shiotch7 の 明日なき暴走

ビートルズを中心に、昭和歌謡からジャズヴォーカルまで、大好きな音楽についてあれこれ書き綴った音楽日記です

Rubber Soul / The Beatles

2009-09-23 | The Beatles
 私のビートルズ入門は赤盤LPで、その後ディスコグラフィーを見ながら1枚ずつアルバムを買っていった話は前に書いた通りだが、この「ラバー・ソウル」からは6曲も(シングル曲を多く収録している関係で、他のアルバムからは平均2曲ずつぐらいしか入ってなかった...)入っていたので、このアルバムを買うのが後回しになり、そのせいか今でもオリジナル・アルバムの曲順よりも赤盤の「ノーウェア・マン」→「ミッシェル」→「イン・マイ・ライフ」→「ガール」という順番で聴く方がしっくりくる。困ったものだ(>_<)
 ご存知のように赤盤は彼らのデビューから66年の「リヴォルヴァー」までの前期の代表曲を時系列に沿ってまとめたものだが、エレキギター、ベース、ドラムスの組み合わせが生み出すギンギンのロックンロールしか知らなかった当時の中学生の耳に、赤盤D面の楽曲群は摩訶不思議な、得体の知れないサウンドとして響いた。まずは何と言っても④「ノーウェア・マン」の出だしの分厚いコーラスにビックリ(゜o゜) いきなり “ヒィザァリィウ~ ノォウェアマン シッティンインヒズ ノォウェアラン~♪” ときて左チャンネルからギターがスルスルと滑り込んでくる(←当時の日本盤LPは例の '65ステレオ・ミックスだった...)のである。 “何やコレ...???” それまでこんな強烈なイントロを聴いたことがなかった私は完全に圧倒されてしまった。 “何かようワカランけど、とにかくスゴイなぁ... (≧▽≦)” しかもジョンの一人三重唱に絡む “ア~ラァラァラァラァ~♪” というコーラスがこれまた絶妙で、私はいつの間にかこの曲に引き込まれていった。これに続くのが⑦「ミッシェル」で、中世ヨーロッパの舞踏会のテーマのような甘美で洗練されたサウンドと、左チャンネルから聞こえるコーラス・ハーモニーがこれまた印象的だった。リンゴのハイハット・プレイが見事な⑪「イン・マイ・ライフ」はいかにもジョンなメロディー横溢の大名曲で、特にジョージ・マーティンが弾く間奏のハープシコードみたいな音色のバロック風ピアノが曲想とベストのマッチングを見せ、この曲をより深いものにしていた。⑨「ガール」は曲調といい、ギターとブラッシュの醸し出すサウンドといい、ただでさえ哀愁舞い散る名曲名演なのに、それではまだ足らんとばかりに “スゥ~ッ” と息を吸う音を入れたり、サビの部分にアコギの音を模したような “テュッテュッテュッテュッ...♪” というコーラスを入れたりと、徹底的に作り込まれていた。C面ラスト2曲も「ラバー・ソウル」からのものだったが、とにかくこのD面4連発はまだド素人だった私の中に “ビートルズは凄いっ!!!” という強烈な想いを植え付けた。
 それから約30年が経ち、UKオリジナル盤LPの世界に足を突っ込んだ私は「ビートルズUKアナログ盤ガイドブック」という本を購入し、マトリクス・ナンバーetc の違いで初回盤を見分ける方法を研究したのだが、そこで指摘されていたのがこの「ラバー・ソウル」の通称 “ラウド・カット盤” と呼ばれるモノラル初回盤の存在である。マト枝番1のファースト・プレスは入力レベルが異常に高く、原盤カッティングの際のリミッターのかけ方も違うので、針飛びや歪みを起こしかねない分厚い音が入ってしまったとのこと。で、EMIのプレス工場からクレームがついて作り直したのがマト枝番2以降のプレスなのだが、回収が間に合わず初回出荷分のみこの “ラウド・カット盤” が出回ってしまったというのが事の真相らしい。大好きな「ラバー・ソウル」にそんな盤があるならぜひ聴いてみたいと考え、 eBayでチェックすると1枚だけ “VERY RARE UK ORIGINAL FIRST PRESS LP (“LOUD” CUT)” と引用符付きでリストアップされており、決死の覚悟で臨んだ私は早朝5時起きでスナイプを敢行、無事 $103.50でゲットした。 eBay は自動延長がないので一撃で勝負が決まり、追われる心配がないので気が楽だ(笑)
 届いた盤を例の音聴き会G3で早速試聴したのだが、①「ドライヴ・マイ・カー」のイントロでポールのベースが鳴り響いた瞬間、一同 “おぉ~” と思わず声が上がった。 “マッカートニー凄いなぁ!” と901さん。それはスピーカーの真ん前に座っておられたplincoさんが思わず身をのけぞらせるほどの物凄い音圧だった。それまであまり気にも留めていなかったポールのベースがブンブン唸りながら暴れ回るし、この盤の大きな特徴である “ドラムより目立つタンバリン” の音もリミッターで押さえた感じがしない生々しい音で、ほとんど歪む寸前だ。少々値は張ったが、これは良い買い物だった。尚、ビートルズ関係では他に「バンド・オン・ザ・ラン」の初回盤がラウド・カット仕様なので、興味のある方はどーぞ(^.^)
 ②「ノーウェジアン・ウッド」は “昔、女をひっかけた... いや、俺がひっかけられたのかな?” で始まり、 “かわいい小鳥は飛んで行ってしまった...” まで、ストーリーテラー、ジョンの面目躍如たる暗示的な歌詞とメロディアスな旋律を際立たせているのがシタールの独特な響きであり、そのツボを心得た使い方はもう見事という他ない。⑩「アイム・ルッキング・スルー・ユー」は「ザ・ナイト・ビフォア」や「アナザー・ガール」路線のキャッチーなナンバーで、キーボードとギターが生み出す “ギャンギャン!” というサウンドが良いアクセントになっている。大名曲というわけではないが、いかにもラバー・ソウルな作りの曲で、時々無性に聴きたくなる。要するにこの曲好きなんですわ(^o^)丿 好きと言えばB面ラストの⑭「ラン・フォー・ユア・ライフ」もめちゃくちゃ好きで、たとえ歌詞の一部がプレスリーの「ベイビー・レッツ・プレイ・ハウス」のパクリであろうが、作者のジョン自身が大嫌いな曲だと公言しようが、大好きなものは仕方がない。この疾走感、たまらんなぁ... (≧▽≦) 投げやりな感じで “ザッジ・エンダッ!” と語尾をスパッと断ち切るところやビートルズの専売特許 “ノノンノォ~♪” を全開にするところなんか最高だし、ラバー・ソウルなタンバリンも大活躍だ。
 ポールの③「ユー・ウォント・シー・ミー」、⑥「ザ・ワード」、⑫「ウエイト」といった曲はどれもビートルズとしては平均的な出来だと思う(←他のバンドなら立派なシングル候補かもしれないが...笑)が、タンバリン、キーボード、ハーモニウム、ギターのヴォリューム・ペダルといった様々な楽器を駆使して見事にラバー・ソウルな雰囲気を湛えた曲に仕上げているところが天才集団ビートルズの凄さだろう。
 このアルバムにジョージが提供した⑤「シンク・フォー・ユアセルフ」と⑬「イフ・アイ・ニーディッド・サムワン」の2曲では、昔から⑬の評価が高く逆に⑤はボロクソにけなされてばかりなのだが、私は初めて聴いた時から⑤の方が好きで、どことなく「ドント・バザー・ミー」の続編的な曲想も、ポールのファズ・ベースの暴れっぷりも言うことなしだ。因みに⑬はバーズの「ベルズ・オブ・リムニー」にインスパイアされてジョージが書いた曲で、そのあたりの聴き比べも結構面白いと思う。
 あくまでもポップでありながらサウンド的には凝りまくるという、明らかに新しい世界へと足を踏み入れたビートルズは、この後コンサート・ツアーを打ち切り、スタジオ・バンドへと加速的に変貌し、劇的な音楽的展開を見せるようになっていくのだが、そのきっかけとなったのがこのアルバムなのだ。

The Beatles Nowhere Man At budokan Japan 1966

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