shiotch7 の 明日なき暴走

ビートルズを中心に、昭和歌謡からジャズヴォーカルまで、大好きな音楽についてあれこれ書き綴った音楽日記です

Unplugged / Paul McCartney

2009-09-14 | Paul McCartney
 89年の「フラワーズ・イン・ザ・ダート」で80年代のスランプから抜け出し、90年の大作ライブ「トリッピング・ザ・ライブ・ファンタスティック」でビートルズをも含めたそれまでの自分史を総括したポールは91年1月に MTV アンプラグド(アンプからプラグを抜く、つまりアコースティック楽器のみで演奏を行う MTV の人気番組)に出演した。その時の模様を収めたライブ盤がこの「アンプラグド」(公式海賊盤)である。
 このアルバムは構図といい、色使いといい、3年前にソ連だけで発売されたオールド・ロックンロール・カヴァー集「CHOBA B CCCP」(バック・イン・ザ・USSR)の姉妹編のようなジャケットだが内容は圧倒的にこちらの方が上だろう。パーソネルはワールド・ツアーでパーマネントなバンドとして固まりつつあったポール&リンダ、ヘイミッシュ・スチュワート(ギター)、ロビー・マッキントッシュ(ギター)、ポール・ウィックス・ウィケンズ(キーボード)という5人にドラマーのブレア・カニンガムが新加入し、カッチリとまとまったタイトな演奏を聴かせてくれる。全17曲中、ビートルズ・ナンバー6曲(⑤⑨⑪はソロになって初出)、1st ソロ「マッカートニー」から⑧⑫⑰の3曲、ポールがデビュー前に書いたという未発表曲②、そして残る7曲がロックンロール・クラシックスといえるスタンダード・ナンバーで、非常にバランスの取れた構成になっている。
 ジーン・ヴィンセントのカヴァー①「ビー・バップ・ア・ルーラ」を1曲目に持って来たのはジョン・レノンの名盤「ロックンロール」を意識してのことだろうか?どちらのヴァージョンもそれぞれの個性がよく出ていてファンとしては甲乙付け難い名唱だ。②「アイ・ロスト・マイ・リトル・ガール」はポールが14歳の時に書いたというカントリー調のナンバーで、何の違和感もなくセット・リストの中にピッタリと収まっているところがある意味凄いと思うのだが、ポールは尊敬するバディ・ホリーの “しゃっくり唱法” を取り入れて軽快に歌っている。③「ヒア・ゼア・アンド・エヴリウェア」は「ヤァ!ブロードストリート」以来の再演で、ウィックスのアコーディオンが良い味を出している。それにしてもホンマにエエ曲やなぁ... (≧▽≦) ビル・モンローの④「ブルー・ムーン・オブ・ケンタッキー」は初期ウイングスでも取り上げていたカントリー・ナンバーで、私はすぐにエルヴィスのカヴァーが思い浮かぶのだが、2分2秒から一気にテンポを上げて疾走する展開はまさにエルヴィス・ライク。この怒涛の展開がたまらんなぁ...(^o^)丿
 ⑤「ウィー・キャン・ワーク・イット・アウト」は出だしでポールが歌詞を間違えてやり直すところがご愛嬌(^.^) ポールのMCも和気あいあいとした雰囲気で微笑ましい。ミドル・エイトの部分でジョンの代わりを務めるヘイミッシュのコーラスもピッタリと息のあったところを聴かせてくれる。⑥「サンフランシスコ・ベイ・ブルース」ではロビーのスライド・ギターとウィックスのホンキー・トンク・ピアノが八面六臂の大活躍、楽しさ溢れる陽気な演奏だ。ポールのアコースティック・セットに外せない屈指の大名曲⑦「アイヴ・ジャスト・シーン・ア・フェイス」は何度聴いても素晴らしい!!!!! ここではウイングス時代とは違って、オリジナルのビートルズ・ヴァージョンに忠実なアレンジが採用されており、目も眩むようなハイスピード・ギター・カッティングが圧巻だ。
 1st アルバム「マッカートニー」で愛妻リンダに捧げた⑧「エヴリナイト」は1979年のウイングス・ラスト・ツアーや2002年のバック・イン・ザ・USツアーでも取り上げられていたポールお気に入りのナンバーで、20年の月日を経て熟成された味わいが心に染みる隠れ名曲だ。⑨「シーズ・ア・ウーマン」はオリジナルのビートルズ・ヴァージョンとは全く違う大胆なアレンジながら、これがまためちゃくちゃ素晴しくって、演奏にグイグイ引き込まれてしまう。この吸引力はハンパではない。この1曲のためにこのアルバムを買ってもいいくらいだと思えるカッコ良さだ。それにしても珠玉のビートルズ・ナンバーをちょっと違ったアレンジで聴ける喜びを何と表現しよう!ゲット・バック・セッションでジョンが歌っていた⑩「ハイヒール・スニーカーズ」は⑥同様ロビーのスライド・ギターとウィックスのホンキー・トンク・ピアノが聴きもので、ポールのパワフルなヴォーカルも絶好調だ。バックのリズムを聴いてセサミ・ストリートのテーマを思い出してしまうのは私だけ?
 ⑪「アンド・アイ・ラヴ・ハー」はオリジナルよりも更にテンポを落としてスローで迫るユニークなアレンジで、ヘイミッシュのコーラス・ハーモニーが原曲の持っていた哀愁を際立たせているように思う。⑫「ザット・ウッド・ビー・サムシング」は1st アルバム「マッカートニー」以来の登場で、低音高音を見事に使い分けるポールの歌声が面白い。⑦と並ぶアコースティック・ポールの代名詞⑬「ブラックボード」(←この盤を聴けばわかります...)じゃなかった「ブラックバード」は “何も足さない、何も引かない” シンプル・イズ・ベストを絵に描いたような名曲名演だ。ポールがドラムを叩き、ヘイミッシュが歌うというユニークな編成の⑭「エイント・ノー・サンシャイン」に続く⑮「グッド・ロッキン・トゥナイト」はポールお気に入りのロックンロール・クラシックスで、ウキウキワクワクするようなブギウギ・リズムに乗って気持ち良さそうに歌いまくるポールが最高だ。こういう音楽を演る楽しさが伝わってくるような演奏ってたまらんなぁ...(^o^)丿 全米がエルヴィス一色だった1956年に何と10週連続№1を爆走したガイ・ミッチェルの⑯「シンギング・ザ・ブルース」は番組ラストに相応しいミディアム・テンポのナンバーで、オーディエンスの手拍子がすべてを物語っているように思う。間奏で聴けるポールの口笛もゴキゲンだ。⑰「ジャンク」はインストなので本当は「シンガロング・ジャンク」とすべきだろうが、ポールの中ではそんな区別はどうでもいいのだろう。この哀愁舞い散るメロディーは何回聴いてもエエなぁ... (≧▽≦)
 このスタジオ・ライブは煌びやかな「ウイングス・オーヴァー・アメリカ」や「トリッピング・ザ・ライブ・ファンタスティック」に比べると一見地味に思えるかもしれないが、派手なサウンド・プロダクションがない分、ポールの音楽の素晴らしさをじっくりと味わえる出来になっており、ビートルズ・ファン、ポール・ファン必聴の隠れ名盤だと思う。

Paul McCartney She's A Woman (Live, Unplugged)

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