧倒するキラー・チューンに仕上げている。彼女と同じく曲によってブルースと演歌を歌い分けていたちあきなおみもこの曲をカヴァーしており、そちらもこの曲屈指の名カヴァーになっているので興味のある方はYouTubeでどーぞ。
朝日のあたる家 / 藤圭子
④鈴懸の径
私がこの「鈴懸の径」という曲を知ったのはちょうどジャズを聴き始めてすぐのことで、ジャズ・ヴァイブ奏者である鈴木章治の演奏を聴いてあの “ディア・オールド・ストックホルム” に匹敵する哀愁舞い散るメロディーに感動し、それ以来日本のジャズ界が生んだ屈指のスタンダード・ナンバーと信じて愛聴してきたのだが、ある時 YouTube でザ・ピーナッツがこの曲を歌っているのを見つけて不思議に思い、よくよく調べてみるとオリジナルは1942年(←戦時中やん!)の灰田勝彦のヒット曲だと知ってビックリ(゜o゜) この「圭子の鈴懸」はオリジナルへのリスペクトを強く感じさせるもので、曲を慈しむかのようにしっとりした歌唱で歌い込んでいるのが印象的だ。例の5枚組CDボックスの収録曲の中にこの曲の名前を見つけた時はめちゃくちゃ嬉しかった。
鈴懸の径 / 藤圭子
⑤生命ぎりぎり
彼女のデビュー・シングル「新宿の女」のB面、そしてファースト・アルバムのラストに置かれていたのがこの「命ぎりぎり」だ。彼女が生涯かけて歌ってきたメロディーを一点に凝縮させたような曲想のナンバーで、この曲を聴けば藤圭子という歌手が分かる!と言い切ってしまっても過言ではないと思う。考えすぎかもしれないが、石坂まさを氏による “私のことなら 放っといて 誰も知らない 東京で 生命ぎりぎり 生命ぎりぎり 燃やして 死ぬのさ~♪” という歌詞の一節が、今となってはその後の彼女の運命を暗示しているように思えてならない。
生命ぎりぎり / 藤圭子
【おまけ】ジュリーが作曲した曲を藤圭子が歌うという珍しい組み合わせが貴重な「愛と罰」。イントロを聴いて一瞬クリームの「ホワイト・ルーム」が始まるのかと思ったが、どうせなら開き直って「圭子の白い部屋」というタイトルでクリームのカヴァーやった方が面白かったかも...(笑)
愛と罰 / 藤圭子
実は私も抜け出すどころか
底なし沼にどんどんハマっていってます。
そろそろ中和しないと社会復帰できなくなってしまいそう...
>;輸入ポップスから国産歌謡曲に変わっていく時代
↑このあたりは私もまだまだ未知の領域なんで面白そうですね。
「逢いたくて逢いたくて」のイントロ、確かに「新宿の女」に似てる!
これは気がつきませんでした。新発見ですねー
あかん、やっぱり底なしやわ...(笑)
「夢は夜ひらく」で園まりにも興味がわいてきたのでyoutubeで見てみたらなんと可愛いこと、子供の頃に見たことはあるのですが、そんなことは分かりませんでした。(笑)
そこで、伊東ゆかり、園まり、中尾ミエのCOLEZO 「三人娘」というCDを買ってみました。
これが面白かったです、輸入ポップスから国産歌謡曲に変わっていく時代が分かって大興奮でした。
輸入ポップス時代では何となく目立たなかったまりちゃんが歌謡曲になると俄然目立ってくるのが印象的でした。
「逢いたくて逢いたくて」のイントロは「新宿の女」を連想させますが、こちらの方が先なんですね。
この曲はHISで坂本冬美も歌ってましたね。
基本的に何でもアリなブログなので
ビートルズ、ヘビメタ、音壁、イエイエ、昭和歌謡からF1まで
その日の気分次第でテキトーにネタ決めてます。
おっしゃる通り、この2枚のライヴ盤はぜひCD化して
後世に遺してほしいですね。
アナログの “知る人ぞ知る名盤” で終わらせるには
あまりにも惜しい傑作ライヴです。
「生命ぎりぎり」といい「アカシア」といい、 “死” を歌った作品を聴くと
ファンとしては何ともいたたまれない気持ちになりますね。
ライブで「朝日のあたる家」を歌っていたとは驚きです、「歌いつがれて25年」とこの「リサイタル」はぜひCD化して欲しいものですね。
「生命ぎりぎり」の歌詞は確かに運命的ですね、「アカシヤ、、、」もそうですが。