shiotch7 の 明日なき暴走

ビートルズを中心に、昭和歌謡からジャズヴォーカルまで、大好きな音楽についてあれこれ書き綴った音楽日記です

The Night Snails And Plastic Boogie / The Yellow Monkey (Pt. 2)

2012-02-01 | J-Rock/Pop
 アルバム全体の序曲といった感じの①「Song For Night Snails」は何とオール・フルファルセット... メジャー・デビュー・アルバムの1曲目にしていきなり裏声で、しかも “プリーズ イエスタデイ~♪” というデタラメな英語で始まり、めったやたらと脈絡のない英単語を連発、挙句の果てに “カタツムリは今夜モザイクを映さない~♪” などという摩訶不思議なフレーズまで飛び出すという実に怪しげなナンバーなのだが、吉井さんの囁くようなヴォーカルで聴く美しいメロディーにはどこか妖艶な響きがあり、ジャケットの雰囲気と怖いぐらいに合っていてコレが中々エエ感じなのだ。グラム・ロックに傾倒していた吉井さんの美意識を色濃く反映した1曲だと思う。
 エフェクト処理された①のエンディングにカウベルの逆再生音がかぶさり、そのまま繋がった感じで始まる②「Subjective Late Show」は初期イエロー・モンキーの魅力を凝縮したようなグルーヴが気持ち良いグラム・ロック・チューン。このイントロの元ネタは多分ボウイの「Diamond Dogs」あたりだと思うが、吉井さんはこの “前曲のエンディングでテープ回転を徐々に下げていき、そこにカウベルのリバース・サウンドをオーヴァーラップさせて次曲のイントロへと繋げる” 手法がかなりお気に入りのようで、彼らの最高傑作との呼び声も高い 6th アルバム「SICKS」でも「HOTEL宇宙船」~「花吹雪」への繋ぎに使っている。暗闇から忍び寄ってくるような無機質なループ音が不気味な雰囲気を醸し出しており、コレがあるのとないのではかなり印象が違ってくるように思う。
 歌詞の方は抽象的すぎてワケが分からないが、 “上目使いの Kinky lady~♪” (←kinky とは英語で “変態” のこと。ジャニーズの Kinki Kids とか、私の住んでる近畿地方とか、外人さんの耳にはどう聞こえてるんやろか???)とか、 “フェレイシオのような歯ざわりで~♪” とか早くもエロ路線が全開で、特に “シリコンのザリガニ” には大笑いさせてもらった。そんな中、“愛されない Paranoia band” という自虐的なフレーズをさりげなく織り込むあたりがいかにも吉井さんらしい。
 どこか懐かしさを感じさせるキャッチーなメロディーはとても親しみやすく、歌心溢れるエマのキラキラしたギター・リフもたまらんたまらん(≧▽≦) 個人的には “メカラウロコ 7” のライヴ・ステージでこの曲の間奏の時に、仮面ライダー変身ポーズからエマにチョップをお見舞いしたりしてちょっかいを出しにいく吉井さんの楽しそうな姿が微笑ましくて忘れられない。
 “メカラ 7” といえば何と言っても⑨「真珠色の革命時代」である。 “飾りたてた骸骨とラストダンス” だとか “アスファルトに刺した忘却の注射器” だとか、独創的な歌詞は相変わらずだが、とにかく切ないメロディーが大いなる感動を呼ぶ壮大なバラッドで、初期を代表する名曲の一つだと思う。特に間奏のギター・ソロは完全に洋楽ロックのレベルと言ってよく(←リッチー・サンボラ系の泣きのフレーズが最高!!!)、そのあまりの素晴らしさに涙ちょちょぎれるし、サビの “Sally, I love you~♪” のメロディー・ラインの美しさにも言葉を失う。終盤でストリングスが加わって更に盛り上がっていく様はまさに圧巻で、 “メカラウロコ 7” のライヴで吉井さんが生のオーケストラを自ら指揮する姿にはめっちゃ感動した。
 ⑤「Chealsea Girl」はキャッチーで疾走感溢れるノリノリのロックンロール。尖ったギター・リフと “トゥー トゥー イェー♪” というコーラスが実に印象的で、4th アルバム「Smile」で開花する “歌謡ロック” 路線の原点ともいえるナンバーだ。途中さりげなく入ってくるアコギが実にエエ味を出しているし(1:33~)、ギュイーンというギターのピック・スクラッチ音(1:40あたり)を入れるエマのセンスも素晴らしい。躍動感溢れるヒーセのベースも大活躍だ。歌詞はストレートに卑猥(笑)で、 “パパやママにはナイショだよ~♪” のくだりなんかもう最高だ。
 デビュー・シングルになった⑩「Romantist Taste」は絵に描いたようなグラム・ロックで、②にも通じるポップ・センスが快感を呼ぶ。歌詞はもう笑ってしまうぐらいワケの分からんカタカナ英語のオンパレードで、言葉の意味を空洞化することによって歌詞を一種のサウンドとして捉える過程で “そして夜は全てこの手の中 アルカロイドは君の中~♪” や “ラヴ・ポーションで妖艶にシャドウ~♪” といった名フレーズを生み出しているところが凄い。それにしてもデビュー・シングルで1曲丸ごと “意味なし言葉遊びゲーム” を貫き通す姿勢は実に痛快だ。
 上記の曲以外では、駆けていく馬の蹄のような音を巧く表現したアニーのパワフルなドラミングが心地良い③「Oh! Golden Boys」、ブライアン・メイっぽいエマのギターがオシャレなヨーロッパの風情を漂わせる④「Neurotic Celebration」、エマの繊細なアルペジオが奏でるメロディーの美しさに耳が吸い付く⑦「This Is For You」なんかが気に入っている。
 このアルバムはセールス的には大苦戦でわずか数千枚しか売れなかったらしいが、日本におけるグラム・ロックのマイナー性や強烈なヴィジュアル・イメージの先行、虫や爬虫類が一杯出てくるグロテスクな⑩の PV(←ハッキリ言って悪趣味以外の何物でもない...)といったマイナス・ファクターを考えれば一般ウケしなかったのも当然と言えば当然。しかし今の耳で聴けば、有象無象の邦楽ファンよりもむしろ年季の入った70~80年代洋楽ロック・ファンにウケそうな要素が満載だ。私のようにこのアルバムがストライク!!!な人にとって、彼らのインディーズ盤とメジャー初期3部作はきっと愛聴盤になると思う。

Subjective Late Show


真珠色の革命時代


the yellow monkey--Chelsea Girl.flv


Romantist Taste
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